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2023/02/15(水)Vol.464

イタリアの歌劇場が総力をあげて
"ヴェルディの家を守れ!"
2023/02/15(水)
2023年02月15日号
世界の劇場を知ろう
特集

イタリアの歌劇場が総力をあげて
"ヴェルディの家を守れ!"

イタリア・オペラの巨星ジュゼッペ・ヴェルディが1851年から亡くなる1901年まで、およそ50年暮らしたサンターガタの家を守ろうと、イタリアの歌劇場が立ち上がりました。
北イタリア、エミリア=ロマーニャ州ピアチェンツァ県の小さな街サンターガタの"ヴィラ・ヴェルディ"は、ヴェルディの邸宅を美術館として公開していた建物です。しかし長年相続について争ってきた4人の相続人は、コロナ禍による閉鎖による収益の減収により高額の改築費用などの負担を余儀なくされたことなどから、遂にこれを競売にかけたのです。そこで立ち上がったのがイタリア政府。政府は、ヴィラが個人の手に渡るのを防ぐために第一拒否権を行使すると宣言しましたが、予想価格の 3,000 万ユーロを下回る 2,000 万ユーロしか利用できません。そこで、ミラノ・スカラ座、ローマ歌劇場を含むイタリア各地の14の団体がヴェルディのオペラやコンサートをチャリティー公演として開催して、収益を拠出することになったのです。名付けて"VIVA Verdi!"。

"ヴィラ・ヴェルディ"では、今秋のローマ歌劇場日本公演の演目『椿姫』をはじめ、『イル・トロヴァトーレ』『運命の力』『ドン・カルロ』『アイーダ』『ファルスタッフ』が書かれました。

サンターガタのヴィラ・ヴェルディ。
ここから、『椿姫』をはじめ、『イル・トロヴァトーレ』『運命の力』『ドン・カルロ』『アイーダ』『ファルスタッフ』が世に送り出された。

競売のニュースが報じられると、すぐさま多くの音楽家たちが懸念を表明しましたが、ヴェルディへの深い敬愛を注ぎ、音楽家人生をこの作曲家に捧げている指揮者リッカルド・ムーティは「ヴェルディはダンテやレオナルド(・ダ・ヴィンチ)のようなもので、彼のヴィラが個人の手に渡ることは考えられない。"ヴィラ・ヴェルディ"は聖地なのだから」と訴えたことが新聞に掲載されました。
そして2月初旬、ムーティが"ヴィラ・ヴェルディ"を救うため、ピアチェンツァ市立劇場でケルビーニ・ユース・オーケストラによるコンサートを指揮することが発表されました。ピアチェンツァは一連の"VIVA Verdi!"にはプログラムされませんでしたが、2023年9月8日、同劇場の220周年記念の機会ともあわせてのコンサート開催となります。

コロナ禍による影響の大きさをあらためて感じながらも、イタリアの文化大臣であるジェンナーロ・サンジュリアーノが、ヴェルディの記憶を称えることは「共和国の義務」であると述べ、「ジュゼッペ・ヴェルディは、ガリバルディ、マッツィーニ、カヴールと並んで、リソルジメント(イタリア統一運動)の重要人物でした。私が大臣の役割を引き受けることを光栄に思ったとき、最初に生じた問題の1つは"ヴィラ・ヴェルディ"の運命でした。国に買収されるべきだという考えに、一瞬たりとも躊躇したことはありませんでした」と語っていることに、ヴェルディの偉大さを誇るイタリア人魂がうかがわれます。

"VIVA Verdi!"幕開け、2月のアレーナ・ディ・ヴェローナに続いては、ローマ歌劇場がミケーレ・マリオッティの指揮で「レクイエム」を公演、2023年6月のミラノ・スカラ座での公演まで開催されます。

2月10日 アレーナ・ディ・ヴェローナ『アイーダ』
2月14日 ローマ歌劇場「レクイエム」
2月14日 ローマ歌劇場「レクイエム」
2月23日 トリノ王立歌劇場『アイーダ』
2月26日 ボローニャ歌劇場 ガラ・コンサート
3月16日 ヴェネツィア、フェニーチェ歌劇場『エルナーニ』
3月28日 ジェノヴァ、カルロフェリーチェ劇場『二人のフォスカリ』
3月31日 カリアリ・オペラ ヴェルディとチャイコフスキーのオーケストラ作品によるコンサート
4月18日 パレルモ、マッシモ劇場 ヴェルディの音楽を使った『ウィンザーの陽気な女房たち』
4月19日 トリエステ歌劇場 コンサート(ダニエラ・バルチェッローナを迎えて)
4月20日 バーリ、ペトゥルッツェッリ劇場『アッティラ』
5月7日 ナポリ・サン・カルロ劇場 コンサート(アンナ・ピロッツィ、フレディ・デ・トマーゾ出演)
5月10日 フィレンツェ歌劇場 ヴェルディの序曲とバレエによるコンサート
5月26日 サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団 コンサート
6月15日 ミラノ・スカラ座 『マクベス』