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2018/09/06 2018:09:06:17:30:03

ローマ歌劇場2018年日本公演 開幕記者会見レポート

 9月9日の『椿姫』(東京文化会館)を皮切りに、全7回の引っ越し公演を行うローマ歌劇場。既に歌手と劇場スタッフは3日に来日し、二つの演目に分かれて入念な稽古を行っている。同時進行中の二演目のリハーサルの合間を縫って、劇場芸術監督、指揮者、主役歌手、演出家を囲む記者会見が9月5日に行われた。創設以来、伝統の継承を守りながら、未来へとつながる芸術を創造し続けてきたローマ歌劇場の現在を伝える貴重な会見となった。


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 アレッシオ・ウラッド(ローマ歌劇場 芸術監督)

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「合唱や衣装・芸術スタッフとともに来日し、最良の公演が出来るよう取り組んでいます。2014年の引っ越し公演は、私たちの劇場の歴史に残る感動的な公演でした。日本の観客の皆さんの拍手は世界のどの国より温かい。ヴェルディ『椿姫』とプッチーニ『マノン・レスコー』はイタリア・オペラを代表する二本の柱ともいえる名作です。私たちの劇場でこの二つのイタリアの作品を紹介できることを誇りに思います」


 ドナート・レンツェッティ(『マノン・レスコー』指揮)

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 「オハヨウゴザイマス(日本語で)。『マノン・レスコー』はプッチーニが最初に成功したオペラで、まだヴェルディの人気が圧倒的だった1893年に発表されました。オーケストレーションにはフランスの潮流やワーグナーの影響もみられ、イタリア・オペラの新しい時代を切り開いた作品といえます。老いた者が若い恋人を求め、若者の恋が勝つ。しかしそこには死が待っていた...というプッチーニの悲劇性が表現された、内面に強く訴える作品です」

 
キアラ・ムーティ(『マノン・レスコー』演出)

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 「イタリアの芸術において音楽は高い地位にあり、他の芸術をも巻き込む大きな力を持っています。プッチーニはマスネの『マノン』を見て非常に気に入り、このオペラを手掛けたわけですが、華やかで圧倒的なメヌエットに囲まれたフランスオペラと、イタリア的なエモーションに貫かれたプッチーニの世界は非常に異なっています。素晴らしい「女優」であるクリスティーネ・オポライスを迎えてこの作品を創造したことは大きな幸運でした。芸術に理解の深い日本の皆様の前で上演できることをとても嬉しく思っています」


クリスティーネ・オポライス(『マノン・レスコー』マノン役)

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「何から語ったらいいのか...とにかく舞台を観にいらしてください。愛、愛、そして情熱...それが描かれています! このオペラでは時代に関わらず、女性が犯してしまう間違いが描かれていて、それは富と愛を両方得たいという無理な願いです。マノンは非常に若く、人生の厳しさを知り始めたそのときに死を迎えてしまうのです」


 ソフィア・コッポラ演出の『椿姫』では今年三回目来日となるヤデル・ビニャミーニがピットに入る。ヴァレンティノ・ガラヴァーニによる豪華絢爛な衣装も見どころだ。


ヤデル・ビニャミーニ(『椿姫』指揮)

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「このプロダクションの初演の指揮を務めさせていただいたことはとても幸運でした。再び劇場に戻ってこられたことを嬉しく思います。大変フレッシュで新しい感覚のプロダクションです。若い歌手の方々も素晴らしく、合唱のクオリティも大変高い。日本の皆様に音楽的にも満足いただけるよう演奏いたします」


フランチェスカ・ドット(『椿姫』ヴィオレッタ役)

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 「イタリアの代表として、イタリアのオペラをイタリア語で上演できることを嬉しく思っています。空港に到着した瞬間から私を魅了してやまない日本で過ごす時間を、私の人生の記憶に刻みたいと思います。ヴィオレッタという役を通して私のメッセージが伝わるよう、皆様の前で演じたいです」


アントニオ・ポーリ(『椿姫』アルフレード役)

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「これまでに7回来日していますが、そのうち3-4回はアルフレードを演じています。アルブレードはデビューして2.3年の若いテノールに任されることの多い役ですが、声楽的な要素だけでなく、演劇的にも人間的な成長が求められる役だと考えています。面白いことに、私はローマ歌劇場でアルフレードを歌うまでこの役は未経験だったのですが、そこからあれよあれよという間に100回以上この役を歌うことになりました。成長とともに変化してきたアルフレードを日本の皆様の前で演じたいと思っています」


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 伝統、イタリア文化の継承...という言葉とともに「未来」「フレッシュ」「真実の愛」という言葉も飛び交った会見。圧倒的なイタリア・オペラのパワーの中に、繊細で純粋なイタリア精神が宿ったモダンな上演が準備されている。


取材・文:小田島久恵(音楽ライター)


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