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ベルリン国立歌劇場でシェーンベルクの大作『モーゼとアロン』プレミエが行われた2004年4月、その衝撃的な上演のニュースは世界へと広まりました。このオペラのテーマは、神の存在をめぐる思想(言葉)とイメージ(音楽)の対立とされていますが、ペーター・ムスバッハによる演出は、まさに現代社会を映したものとしてつくられ、我々に問題を提起したからです。特徴的なのは、本来はモーゼがいなくなり、不安と焦燥に駆られた民衆の前に、アロンが仕立てたのは黄金の仔牛と設定されていますが、これを人型の黄金の像に変えていることです。やがて民衆の心が離れたときには、その頭部がもぎ取られ、倒された像のうえで大騒動が巻き起こる…。この光景は、誰の目にも、その前年に世界を震撼させたフセイン政権崩壊を思わせるものでした。また、出演者全員が背広にネクタイ、髪をなでつけサングラスをかけているというのが、映画「マトリックス」を連想させたことも、視覚的に強いインパクトを与えたのです。
モーゼとアロンという二人の主役とともに、このオペラの上演に重要な役割を果たすのは合唱団。音楽監督バレンボイムは合唱団には2年、オーケストラには半年余という時間をかけて、この難曲の上演に取り組んだといいます。
こうして、誕生したバレンボイムとベルリン国立歌劇場の「モーゼとアロン」は、来年秋の日本公演においても、最大の注目を集めるばかりではなく、日本オペラ上演史上においても、歴史に残る大きな出来事となるはずです。
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