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2020/12/02(水)Vol.411

スカラ座記者発表 - 今年の12月7日は?
2020/12/02(水)
2020年12月02日号
世界の劇場を知ろう
特集

スカラ座記者発表 - 今年の12月7日は?

「最初で最後」一度きりの特別コンサート!

ミラノの守護聖人の祝日12月7日はスカラ座がシーズンを開幕する日として毎年町を挙げての大きな祭典となっているのだが、今年はヨーロッパ中がコロナ禍第2波に見舞われてイタリアの劇場は閉鎖されてしまい、ドミニク・マイヤー新総裁はオペラ上演断念という苦渋の決断を下さざるを得なくなってしまった。
しかし、スカラ座にとって世界が注目する12月7日は簡単には諦めることが出来ない大切な日である。オペラ上演の中止を記者発表した日にマイヤー総裁は特別な催しをすると約束した。
どのような企画なのか興味を持っていたところ、11月25日、スカラ座が記者発表を行ったのでyoutubeを覗いてみた。未だにロックダウンが解除されていないミラノでこの会見はジャーナリストの参加なし、youtubeの実況配信で行われた。
壇上にはマイヤー総裁、リッカルド・シャイー音楽監督と演出家のダヴィデ・リヴェルモアが並んだ。マイヤー総裁は「シーズンオープニングの日にオペラが上演できないなんて、言葉で表せないほどの絶望感を味わいました。イタリア国営放送RAIの全面的な協力で今回のこの企画が誕生し、スカラ座ファミリーであるオーケストラ、合唱団、バレエ団と世界で活躍中の偉大な歌手たちが参加してくれることになって嬉しく思います」と挨拶した後、この経済危機の中で変わらないサポートを続けるスポンサーとキャンセル公演の払い戻しを要求せずにそのまま寄付してくれた多くの観客に感謝の意を表した。
続いて音楽監督のマエストロ・シャイーからコンサートの概要が紹介された。
「"オペラで物語る"ガラコンサートはヴェルディの5作品、プッチーニの3作品、ドニゼッティの3作品、ロッシーニの1作品、ジョルダーノの1作品の他、ビゼー、マスネ、ワーグナーと16のオペラ作品が24名の歌手とオーケストラ、合唱団、バレエ団の出演で演奏されます。『リゴレット』の悲劇的な呪いのテーマで始まり、希望の太陽が輝く『ウイリアム・テル』まで、世界で活躍する最高のキャストを迎えての上演になります」。スカラ座にとって重要な作曲家の作品を選んだという。物語はナレーターを務める演出家ダヴィデ・リヴェルモアによって進行されるそうだ。歌手、俳優、演出家、劇作家、劇場総裁と様々な経歴を持つリヴェルモアが昨年のオープニング『トスカ』で駆使した最新テクノロジーを使って舞台を作り上げる。
出演者は今世界で活躍中の豪華メンバーだ。『ルチア』で主役を歌う予定だったリゼット・オロペーサとファン・ディエゴ・フローレスをはじめ、レベカ、ヨンチェヴァ、オポライス、ガランチャ、メーリ、グリゴーロ、アラーニャ、ドミンゴ、サルシ、アブドラザコフらが登場する。バレエ界の貴公子ロベルト・ボッレも名を連ねる。
12月7日17時からのこの公演は無観客で行われ、テレビ中継放送される。イタリア国営放送RAIを通してネット配信もされることだろう。
マイヤー総裁が言う「最初で最後」一度きりの特別コンサート。楽しみである。

田口道子 演出家

■スカラ座記者発表(イタリア語)