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2023/06/07(水)Vol.471

ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭
バレンボイム80歳を祝す
2023/06/07(水)
2023年06月07日号
世界の劇場を知ろう
特集

ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭
バレンボイム80歳を祝す

ザルツブルクで開催される音楽祭には、春の復活祭音楽祭と7月から8月に開催される夏の音楽祭、そしてその間の5月に開催されるザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭があります。開催期間や規模的に最も大きいのは夏の音楽祭ですが、復活祭音楽祭、聖霊降臨祭音楽祭は、内容の充実ぶりで知られています。
聖霊降臨祭音楽祭は、1973年にヘルベルト・フォン・カラヤンが聖霊降臨祭コンサートを開催したことが始まりです。聖霊降臨祭の土曜、日曜、月曜に行われる3回のオーケストラ・コンサートで、1982年まではヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルによって行われました。カラヤンの死後、国際的なオーケストラが客演することとなり、1998年にはザルツブルク音楽祭が引き継ぎ、聖霊降臨祭音楽祭と改称されました。2007年からこの音楽祭の芸術監督を務めたのはリッカルド・ムーティ、2012年からは歌手のチェチーリア・バルトリが引き継ぎ、ここで上演された主要作品が、夏の音楽祭でも上演されるようになりました。

今年の聖霊降臨祭音楽祭は、5月26日から29日に開催されました。今年の音楽祭のテーマは「情念論」。グルック作曲『オルフェオとエウリディーチェ』、ハイドン作曲『哲学者の魂』、モンテヴェルディ『オルフェオ』がプログラム。
もっとも、ここでご紹介するのは、音楽祭最終日の〈オマージュ・ダニエル・バレンボイム〉と題されたチャリティ・ガラ・コンサート。このコンサートは、バレンボイムが今年80歳を迎えたことを機に、彼の長年の仲間たちがマエストロを讃えて集結したものでした。その顔ぶれはといえば、ズービン・メータ指揮のもと、ピアニストのマルタ・アルゲリッチとラン・ラン、歌手ではチェチーリア・バルトリ、ローランド・ヴィリャソン、プラシド・ドミンゴ、そしてソニア・ヨンチェヴァという面々。

ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭 「オマージュ・ダニエル・バレンボイム」
(左から)ローランド・ヴィラソン、プラシド・ドミンゴ、ソニア・ヨンチェヴァ、ラン・ラン、チェチーリア・バルトリ、マルタ・アルゲリッチ、ズービン・メータ、ダニエル・バレンボイム。オーケストラはフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団。
Charity Gala Hommage Daniel Barenboim: Rolando Villazón, Plácido Domingo, Sonya Yoncheva, Lang Lang, Cecilia Bartoli, Martha Argerich, Zubin Mehta, Daniel Barenboim, Orchestra del Maggio Musicale Fiorentino
© SF/Marco Borrelli

ここに集った誰もがマエストロとの深い絆をもつアーティストですが、ことにソニア・ヨンチェヴァは自身の公式サイトで、「バレンボイムは自分のキャリアにおいて重要な役割を果たした」と記しています。ヨンチェヴァは、2015年ベルリン国立歌劇場で新演出『椿姫』でヴィオレッタを歌い、"マリア・カラス以来最高のヴィオレッタ"と称賛され、一躍世界中の話題と注目を集めました。そして、このとき彼女を招いたのが、ほかでもないバレンボイムだったのです。その後もバレンボイムはベルリン国立歌劇場の新演出『メデア』にヨンチェヴァを起用。いまでは彼女の代表的レパートリーの一つとなっていることは周知の通りです。ここでヨンチェヴァが歌ったのは『蝶々夫人』のアリア「ある晴れた日に」。バレンボイムへの深い敬意が込められたことでしょう。

ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭 〈オマージュ・ダニエル・バレンボイム〉で歌うソニア・ヨンチェヴァ。ズービン・メータ指揮、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団演奏。
Charity Gala Hommage Daniel Barenboim: Sonya Yoncheva, Zubin Mehta, Orchestra del Maggio Musicale Fiorentino
© SF/Marco Borrelli