追加公演 急遽決定!

 主役よりも、それを取り巻くキャラクターの方が強烈で目立ってしまう芝居を「『不思議の国のアリス』のようだ」などと表現することがある。確かにウサギを追って穴にとび込んでしまった少女アリスが出くわすのは、いずれも「個性」なんて簡単な言葉では言い表わせない人物ばかり。アリスはただ呆然として目の前で展開される出来事を見守るしかないというのがこれまでの常だった。
 ところが、英国ロイヤル・バレエ団の『不思議の国のアリス』は、まず主人公アリスが他の誰よりもイキイキしていることに目を見張る。冒頭、いかにも英国らしい館の庭で行われているガーデンパーティでも、思い思いに仮装した姉妹たちと踊っていても1人だけ尋常ではない好奇心が感じられ、ゆえに原作者ルイス・キャロルとおぼしき男性とも一番仲良しというのがすぐに合点がいくのだ。
 ここでは、アリスと言えば肩まで垂らした金髪の少女、というこちらの思い込みをくつがえした、ブルネットの耳までのショート・ヘアが効を奏している。原作よりも年齢を上げたのは、関係者みんなが教えてくれたように「あんまり小っちゃな女の子だと、デュエット(パ・ド・ドゥ)が似合わないでしょう(笑)」ということらしいが、その分、自分の意志をちゃんと持つ強い女の子の要素が濃くなった。もちろん、相変わらずの巻き込まれ型ヒロインで、彼女の大冒険には舞台を観ている私たちもヒヤヒヤするのだが、それこそ大きな赤い台に下半身を隠して乗って現われるハートの女王にも負けないほどの存在感がある。これ、どうしてだろうと考えたら、全3幕通してアリスはずっと踊っているんですね。当初は2幕物で、それが3幕になったことで物語の流れも良くなり、踊りっ放しのアリスもやっとひと息つくことができたようだが、それにしてもクリストファー・ウィールドンの振付は、ユニークさといい、難易度といい、このアリス役をちゃんと踊れるダンサーこそが次代の英国ロイヤル・バレエ団を担う、と言えるのではないだろうか。
 その次代のホープとして、崔由姫(チェ・ユフィ)の活躍ぶりを観ることができたのは思わぬ収穫だった。前述したように、アリスを踊るダンサーは皆ブルネットのウィッグを着けるのだが、元々アジア系の崔は瞳の色とも合うのかこの格好がとても似合っている。そしてブルー系の基調はそのまま、いつの間にか替わっている4着の衣裳が各々の特徴を生かした振付をサポートし、大冒険の中でアリスが確実に成長していく様子を見せてくれるのである。他のアリスに比べて、少し小柄なのも少女らしさを後押しするが、途中からそれすら意識させなくなるのは彼女の踊りの力、そして演技力によるものだろう。
 もっとも、こんなアリスが困惑させられっ放しの名物キャラクター達の優雅な暴れぶりはやはり特筆しなければならない。ローズ・アダージオならぬタルト・アダージオの場面では、毎回大拍手が巻き起こるハートの女王。ずっと赤い大きな台の中に下半身を隠してきて、その台がパカッと割れると美しい赤いチュチュ姿になるというサプライズも含め、「女王様、それってシーン泥棒ですよ」と声をかけたくなるような弾けっぷり。ティム・バートン監督の映画版の大っきな頭のヘレナ・ボナム・カーターにも負けない強烈さとコミカルさには、大人も子どもも大笑いしていた。女王の派手な動きの側では、常にチョコマカ何かやっている王様もおかしくて要注目。
 そうそう、タップダンスというとび道具を繰り出してきたマッド・ハッターも期待以上に楽しい。格好こそ、映画版のジョニー・デップを真似た? だが、不思議の国だったらこれもありそうだなと素直に納得。ルイス・キャロル先生のズボンのお尻が破けてモコモコとウサギの尻尾が生えてきたり、落ちた穴が映像で表現されていたり、何もかもがワクワクする。いったいどうなってしまうの? と心配させられるアリスの初恋の行方も含め、劇場を出る時は、きっとあなたも笑顔になっているだろう。


英国ロイヤル・バレエ団
「不思議の国のアリス」(全3幕)

会場:東京文化会館

2013年
7月5日(金) 6:30p.m./ 7月6日(土) 1:00p.m./ 7月6日(土) 6:00p.m./ 7月7日(日) 1:00p.m.

【予定される主な配役】
アリス:ローレン・カスバートソン(7/5,7/7)ベアトリス・スティックス=ブルネル(7/6昼)、サラ・ラム(7/6夜)
ハートのジャック/庭師ジャック:フェデリコ・ボネッリ(7/5,7/7)、ルパート・ペネファーザー(7/6昼)、スティーヴン・マックレー(7/6夜)
白うさぎ/ルイス・キャロル:エドワード・ワトソン(7/5,7/7)、ブライアン・マロニー(7/6昼)リカルド・セルヴェラ(7/6夜)
ハートの女王/アリスの母親:ゼナイダ・ヤノウスキー(7/5,7/7)、イツァール・メンディザバル(7/6昼)ラウラ・モレーラ(7/6夜)
マッドハッター/マジシャン:スティーヴン・マックレー(7/5,7/7)未定(7/6昼)、アレクサンダー・キャンベル(7/6夜)


追加公演
「不思議の国のアリス」

会場:東京文化会館

2013年7月7日(日) 6:00p.m.

【予定される主な配役】
アリス:崔由姫
ハートのジャック/庭師ジャック:ニーアマイア・キッシュ
白うさぎ/ルイス・キャロル:リカルド・セルヴェラ
ハートの女王/アリスの母親:ラウラ・モレーラ
マッドハッター/マジシャン:アレクサンダー・キャンベル


「白鳥の湖」(全4幕)

会場:東京文化会館

2013年
7月12日(金) 6:30p.m. /7月13日(土) 1:00p.m. /7月13日(土) 6:00p.m. /7月14日(日) 1:00p.m.

【予定される主な配役】
オデット/オディール:アリーナ・コジョカル(7/12)、ロベルタ・マルケス(7/13昼)、サラ・ラム(7/13夜)、マリアネラ・ヌニェス(7/14)
ジークフリート王子:ヨハン・コボー(7/12)、スティーヴン・マックレー(7/13昼)、カルロス・アコスタ(7/13夜)、ティアゴ・ソアレス(7/14)


たった一夜のスペシャル・プログラム!
<ロイヤル・ガラ>

会場:東京文化会館

2013年7月10日(水) 6:30p.m.

【来日予定のプリンシパル】
カルロス・アコスタ、リャーン・ベンジャミン、フェデリコ・ボネッリ、アリーナ・コジョカル、ローレン・カスバートソン、ニーアマイア・キッシュ、ヨハン・コボー、サラ・ラム、スティーヴン・マックレー、ロベルタ・マルケス、ラウラ・モレーラ、マリアネラ・ヌニェス、ルパート・ペネファーザー、ティアゴ・ソアレス、エドワード・ワトソン、ゼナイダ・ヤノウスキー


入場料[税込]

S=¥22,000 A=¥20,000 B=¥18,000
C=¥13,000 D=¥10,000 E=¥7,000

エコノミー券=¥5,000
学生券=¥3,000

◆「不思議の国のアリス」「白鳥の湖」2演目セット券[S, A, B券]
◆ペア割引券 ※NBSチケットセンター電話予約のみで受付
S券ペア割=¥43,000 A券ペア割=¥39,000 B券ペア割=¥35,000
◆親子ペア割引券 ※3月12日(火) よりNBSチケットセンター電話予約のみで受付
親子S券ペア割=¥33,000 親子A券ペア割=¥30,000
親子B券ペア割=¥27,000
◆7月6日(土) 1:00p.m. 公演限定「アリス」ファミリー券 (※3月12日(火)より、NBS電話予約とイープラスのみで受付開始)
大人=¥18,000(B券相当) + 子ども1名様につき¥3,000)

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