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ベルリン国立歌劇場がバイロイトと並ぶ“ワーグナーのメッカ”と化した・・・これが、ダニエル・バレンボイム音楽監督のもと行なわれたワーグナーのオペラ全10作の新制作がもたらした確かな成果です。2002年の〈フィスト・ターゲ〉では、全作品連続上演も行なわれましたが、同一指揮者、同一演出家によるワーグナー・チクルスは、まさに空前絶後の大プロジェクト。“聖地”バイロイトでも実現しないこの偉業を見事に達成させた原動力は、まずバレンボイムと演出家ハリー・クプファーの、ワーグナー作品の本質をつき、重厚さ、説得力を示す圧倒的なパワーにあるといえます。
「彼は情感の強さと音量の違いを理解していることが明らかだった。これは、台詞にも、演技にも、もちろん音楽にも当てはまる。彼はまた、あまりにも大きな音量や声の強さや叫び声といったものに頼らずに、歌手に並はずれた強い情感を生み出させることができる。彼の手にかかると、非常に低い音量の時に、もっとも張りつめた瞬間が生じることもある」。これはバレンボイムが自伝「音楽に生きる」(蓑田洋子訳/音楽之友社刊)のなかでクプファーに魅せられた理由のひとつとして挙げている言葉です。バレンボイムの目が正しかったことは、2000年にこの『トリスタンとイゾルデ』が新演出されたときに証明されました。すべての音符、言葉、そしてまばたきのひとつに至るまでが、愛というテーマに殉じ、究極の恋愛物語『トリスタンとイゾルデ』の決定版が誕生したのです。このバレンボイム&クプファーの入魂の傑作を見逃すことはできません。 |
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