ウィーン・シリーズ ウィーン国立歌劇場 2016年日本公演 ★2演目/3演目セット券(S,A,B券) 4⁄14(木)21:00〜4⁄21(木)18:00 一斉前売 NBSチケットセンター&WEB 4⁄23(土)10:00 a.m.より ★単独券 6⁄4(土)10:00a.m.より

4年ぶりとなるウィーン国立歌劇場の日本公演は、それぞれの演目のスペシャリストが指揮をとる3演目であることが話題を呼んでいますが、彼らの手腕は優れた歌手とともに発揮されることはいうまでもありません。今号では、“オペラの殿堂”の異名をもつウィーン国立歌劇場が日本公演のために厳選した歌手たちの魅力をご紹介していきます。

 “R.シュトラウスのオペラは女声のオペラである”といわれることがあります。それは単に女性が主役ということではなく、女性の声が持つさまざまな魅力が効果的に用いられているということ。『ナクソス島のアリアドネ』に登場するアリアドネとツェルビネッタ、そしてズボン役の作曲家の3役にも、みごとなまでに異なる個性をもつ“女声”が要求されています。
 アリアドネ役を歌うグン=ブリット・バークミンは、決して爆発するのではない抑えたなかに感情の起伏を充分に表すことが要求されるこの役をはじめ、R.シュトラウスの諸役で高い評価を得ています。前回のウィーン国立歌劇場日本公演でのサロメでの魅惑的な姿も思い出されます。アリアドネと対照的な性格で超絶技巧のコロラトゥーラを要求される難役ツェルビネッタ役のダニエラ・ファリーは、目下この役の代表選手というべき存在。ツェルビネッタの幻惑的な魅力はこのオペラの出来を左右するものでもあります。芸術に純粋に生きる作曲家は、彼女によって生身の愛に目覚めるのです。作曲家役にはヴェッセリーナ・カサロヴァが登場。なめらかさと芯のある声質をもつカサロヴァはケルヴィーノ役やオクタヴィアン役をはじめ、ズボン役でも多くの成功をおさめてきました。ツェルビネッタとのあやしい魅力に未知の期待が高まります。
 女声の重用により、実はR.シュトラウスはテノール嫌いだったのでは?とみられることもありますが、真偽は不明。ともあれ、バッカス役のテノールには大きな役割があります。彼の登場は、死を待ち望むアリアドネの心を一転させます。それも長い時間をかけて口説き落とすのではなく、ほぼ一瞬と言っていいくらいの時間で。インパクトのある声と説得力をもった歌唱が求められる難役です。バッカス役のヨハン・ボータの、誰もが認める美声が、これを可能にします。

 構想から完成までに30年近くを要したワーグナーの大作《ニーベルングの指環》全4部作のなかの2作目『ワルキューレ』では、《指環》全作を流れる権力闘争のドラマより、登場人物たちが抱えるさまざまな情感が表されることが魅力。愛ゆえの苦悩や葛藤はオペラでは珍しくありませんが、『ワルキューレ』にあるのは、兄妹の禁断の愛、夫として父としての葛藤、そして父娘間の愛と苦悩と、まさしくあらゆる感情が登場人物たちの間に渦巻いていきます。観客を深い感情のうねりに引き込むのは、重量級の歌手たちの力量あってこそ!
 ワーグナー作品のなかで最も悲劇色の濃い人物といわれるジークムント役のクリストファー・ヴェントリスは、美声のワーグナー・テノールとして注目の人。バイロイトでも活躍するベテラン、ジークリンデ役のペトラ・ラングとの間で繰り広げられるのは陶酔的な愛の世界です。ジークムントの強い愛によって、彼に死を、と命じられたブリュンヒルデも父ヴォータンへの翻意を決意するのです。ブリュンヒルデのこの決意は、神々の長ヴォータンの怒りを買うとともに、父娘間に猛烈な苦悩をもたらします。ブリュンヒルデ役は、女性がもつあらゆる感情表現の演じ分けが長丁場にわたって要求される究極のドラマチック・ソプラノでなければなりません。ニーナ・シュテンメのブリュンヒルデはウィーン国立歌劇場はもとより、ミラノ・スカラ座やバイエルン国立歌劇場など、目下この役で世界最高といわれるもの。圧倒的な迫力と感動をもたらします。そして、この壮大な物語の根源に立つヴォータン。神々の長であり、世界制覇の野望をもちながらも、『ワルキューレ』では、ジークムントの父、フリッカの夫、ブリュンヒルデの父としての感情に翻弄されます。ヴォータン役のトマス・コニエチュニーは、当代きってのドラマチック・バス・バリトン。強靭さと繊細さを併せ持つ、その声と表現力によるヴォータン役の素晴らしさはすでに実証されています。このほか、ワーグナー・オペラでは常に圧巻の存在感を放つミヒャエラ・シュースターによるフリッカ役も、ヴォータンならずとも抗えない強力なキャスト!

 ウィーン国立歌劇場によるモーツァルトの『フィガロの結婚』といえば、誰もが王道中の王道たる上演を期待するはず。イタリア・オペラの中には、一人のプリマ・ドンナの存在によって“決定打”が打たれる作品も見られますが、モーツァルトのオペラはそうはいきません。次々に繰り出される典雅な旋律や美しいアリア、重唱の数々の魅力は、すべての登場人物が高い技量を備え、さらにアンサンブルとしても高いレヴェルを築かなければならないのです。
 アルマヴィーヴァ伯爵役のイルデブランド・ダルカンジェロは、近年、飛躍的な成長を遂げたといえます。演じる役も、声や表現の深まりとともに進化させ、モーツァルトなら『ドン・ジョヴァンニ』のレポレロからドン・ジョヴァンニへ、『フィガロの結婚』もフィガロから伯爵へといった具合に。ダルカンジェロが「マエストロからモーツァルトを歌うことを学んだ」と語るのは今回の指揮者リッカルド・ムーティ! ムーティからの教えを語る歌手は数多く存在しますが、マエストロはかなり早い段階で彼らの才能を見抜いていたことは証明されています。たとえばムーティ・ファンなら今回の伯爵夫人役エレオノーラ・ブラットの名前を2014年ローマ歌劇場日本公演『シモン・ボッカネグラ』のアメーリアとして記憶しているはず。日本公演ではバルバラ・フリットリの病気による急遽の代役となりましが、実はローマ歌劇場での2012/13年シーズン開幕で歌い、大好評を博したのはブラットでした。
 実はエレオノーラ・ブラットのほか、フィガロ役のアレッサンドロ・ルオンゴ、スザンナ役のローザ・フェオーラは、2014年秋にムーティがローマ歌劇場を離れる前に、2016年5月同劇場での『フィガロの結婚』にキャスティングした歌手たちです。ルオンゴは1978年ピサ生まれ。2011年にはラヴェンナ音楽祭でムーティと共演しています。フェオーラは2014年の来日リサイタル時、ムーティに認められてザルツブルク精霊降臨音楽祭に出演した“ブレイク直前のイタリアの美声”と紹介されました。また、ケルビーノ役のマルガリータ・グリシュコヴァは2012年のウィーン国立歌劇場日本公演でも同役を歌い大絶賛されました。前回はまだほとんど無名だった彼女ですが、今夏はザルツブルク音楽祭でもケルビーノで出演する予定です。ムーティの審美眼が証明される優れた逸材たちが揃います。

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『ナクソス島のアリアドネ』

【公演日】

2016年
10月25日(火) 7:00p.m.
10月28日(金) 3:00p.m.
10月30日(日) 3:00p.m.

会場:東京文化会館

作曲:R.シュトラウス
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:マレク・ヤノフスキ

【入場料[税込]】

S=¥63,000 A=¥58,000 B=¥53,000 C=¥48,000 D=¥32,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『ワルキューレ』

【公演日】

2016年
11月 6日(日) 3:00p.m.
11月 9日(水) 3:00p.m.
11月12日(土) 3:00p.m.

会場:東京文化会館

作曲:R.ワーグナー
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:アダム・フィッシャー

【入場料[税込]】

S=¥67,000 A=¥61,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『フィガロの結婚』

【公演日】

2016年
11月10日(木) 5:00p.m.
11月13日(日) 3:00p.m.
11月15日(火) 3:00p.m.

会場:神奈川県民ホール

作曲:W.A.モーツァルト
演出:ジャン=ピエール・ポネル
指揮:リッカルド・ムーティ

【入場料[税込]】

S=¥65,000 A=¥60,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000

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