世界はまだまだ不安定な状況に置かれていますが、ミラノ在住の田口道子さんより、イタリア各地の明るいニュースが届きました。
2020年はコロナ禍で劇場封鎖が続き、オペラシーズンの開幕はキャンセルになったのだが、今年は違う。ミラノ・スカラ座では豪華キャストを揃えてオープニングの演目『マクベス』の稽古中だ。音楽監督のリッカルド・シャイー指揮、ダヴィデ・リヴェルモア演出、マクベスはルカ・サルシ、マクベス夫人はアンナ・ネトレプコ、バンクォーはイルダール・アブドラザコフという顔ぶれだ。
12月7日、ミラノの守護聖人サンタ・アンブロージョの祝日のシーズン開幕はイタリア国営放送で中継されるが、ミラノでは刑務所、慈善施設、マルペンサ空港、映画館など34カ所でも中継され無料で公開される。オープニングに先駆けて12月1日から12日までミラノでは80ものイヴェントでオペラ『マクベス』のレクチャーやコンサートが行われる。
スカラ座のオープニングに重なってオペラファンの興味を引いているのがリッカルド・ムーティ・イタリアオペラ・アカデミーだ。毎年ラヴェンナで7月末に開かれていたアカデミーだが、今年は12月4日から15日までミラノのプラダ財団で『ナブッコ』を課題として開催される。若い指揮者、コレペティトール、歌手にマエストロ・ムーティが直々に指導するアカデミーは、ムーティがピアノを弾きながら解説する講演会に始まり、連日レッスンが行われる。
ヨーロッパはコロナ第4波を迎えて感染者が増大し、このところ南アフリカで新たな変異ウイルスが発見されて大騒ぎしているが、イタリアは小康状態が続いていて、劇場は100%観客を動員している。劇場入場の際はマスク着用とグリーンパス(ワクチン証明書)の提示が義務付けられているが、どの劇場も満席の盛況だ。因みに、10月27日にスカラ座初日のチケットが販売開始となったが、数時間で完売している。最高席は3,000ユーロ(約40万円)である。
ローマ歌劇場は11月20日にシーズンが開幕した。オープニングの演目はジョルジョ・バッティステッリの委嘱作品『ジュリアス・シーザー』で、イタリアのオペラ劇場としては珍しく現代作品による開幕となった。ダニエレ・ガッティ指揮、ロバート・カーセン演出の世界初演は大成功を収めた。
ローマ歌劇場『ジュリアス・シーザー』
の動画はこちらからご覧になれます。
hhttps://youtu.be/Yyc_IvgEU1c
ナポリのサン・カルロ歌劇場は11月21日にヴェルディの『オテロ』で開幕。初日にはマッタレッラ大統領を迎えた。主役をヨナス・カウフマンが歌って話題を呼んだ。ミケーレ・マリオッティ指揮、マリオ・マルトーネ演出、デズデモナはマリア・アグレスタで時代を現代に移した演出も好評だった。
久しぶりに戻ってきたイタリアだが、思っていた以上に劇場が活気に満ちている。
文・田口道子(在ミラノ 演出家)
*劇場の写真はいずれも現在ではありません。