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2018/07/07 2018:07:07:15:00:00

【第15回世界バレエフェスティバル】マチアス・エイマン 特別インタビュー

 シリーズでお贈りしている第15回世界バレエフェスティバル、出演ダンサーへの特別インタビュー。第3弾にはパリ・オペラ座より参加のマチアス・エイマンが登場! 先月の英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の日本公演では「リーズの結婚」のコーラス役で客演し、客席を熱狂させたエイマン。今回のフェスティバルへの抱負を熱く語ってくれました!


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オペラ座のエトワールとは、自分を見つめ、喜びを感じ、責任を担うこと


---- 初参加となった前回の世界バレエフェスティバル。どのような発見がありましたか。
 エキサイティングな経験でした。観客のエネルギーがダンサーに伝わり、誰もがベストを尽くそう、という意気込みを持っていることに圧倒されました。ベテラン・ダンサーと同じ舞台に立てたことも、新鮮でした。たとえば、ルグリやゲラン、ロパートキナ。彼らは素晴らしいダンサーです! どのようにコンディションを整え、舞台に立ち、オーラを放ち、観客の心に語りかけるのか。パリ・オペラ座バレエ団のダンサーは42歳で引退しなくてはなりませんから、日頃、接する機会のないダンサー達の円熟味を吸収できました。


---- エイマンさんもまた、パリ・オペラ座のエトワールとして、観客やダンサーから仰ぎ見られる存在です。あなたにとって、オペラ座のエトワールとは何を意味しますか。

 エトワールに昇進した当初は、自分がエトワールに相応しいことを証明するために、背伸びをしていました。でも経験を重ねるうちに視野が広がり、また別の考え方をするようになりました。すでにエトワール任命という関門をくぐり抜けているのだから、自分を見失ってはいけない、と。つまり、日々、謙虚に学ぶ姿勢を忘れずに、ダンサーやスタッフと共に舞台に作り上げることを楽しみ、なおかつ、年下のダンサーに模範を示す。オペラ座のエトワールとは、自分を見つめ、喜びを感じ、責任を担うこと、といえるでしょう。


---- 前回のフェスティバルでは怪我のために出演を見送った、ミリアム・ウルド=ブラームさんとの共演が実現します。
 ミリアムは、かけがえのないパートナーです。初めて一緒に踊った時から、意識して合わせようとしなくても、ぴたりと呼吸が合い、気持ちが通じ合ったんですよ。良きパートナーを得ることによって、ダンサーはさらに成長することができます。バレエフェスティバルで、私達のパートナーシップの成熟を見ていただければ嬉しいです。


---- ダンサーに怪我はつきものとはいえ、数年前、ご自身も脚の故障ため、舞台を離れざるを得ませんでした。
 脚の調子が悪いことに気づいていながら無理をして、悪化させてしまったんです。完治まで時間はかかりましたが、踊りに対する心構えを改め、自分の生き方を見直す契機になりました。リハビリのためだけでなく、怪我を防ぐためにも、自分の体を研究し、ボディ・コンディションを学び、脚の筋肉や腹筋、背筋を鍛えました。体に負担をかけない踊り方を身につけられたと思います。踊りの世界に閉じこもらず、人生をもっと楽しむことの大切さも痛感しました。


----バレエフェスティバルで披露されるバランシン振付『ダイヤモンド』とヌレエフ版『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥは、どちらもパリ・オペラ座の2017/18年シーズンのレパートリーです。今季は、他にどのような作品を踊りましたか。
 バランシンの『モーツァルティアーナ』、ロビンズの『ゴールドベルク変奏曲』、アシュトンの『リーズの結婚』など、様々なタイプの作品を踊りました。なかでも初めて踊ったモーリス・ベジャールの『ボレロ』は、衝撃的でした。クラシックなステップを踏みながら、ステージ全体が熱を帯びていく。自分の人間性が試されるようなスリルを味わいました。


----パリ・オペラ座では、二年前にオレリー・デュポンさんが芸術監督に就任しました。バレエ団の雰囲気に変化は生じたのでしょうか。
 ついこの間まで一緒に踊っていたオレリーが、突然、"ボス"になり、びっくりしました。彼女自身、予想していなかったのではないかな。といっても、劇場とダンサーを熟知くしている芸術監督ですから、私達は安心して仕事をすることがきます。バレエ団の雰囲気は良いですよ。頼もしい"姉貴分"と同僚のダンサー達と一緒に、世界バレエフェスティバルに参加するのが楽しみです。


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取材・文:上野房子(ダンス評論家)