5月21日、ミュンヘンで新演出プレミエが行われた『タンホイザー』。演出だけでなく、美術や衣裳もカステルッチが担当するということで、
その全貌は幕が開くまで秘密のヴェールに包まれていましたが、プレミエ公演は大きな喝采を得ました。
そのプロダクションには、目にも耳にも嬉しい“驚き”が次々と繰り出されます。
日本公演での新鮮な楽しみを奪うことにならないよう、詳細すべてではなく、驚くべき「美」のポイント、ベスト3をご紹介していきます。
まず挙げるべき美しさは、「聴く美」。これはペトレンコ率いるオーケストラの演奏の緻密さ、そして合唱団の威力によるものです。実は序曲から続くバッカナーレでは半裸の女性たちが弓矢を射ることもあり、視覚的なインパクトもあるのですが、実際に舞台に引き込んでいるのはオーケストラの演奏です。強烈な演奏の力は、第2幕、第3幕と、場面が進むなかでも、さまざまな場面の色や雰囲気を完璧に作り出していきます。さらに、特筆すべきは合唱。劇場内に響く巡礼の合唱は、耳だけでなく、聴く者の心の奥底へと染み入ります。
「聴く美」において、ソリストたちを取り上げるのは野暮というものかもしれませんが、どうしても記しておきたいのは、タンホイザー役のフォークトの美声。もともと美しい声質の持ち主ではありますが、以前にもました滑らかさが! 日本公演登場に、期待が膨らみます。
このプロダクションでは、強力な印象をもたらす視覚的アプローチが次々と繰り広げられます。先にも記した冒頭場面に続く第1幕では妖しい蠢めきがヴェーヌスベルクの魔性を表します。また、第2幕「歌の殿堂」は、重厚な装置を用いるわけではないのに、たしかに「歌の殿堂」たる広がりと美しさそのものが出現し、こんな方法があったのか?!と思わせられます。最終幕は、純粋な祈りにふさわしいシンプルな静けさ。幕切れに向かい、舞台後方に出現する文字は、この物語を、古き太古の昔から続くものとして俯瞰する演出のコンセプトに通じているものといえるでしょう。
「聴く美」と「見る美」に引き込まれるこのプロダクション。観客はそれらを総合して感じ取ります。見終わった後、どのように感じるか…‥。救済を得ることなくタンホイザーが息絶えることがクローズアップされたプロダクションの場合には、見終わった後に一抹の重苦しさを感じることがあるかもしれません。しかし、このオペラの最後は、奇跡が起こりタンホイザーの救済が認められたことで終わります。このプロダクションでは、救済がもたらす明日への希望、生きることの美しさが感じられるのではないでしょうか。
2017年
9月21日(木)3:00p.m.
9月25日(月)3:00p.m.
9月28日(木)3:00p.m.
会場:NHKホール
指揮:キリル・ペトレンコ
演出:ロメオ・カステルッチ
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ
S=¥65,000 A=¥59,000 B=¥54,000 C=¥42,000 D=¥32,000 売切 E=¥25,000 売切 F=¥17,000 売切
エコノミー券=¥15,000 売切 学生券=¥8,000
*学生券はNBS WEBチケットのみで8月18日(金)より受付。
※タンホイザー役のフォークトのメッセージ動画を、こちらからご覧いただけます。
※ヴェーヌス役のパンクラトヴァの
メッセージ動画を、
こちらからご覧いただけます。
2017年
9月23日(土・祝)3:00p.m.
9月24日(日)3:00p.m.
9月27日(水)6:00p.m.
9月29日(金)3:00p.m.
会場:東京文化会館
指揮:アッシャー・フィッシュ
演出:アウグスト・エヴァーディング
ザラストロ:マッティ・サルミネン
タミーノ:ダニエル・ベーレ
夜の女王:ブレンダ・ラエ
パミーナ:ハンナ=エリザベス・ミュラー
パパゲーノ:ミヒャエル・ナジ
S=¥56,000 A=¥49,000 B=¥42,000 C=¥35,000 D=¥26,000 売切 E=¥20,000 売切 F=¥16,000 売切
エコノミー券=¥15,000 売切 学生券=¥8,000
*学生券はNBS WEBチケットのみで8月18日(金)より受付。
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