モーリス・ベジャール没後10年記念特別公演 モーリス・ベジャール・バレエ団 Aプロ 「魔笛」Bプロ「ボレロ」 「ピアフ」 「アニマ・ブルース」 「兄弟」 世紀の巨匠没後10年を迎え、蘇る傑作&最新作で上陸!

巨匠の遺志を映したBBLの現在と未来がここに!

 ベジャール没後10年に当たる2017年、モーリス・ベジャール・バレエ団が、カンパニーの単独公演としては4年ぶりの来日公演を行う(2015年に東京バレエ団とベートーヴェン『第九』を共演)。ベジャールが亡くなった11月に、振付家が愛した日本で没後10年を迎えるのも、何かの符牒のように感じられる。マスター亡き後も、カンパニーは芸術監督のジル・ロマンのもとで新作・旧作を織り交ぜて世界各地で公演を続けてきたが、偉大なベジャール作品は彼が死してなお、大きな衝撃と感動を与え続け、芸術的価値は色褪せるどころかさらに高まっている。膨大な音楽的知識と、民族文化、宗教、美術、哲学、文学に通じていたベジャールは、ストラヴィンスキーからピエール・アンリまで20世紀の「問題作」ほぼ全てに舞踊の命を与え、未来に広く開かれたメッセージを遺した。ワーグナーの楽劇や黛敏郎のオリジナル曲、ザ・レジデンツやクイーンのロック・ミュージックさえベジャールの手の中ではエキサイティングな素材となったのだ。
 2017年の来日公演では、13年ぶりの再演となるモーツァルトの『魔笛』が上演される(初演は1981年)。カール・ベーム指揮のベルリン・フィルの録音を使い、ダイジェストではなくすべての音楽を使って、ジングシュピールの登場人物をダンサーに移し替えた作品だ。2004年の来日公演では、現在も活躍中のエリザベット・ロスが夜の女王を踊り、カテリーナ・シャルキナが三人の魔女の一人を、那須野圭右がパパゲーノを、ジュリアン・ファヴローがザラストロを演じて、ジル・ロマンも弁者として舞台に立った。13年という年月を経て、この作品がどのように輝きだすのか…振付のもつ底力が明らかにされるだろう。シンプルながら暗示に富んだ装置にも、モーツァルト・オペラからベジャールが読み取ったいくつもの「暗号」が刻印されている。最晩年の作品『80分間世界一周』で、ダンスは世界をひとつにつなげる、というオプティミスティックな哲学を爆発させたベジャールの「分離ではなく融合、憎しみではなく友愛こそが世の中で一番大事」というメッセージが、このバレエにもふんだんに詰まっている。キャスティングも含め、2017年版には大きな期待が募る。
 Bプログラムでは、ジル・ロマンの創作2本に加えて、ベジャールの80年代の創作『ピアフ』(1988)と『ボレロ』(1961)も上演される。『ブレルとバルバラ』(2001)など、根っからのシャンソン好きを隠さなかったフランス人ベジャールが、エディット・ピアフのオマージュとして創作した『ピアフ』は、ノスタルジックな香りが漂う魅力的な作品。ピアフの遺影を背景に、カジュアルなズボン姿の男性ダンサーが10数人舞台に登場し、「アコーディオン弾き」や「愛の讃歌」、アジテートするようなピアフの演説とともに群舞を展開する。1988年の来日公演の映像では、ヨーラン・スヴォルべリが美しいソロを踊っており、このハイライトを踊るベジャール・バレエ団のダンサーの活躍に注目が集まりそうだ。
 ジル・ロマン振付の『アニマ・ブルース』(2016)は40分ほどの作品で、駅の待合室かロッカールームを想像させる暗い空間で、男女が出会い離れていく様子を、コンテンポラリーを主体にしたさまざまなスタイルの振付で構成したオムニバス的性格の作品。ブルースを奏でるエレキギターのサウンドが効果的で、使用されているコンピューター音楽も個性的だ。
日本人ダンサー、那須野圭右と大貫真幹が双子の兄弟のようなデュオを踊る『兄弟』(2014)は、恐らくジル・ロマンがダンサーにインスピレーションを受けた作品なのだろうか。音楽にはチェチーリア・バルトリが歌うラヴェルの「ハバネラ」やサティの「ジムノペディ」、三味線の吉田兄弟と、美空ひばりが歌う「ラ・ヴィ・アン・ローズ」が使用され、それらがSFのような不思議なストーリーに、ノスタルジックな通奏低音を与えている。ベジャール・バレエ団では歴代個性的な日本人ダンサーが活躍し、作品の重要なカギを握っていた。ジル・ロマンはその伝統をベジャールから継承したのかも知れない。『兄弟』 では那須野・大貫の新しい魅力を発見することが出来るだろう。

没後10年記念特別公演
モーリス・ベジャール・バレエ団

Aプロ
「魔笛」

【公演日】

2017年
11月17日(金)6:30p.m.
11月18日(土)2:00p.m.
11月19日(日)2:00p.m.

Bプロ
「ボレロ」「ピアフ」
「アニマ・ブルース」「兄弟」

【公演日】

2017年
11月25日(土)1:30p.m.
11月25日(土)6:00p.m.
11月26日(日)2:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

Aプロ 「魔笛」 振付:モーリス・ベジャール 音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
Bプロ 「ボレロ」 振付:モーリス・ベジャール 音楽:モーリス・ラヴェル
「ピアフ」 振付:モーリス・ベジャール 音楽:エディット・ピアフ
「アニマ・ブルース」 振付:ジル・ロマン 音楽:シティパーカッション(ティエリー・ホーシュテッター&jB メイアー)
「兄弟」 振付:ジル・ロマン 音楽:モーリス・ラヴェル、エリック・サティ、吉田兄弟、美空ひばり、シティパーカッション(ティエリー・ホーシュテッター&jB メイアー)

【入場料[税込]】

S=¥17,000 A=¥15,000 B=¥13,000 C=¥10,000 D=¥8,000 E=¥6,000