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2020/10/21(水)Vol.408

"ウィズ・コロナ"に挑む
ハンブルク・バレエ団&ジョン・ノイマイヤーの創作意欲
2020/10/21(水)
2020年10月21日号
世界の劇場を知ろう
特集

"ウィズ・コロナ"に挑む
ハンブルク・バレエ団&ジョン・ノイマイヤーの創作意欲

このゴースト・ライトはステージが再び活気づくまで灯りつづけます

新型コロナウイルスは、全世界の舞台芸術、アーティスト、そして観客に大きな打撃を与えていますが、この惨禍にあっても、振付家ジョン・ノイマイヤーは"ウィズ・コロナ"だからこその視点をいちはやく持ったといえます。
本サイトで、世界の劇場・カンパニーにコロナ禍における緊急アンケートを行ったのは6月下旬のことでしたが、ハンブルク・バレエ団から、ノイマイヤーがロック・ダウン直後から「ソーシャルディスタンス」について、単に規則として守るというだけではなく、「ソーシャルディスタンス」そのものを考察した作品に取り組んでいると回答がありました。
そうして完成した作品が "コロナ時代のバレエ"と銘打ち、「楽興の時」や即興曲などシューベルトのピアノ曲に振付けた『ゴースト・ライト』。予定通り9月6日のシーズン開幕を飾りました。(10月8日-11日にバーデンバーデン祝祭劇場で上演、その模様はその後全世界に配信された)
もともとは厳しい制限があるなかで少人数のダンサーたちが稽古を続けていくうちに、いくつもの断片が一つの作品としてつくりあげられたとのこと。 「交響曲における楽器のパートがつながっていくような、または伝統的な日本料理で小皿料理が注意深く並べられるようなもの」と、ハンブルク・バレエ団公式サイトにはノイマイヤーの言葉が紹介されています。

"ゴースト・ライト"はアメリカの演劇界の伝統に基づくもので、舞台上でリハーサルも上演も、大道具などの作業も行われていないときにステージの真ん中に裸電球のスタンドが置かれ、ライトが灯されることを指します。お客様が舞台を楽しんだ活気が終演とともに失われないよう、劇場に灯りをともして"気"を留めるという劇場関係者の縁起かつぎの説もあるとか。

◾️『ゴースト・ライト』のハイライト動画が見られる ハンブルク・バレエ団公式サイトはこちら
https://www.hamburgballett.de/de/spielplan/stueck.php?AuffNr=192665

ベートーヴェンへの敬意を込めて「第九交響曲」初演へ

ノイマイヤーの創作意欲はウィズ・コロナの状況下でも衰えることなく、12月にはベートーヴェン「第九交響曲」が初演を迎えます。
2019/20年シーズンはルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの生誕250年にあたり、世界中で数々の企画が予定されましたが、その多くは中止を余儀なくされました。
そのような状況をよそに、ハンブルク・バレエ団ではベートーヴェンの誕生日(12月16日)を目前にした12月6日に「第九」を初演する予定です。「第九」は、楽聖ベートーヴェンへの敬意から選ばれたものだそうです(指揮はケント・ナガノ。オリヴィエ・メシアン作曲「トゥーランガリラ交響曲」以来2作目のノイマイヤーのバレエを振る)
2021年の日本公演では、やはり生誕250年を記念して作られた『ベートーヴェン・プロジェクト』が京都で上演されます。こちらはいくつかの楽曲が用いられたもので、ノイマイヤーがベートーヴェンの楽曲を用いて初めて振付を行った作品です。

ハンブルク・バレエ団2021年日本公演は中止になりました。