日本では英国ロイヤル・オペラ日本公演で2025年のウィーン国立歌劇場日本公演の予定が発表されましたが、実はこの6月、現地ウィーンでは"新劇場"に関する発表が行われていました。
ウィーン国立歌劇場は2番目の会場として、子ども、ティーンエイジャー、若者、家族向けの音楽劇場を2024年12月7日にオープンするというのです。その名称は「NEue STaatsoper」で、略称「NEST」ということに。すでにウィーン国立歌劇場の公式ホームページにも「NEST」という項目があり、ボグダン・ロスチッチ総裁の「NEST」についての言葉が掲載されています。そこには、ウィーン国立歌劇場が新たな劇場を必要としていることは以前から明らかであったこと。なぜならそれは、現在の劇場ではすでに年間300を超える公演が行われており、レパートリーを拡大することに限界があるのだと記されています。このレパートリーの拡大とは、次世代を見据えてのこと。総裁は、「若い世代向けの包括的で一貫性のある継続的なプログラムを真剣に考えているのであれば、すぐに完売することで有名な子どもや若者向けのオペラを数回追加するだけでは不十分です」と言います。
新劇場については、「我々が真剣であるということは、新しい会場が本当に『すべての曲を演奏できる』ものでなければならないということでもあります。音響的にも、技術的にも、空間的にも。言い換えれば、ステージ、オーケストラ ピット、楽屋、その他すべてを備えた本物の劇場です。近年、多くの会場がテストされてきましたが、ほとんど実現不可能なくらいの努力が求められたものもあれば、私たちが話している芸術的自由を許さなかったものもありました。したがって、ウィーン国立歌劇場からそう遠くないクンストラーハウスに適切な会場が見つかり、プロジェクトを可能にするパトロンも見つかったことは、非常に幸運でした」。
そう、新劇場はクンストラーハウスのフレンチホールを大改装することで誕生が実現したのです。248席と3つの車椅子用スペースがある客席は、かなりの急勾配になっていますが、これは見通しをよくするため。「まるで鳥になったかのように座って、自由に浮かび、何が起こっているかをを眺められる」とロスチッチ総裁。ちなみに座席はすべて取り外し可能で、通常とは異なるステージングも可能になるそうです。
NEST では、子ども向けおよび青少年向けのオペラやバレエの初演、コンサート、クイズショー、実験的な作品、ディスカッションイベント、創造的な作品の紹介、誰でも参加できる幅広いワークショップが開催されます。この新しい会場は、オペラ学校、オペラスタジオ、バレエアカデミーなどの若い芸術集団のパフォーマンスの場所でもあり、最初のシーズンではステージ上で約100のイベント、ホール上階では約80のワークショップが予定されています。
6月18日に行われたNESTの内覧とプログラムについてのプレゼンテーションで、ロスチッチ総裁はNESTが子どもたちに焦点を置いているとしながら、「しかし、私たちは他の意味も大切にしています」とも語っています。それは、育成の場としての役割と、「子どもたちだけを対象としたものではないプログラムの出発点を表す」ことを目的としているようです。新シーズンの初演のなかには、作品を独特な解釈と再構築する演劇集団ネステヴァル(ネスターファル)の16人によるワーグナーの『神々の黄昏』という実験的な演目や、ウィーン国立バレエ団のバレエ監督マーティン・シュレプファー振付による『ピーターと狼』ほか、さまざまな作品が並んでいることは、NESTが単なる「子ども向け」というだけではないことを感じさせます。
NESTの2024年12月7日からのシーズン・プログラムはこちらからご覧いただけます。
https://issuu.com/wienerstaatsoper/docs/nest_neue_staatsoper_spielzeitheft?fr=xKAE9_zU1NQ