英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 英国バレエの美点を凝縮した二作 「眠れる森の美女」「リーズの結婚」Photo: Bill Cooper

ベストな演目、ベストなキャストで、
ロイヤル・バレエ団の姉妹カンパニーの舞台を堪能したい!

Photo:Bill Cooper

「眠れる森の美女」より

 バーミンガム・ロイヤル・バレエ団は、英国にバレエを根づかせ、英国のバレエを育てたカンパニーである。
 同団がロンドンからバーミンガムへ拠点を移したのは1990年。それまでの30年余り、ロイヤル・バレエ団のツアーカンパニーとして、振付家とダンサーを育てる重要な役割を担っていた。英国バレエを代表するフレデリック・アシュトン、ケネス・マクミラン、ピーター・ライト、そしてデヴィッド・ビントリーは、4人ともこのバレエ団で振付家として名を成したし、ダンサーでは吉田都が同団でスターとして育ち、ロイヤル・バレエ団へ移籍している。
 今回の来日公演では、英国バレエの美点を凝縮した2作品が上演される。
 まず、ライト版『眠れる森の美女』は、演出・振付の洗練された味わいと、美術の重厚な輝きが楽しめる豪華なプロダクションである。
 ライトは、いくつかの楽曲を省略することで冗長な場面を削り、物語のテンポを良くした。その一方で、プティパが初演時に省略した間奏曲を用い、王子がオーロラ姫を目覚めさせた後に長めのアダージオを加えて、主役2人の心の交流を効果的に描いている。振付は、古典バレエの様式美を尊重しつつ、ところどころ現代的なアレンジをほどこしている。例えばプロローグでは、歌の精(通常のカナリア)と喜びの精(通常のリラの精)のヴァリエーションに技巧的な動きが加わっていて華やかだ。
 視覚的な美しさも素晴らしい。衣裳・装置は、褐色系を基調にゴールドとブラックをふんだんに用い、細かな刺繍、レース、ドレープをたっぷり使った絢爛たるデザイン。照明も、真横から光をあてて陰影をくっきりさせるオペレーションで、舞台がそのままレンブラントかフェルメールの絵画のような格調高いタブローとなっている。
 来日公演の主役は、デリア・マシューズとブランドン・ローレンスが注目の新星コンビ。マシューズは2017年にプリンシパルへ昇格したばかり。ローレンスは、まだソリストにもかかわらず、ビントリー監督にベスト・キャストとして抜擢された。初日を飾るのはアリーナ・コジョカルとマチアス・ディングマン。ディングマンは2015年に昇格したプリンシパルで、身体能力に優れたダンサーである。

 
Photo:Ray Smiljanic

「リーズの結婚」より

 一方、アシュトン版『リーズの結婚』は、シェイクスピアの国らしい演劇的な緻密さと、アシュトンらしい振付の繊細さが楽しめる陽気なプロダクションだ。
 アシュトンは、屈託のない笑いとユーモアを好んだ振付家で、『リーズの結婚』は『シンデレラ』と並ぶ彼の代表作。この作品には、幕開き直後の着ぐるみのダンスに始まり、長いリボンを使った主役のパ・ド・ドゥ、リーズの母親による木靴のダンスなど、楽しい仕掛けがたくさん組み込まれている。台詞のない芝居として入念に作られており、例えばリーズが家に閉じ込められてしまった後、恋人との将来を独り妄想する場面は傑作だ。
 踊りに関しては、クラシック・バレエらしい見どころに事欠かない。アシュトン独自の振付スタイルによって、一見お気楽なコメディーが、英国の誇るグランド・バレエに深化している。どの踊りも、細かく入り組んだステップやトルソの優美な反りとひねり、頭を傾ける装飾的なポーズなど、アシュトンらしさ満載である。
 来日公演の主役キャストは、平田桃子とマチアス・エイマンが初日を飾る。平田がどんな可憐なリーズを演じるのか楽しみだ。もう1組のセリーヌ・ギッテンスとタイロン・シングルトンは、前回の来日公演の『白鳥の湖』で磐石の演技を見せてくれた。2人のパートナーシップの良さは折り紙つきで、今回は『白鳥の湖』から一転、快活な恋人たちを演じてくれだろう。
 バーミンガム・ロイヤル・バレエ団は来日のたびにダンサーのレベルが上がり、観客の期待通り、バレエ団として成長する姿を見せてくれる。ベストな演目、ベストなキャストで、ロイヤル・バレエ団の姉妹カンパニーの舞台を堪能してほしい。

 

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団
2018年日本公演

「眠れる森の美女」全3幕プロローグ付

【公演日】

2018年
5月18日(金)18:30
5月19日(土)14:00
5月20日(日)14:00

【予定される主な配役】

オーロラ姫 :アリーナ・コジョカル(5/18, 5/20)、デリア・マシューズ(5/19)
王子 :マチアス・ディングマン(5/18, 5/20)、ブランドン・ローレンス(5/19)

「リーズの結婚」全2幕

【公演日】

2018年
5月25日(金)19:00
5月26日(土)14:00
5月27日(日)14:00

【予定される主な配役】

リーズ :平田桃子(5/25, 5/27)、セリーヌ・ギッテンス(5/26)
コーラス :マチアス・エイマン(5/25, 5/27)、タイロン・シングルトン(5/26)

会場:東京文化会館
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料[税込]】

[東京公演]
S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000 C=¥12,000 D=¥9,000 E=¥6,000
エコノミー券=¥4,000 学生券=¥3,000

*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで4/13(金)より発売。
★ペア割あり[S,A,B席]★親子ペア割あり(サタデー親子券対象日以外の公演)

サタデー親子券[S,A,B席]
WEB受付:1/29(月)21:00より、電話受付:1/30(火)10:00より

対象公演:
5月19日(土)「眠れる森の美女」、5月26日(土)「リーズの結婚」

S席:大人¥19,000+お子様¥5,000=¥24,000
A席:大人¥17,000+お子様¥4,000=¥21,000
B席:大人¥15,000+お子様¥3,000=¥18,000

*お子様は小学生〜高校生が対象。お子様2名までお申し込み可。

【その他の公演】

西 宮 5月11日(金)「眠れる森の美女」 兵庫県立芸術文化センター (問)0798-68-0255

大 津 5月13日(日)「眠れる森の美女」 びわ湖ホール (問)077-523-7136

名古屋 5月15日(火)「眠れる森の美女」 日本特殊陶業市民会館 (問)052-241-8118