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2023/11/01(水)Vol.481

アメリカに「スカラ座協会」設立
2023/11/01(水)
2023年11月01日号
世界の劇場を知ろう
特集

アメリカに「スカラ座協会」設立

10月下旬、ニューヨークのイタリア領事館で「テアトロ・アラ・スカラ・アソシエーション・オブ・アメリカ(アメリカ スカラ座協会)」の創設が発表されました。同協会はミラノ・スカラ座を財政的に支援するだけでなく、米国における活動と作品に関する知識を広め、米国の聴衆や支持者の基盤を拡大することを目的としているとのこと。スカラ座財団公認の非営利団体として誕生しました。
同協会の設立は、スカラ座の観客の30%が外国人で構成されており、その最大グループである14%が米国から来ているという事実から生まれた"シンプルなアイデア"とのこと。設立発表の席でミラノ・スカラ座のドミニク・マイヤー総裁は「私たちはスカラ座が個人からの大きな支援を頼りにできるイタリアの、ヨーロッパのオペラハウスの一つであることを知っています。今年は財団に4300万ユーロがもたらされるでしょう(総予測予算は1憶2740万ユーロ)。これらのほとんどは明らかにスポンサーや企業からのものですが、私たちに大きな力を与えてくれる一般市民もたくさんいるので、この方向(アメリカでの協会設立)に進むのは面白いかもしれないと思いました」と説明しました。

協会の目的は、スカラ座のオペラ財団の活動、特に3つの柱となるプロジェクト(若者や子どものための特別プログラム、視覚や聴覚の障害者を含む誰もがスカラ座で鑑賞できるようにするアクセシビリティプログラム、偉大なオペラやバレエの舞台衣裳の復元)に対する財政的支援、さらに、2024年10月にクリスティアン・ティーレマン指揮により開幕する《ニーベルングの指環》新制作への支援も特別プロジェクトとして加えられました。
財政的な支援はスカラ座にとって同協会設立の大きな目的ではありますが、それだけではないと協会会長。「たしかに文化交流は優先事項の一つであり、特に新しい世代に焦点をあてていますが、私たちには文化的目標もあります。それは米国の支持者の間に橋をかけ、スカラ座の活動が世界中の人々にもたらす文化的影響を育むことです」。
この席で2023/24シーズンについても紹介したマイヤー総裁は「スカラ座はイタリア・オペラの伝統を体現しており、イタリアの文化とアイデンティティの最も重要な側面の一つを表しています。劇場とアメリカ国民の関係を強化することは、両国の歴史の一部であるアメリカとイタリアの絆を新たにすることを意味します」と語っています。

発表後の最初の活動の場となったニューヨークのディナーパーティーには、既にスカラ座への支持を表明する人や新しい支援者など70名のゲストが参加。マイヤー総裁の「劇場にとって非常に前向きな瞬間」という言葉は、スカラ座の明るい未来を感じさせます。