イタリア・オペラの殿堂によるヴェルディ・オペラの神髄 ミラノ・スカラ座 TEATRO ALLA SCALA 2009年日本公演
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昨日9月17日(木) 、ミラノ・スカラ座2009年日本公演が、ダニエレ・ガッティ指揮「ドン・カルロ」で閉幕いたしました。
カーテンコールでは、「スカラ座のみなさん、また会いましょう!」と書かれた看板とともに、イタリア国旗を模した、赤、緑、白の3色の紙テープ、風船が振り落とされ、スカラ座らしい華やかなフィナーレとなりました。

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また、この日の公演は、天皇皇后両陛下、来日中のナポリターノ・イタリア大統領ご夫妻もご鑑賞され、カーテンコールでは「ドン・カルロ」の出演者たちに拍手を送っていらっしゃいました。

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初日の「アイーダ」をもって、ミラノ・スカラ座の日本公演の通算公演回数100回を達成するという記念すべき幕開けとなった今回の日本公演は、ダニエル・バレンボイム指揮「アイーダ」、ダニエレ・ガッティ指揮「ドン・カルロ」の2演目を上演。毎公演、6年ぶりの日本公演を心待ちにしていたオペラ・ファンから、大きな拍手が送られ、カーテンコールが繰り返されました。ご来場いただきました、たくさんのお客様に心よりお礼申し上げます。2週間の公演中、暖かいご声援をいただき、ありがとうございました!

photo:Kiyonori Hasgeawa

昨日(9月4日)、ミラノ・スカラ座2009年日本公演が、ダニエル・バレンボイム指揮「アイーダ」で華やかに開幕しました。

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1981年の初来日公演から28年。この公演をもって、ミラノ・スカラ座の日本通産公演が100回を達成しました。この後には、舞台上に歌手だけでなく、オーケストラのメンバーも上がり、ステファン・リスナー(ミラノ・スカラ座総裁・芸術監督)、マリア・ディ・フレーダ(ミラノ・スカラ座ジェネラル・ディレクター)、ダニエル・バレンボイム、杉田亮毅(日本経済新聞社会長)、佐々木忠次(財団法人日本舞台芸術振興会専務理事)の5名が法被姿で、鏡割りを行いました。
その後、イタリアの国旗を模した、赤、白、緑3色の紙テープが振り落とされ、"CONGRATULAZIONI AL TEATRO ALLA SCALA PER LA CENTESIMA RECITA I N GIAPPONE"という焼印の押された特製枡を手に100回を祝い乾杯。客席からは割れんばかりの大きな拍手が贈られ、舞台と客席が一体となってこの偉業を祝しました。

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photo:Kiyonori Hasegawa

明日の初日を前に、本日11時より、在日イタリア大使館において、ミラノ・スカラ座2009年日本公演の記者会見が行われました。

会見には、駐日イタリア大使/ヴィンチェンツォ・ペトローネ閣下、ミラノ・スカラ座総裁・芸術監督/ステファン・リスナー、「アイーダ」指揮者 ダニエル・バレンボイム、「ドン・カルロ」指揮者/ダニエレ・ガッティ、(財) 日本舞台芸術振興会専務理事/佐々木忠次の5名が出席し、明日の開幕に向けてのそれぞれの想いを語りました。

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09.09.03Scala1.jpg(左より、リスナー総裁、バレンボイム氏、ガッティ氏)


NHKで放送された会見の模様が、下記NHKのホームページにてご覧いただけます。

>>>NHKホームページ ミラノ・スカラ座ニュース


記者会見の詳細レポートは近日中にこの最新情報でお伝えする予定です。

尚、明日初日の「アイーダ」の公演をもって、ミラノ・スカラ座の日本公演が通算100回を達成いたします。当日券を若干枚数ご用意しておりますので、ぜひこの記念すべき公演にご来場ください。


photo:Kiyonori Hasegawa

昨年12月7日、ミラノ・スカラ座2008/2009シーズンの幕開けを飾った、ダニエレ・ガッティ指揮『ドン・カルロ』。田口道子さんのレポートでもこのプレミエの模様をお伝えしましたが、このたび各新聞批評がミラノ・スカラ座から届きましたので、ご一読ください。


『フィナンシャル・タイムズ』 アンドリュー・クラーク

『ドン・カルロ』は、かなり充実したできばえだった。その健闘ぶりの背景には、スカラ座とこのオペラの特別な関係がある。なぜなら、元々は1867年のパリで5幕物のオペラとして上演されたこの作品を、ヴェルディはここスカラ座で、4幕形式のイタリア語版に書き換えたからである。スカラ座でのオープニングは長大なセレモニーと化し、4時間30分という長丁場の一夜となった。しかし、舞台の工夫がみごとだったので、時はまたたくまに過ぎていった。今回の成功の立役者として真っ先に挙げられるのは、ダニエレ・ガッティである。そのゆったりとしたテンポは、常に「レガート・カンタービレ」。しかし、無理な作為は微塵もなく、絶妙にコントロールされており、ヴェルディの器楽部分の美しさと歌唱のしなやかさを浮き彫りにした。それは随所に発揮され、なかでも、人生と愛への別れを歌いあげるドン・カルロとエリザベッタのフィナーレの二重唱は白眉となった。エクサン・プロヴァンスやザルツブルク音楽祭でサイモン・ラトルとともにワーグナーの《指環》を手がけているフランス人演出家、シュテファン・ブラウンシュヴァイクが果たした功績も大きい。ブラウンシュヴァイクは、スカラ座が歌の劇場であることをよく心得ており、その演出は、ティボー・ファン・クローネンブロックがデザインしたルネサンス期スペイン風の僧衣や上衣とともに、歌うという行為を何よりも優先させるものとなった。しかし、ブラウンシュヴァイクは、ヴェルディのオペラの元となったシラーの戯曲に対しても、きわめて深い洞察を示した。‥‥異端者火刑の場面は異様なまでの迫力で、大勢の登場人物からなるフレスコ画ではなく、個人のドラマが描き出され、フィリッポ2世に対する私刑に立ち会っているかのようだった。  
スチュアート・ニールのカルロは――力強く、明晰かつ繊細――大きな驚きだった。ダリボール・イェニスは満足すべきロドリーゴ像を作りあげた。アナトリー・コチェルガは、冷徹無比の宗教裁判長。フィオレンツァ・チェドリンスは控えめなエリザベッタで、歌いあげる箇所よりもピアニッシモにおいてその力量を発揮した。代わってプリマドンナの役割を担ったのがドローラ・ザージック。公演は成功のうちに終わった。

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『ジョルノ』 エルヴィオ・ジュディチ
ますます評価を高めるスカラ座での『ドン・カルロ』公演‥‥ダニエレ・ガッティの指揮もまた、明暗のコントラストをますます強め、音楽としてもドラマとしても深い内容に裏打ちされた無限のディテールに彩られたものとなった。それとぴったり調和していたのが、本物の演出によって作られた舞台、すなわち、単なるイメージではなく、登場人物たちの内面世界を照らし出すことに腐心した舞台作りである。‥‥音楽も舞台も――オペラ作品である以上、当然といえば当然だが――キャストに焦点が集められた。ますますはっきりしてきたのは、スチュアート・ニールの実力のほど‥‥当初はもちろん慎重さが目立ったが、その後は充実した安定感と力強さにあふれていた。つややかな美声が、明暗のコントラストに一層の磨きをかけ、それによって、興味深くも多面的な役柄を表現するのに成功した。異端者の火刑の場では、切り裂くような鮮烈なB音をいともやすやすと歌いこなした。つづいて秀逸だったのが、ミカエラ・カロージのエリザベッタ。ゆたかな声量、魅力的な陰影に富む中・低音域、響きわたる高音域は、宙に薄く漂うのも、包みこむのも思いのまま。それはアポッジョや呼吸の卓越したコントロール技術のたまものである。スケールゆたかな声量とすばらしい声質、それに、言うにおよばず、洗練されたそのフレージングや演技において、アンナ・スミルノヴァはファーストキャストのエボリを圧倒した。‥‥嬉しい驚きだったのが、バリトンのトーマス・ヨハネス・マイヤー。声量よりも美声に優るマイヤーの、牢獄の場面でのたぐいまれな繊細さは心に深く響いた。


『イル・ガッゼッティーノ』 マリオ・メッシニス

ダニエレ・ガッティは、フィリッポ2世の苦悩や、このオペラの政治的駆け引きと激情の場面だけをことさらクローズアップするのではなく、ストーリーのいくつもの流れの間に完璧なバランスを作りあげる。それによって、ドラマチックな緊張を直截な洞察力で掘り下げると同時に、哀切きわまりない数々の場面を、登場人物たちの不安に打ち震える内面を、ドン・カルロとエリザベッタの品位に満ちた悲嘆を浮き彫りにする。器楽パートを綿密に分析したガッティは、ヴェルディ音楽とオーストリア=ドイツ文化との間の――あからさまではないが、地下水脈のように流れている――近親性を強調する。管弦楽による荘厳な表現が、隅々にまで神経が行き渡ったフレージングの繊細さと共存する。‥‥それは独創的かつ啓発に満ちたテクスト解釈といえる。あらゆるパートにわたってこれほど透明かつコンパクトな音楽をスカラ座管弦楽団から聴いたのは稀にみる経験である。オーケストラは、さまざまな音域が均質にほどよく溶け合い、まるで中央ヨーロッパのような音を奏でた。

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『イル・ソーレ24オーレ』 カルラ・モレーニ

観客は‥‥『ドン・カルロ』を観るために――ただそれを観るためだけに!――スカラ座に足をはこんだ。音楽のためだけに訪れた観客は、知性を全開にし、感動に身を任せながら、みずからの五感を通じて体験した。
指揮台に立つガッティの卓越した統率力の功績。緊迫したテンポ、安易な迎合は一切なく、反対に、細部までコントロールを効かせ、オーケストラをこれでもかとばかりに駆り立てる。そこに奏でられる音楽はこよなく美しく、特に独奏の部分は、洗練されたテイストと繊細な分節法によって引き立てられる。ガッティのこのスカラ座のヴェルディこそは、ムーティ、アッバード、そしてその前の時代の最良の伝統を汲みあげるものである。毅然として伝統をよみがえらせるガッティの腕は、舞台に完璧に映し出され、このオペラについての苦い直観によってさらに磨き上げられる。たとえば、宮廷の軽やかな情景が、異端者の火刑の場と対比される。あちらでは死に向かい、こちらでは祝祭へと急ぐ。スカラ座に音楽監督が必要だとするなら、ここにその監督がいる。

『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』 ジョージ・ルーミス
ブラウンシュヴァイクがエクサン・プロヴァンスやザルツブルクで手がけているワーグナーの《指環》の制作に対しては賛否両論が入り乱れたが、今回のスカラ座での制作は、元々の規模に立ち返った注目すべきものであり、伝統的な舞台演出のもつメリットが生かされている。
ブラウンシュヴァイクのアプローチは、このオペラが今回のような形――つまり、ヴェルディがミラノの上演に際して改訂した4幕版――で上演されたとき、特別な意味をもつ。そこではフォンテヌブローの森の場面が省かれるが、あざやかな記憶として残される。

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