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2018/09/19 2018:09:19:19:00:00

アリシア・アマトリアン(シュツットガルト・バレエ団) スペシャル・インタビュー

 ドイツの名門、シュツットガルト・バレエ団の日本公演まであと1か月半! 振付家ジョン・クランコの傑作『オネーギン』、『白鳥の湖』の上演を心待ちにしているバレエファンの方も多いのではないでしょうか? 

 そんな傑作を彩るのはバレエ団が誇る魅力的なダンサーたち。本日は『オネーギン』、『白鳥の湖』でいずれも初日のヒロインをつとめるアリシア・アマトリアンのスペシャル・インタビューをお贈りします。



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---- スペイン北部のサンセバスチャン出身のアマトリアンさんは、弱冠14歳の時にジョン・クランコ・バレエ学校に入学して以来、シュツットガルトでキャリアを歩んできました。

 「地元のサマースクールでジョン・クランコバレエ学校の教師のレッスンを受け、シュツットガルトで勉強するように勧められたことがきっかけです。家族の許を離れるのは辛かったけれど、今ではシュツットガルトは私のもう一つの故郷、バレエ団は家族のような存在になりました」


---- バレエ学校のカリキュラムは、どのような内容でしたか。

 「オーソドックスなバレエのトレーニングを受けました。でも在学中からバレエ団の公演でクランコ作品をそれこそ浴びるように見ますから、スクール出身者は自然とクランコ振付のスタイルを吸収しているんですよ」


---- クランコの聖地でクランコ作品を踊る......。それはダンサーにとって、どのような感覚なのでしょうか。

 「何物にも代えられない喜びと、身の引き締まるような緊張感を感じます。歴代のダンサーが踊るクランコ作品を見てきたシュツットガルトの観客は、世界でいちばん厳しい目を持っていますから。といっても、彼らはとてもオープンで、現役ダンサー達なりの演技を受け入れてくれます。いにしえの偉大なダンサーを模倣する必要はありません。私達は、臆することなくチャレンジできるんです」


---- 11月の日本公演で共演するフリーデマン・フォーゲルさんも、シュツットガルト生え抜きのダンサーです。

 「彼は一緒に勉強し、何度も共演してきたパートナーです。舞台の上で、互いの気持ちを感じ合えるので、同じ作品で同じ役柄を演じても、型通りの演技にはなりません。たとえば『オネーギン』のヒロイン、タチヤーナに扮した私が何気なく身じろぎをすると、オネーギンになりきったフリーデマンは、思いもよらない視線を返してくる。すると、私の心にいつもと違う感情が湧き上がり、二人の関係に微妙な変化が生じます。これが信頼できるパートナーと作り上げる、生の舞台の醍醐味ですね」


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---- もう一つの演目、『白鳥の湖』もクランコの振付・演出による全幕作品です。

 「尽きない魅力を持った作品です。なかでもクランコ版独自の悲痛な場面で締めくくられる第四幕は、踊るたびに心を揺さぶられます。このフィナーレに到達するために全幕が構成されたと思える程に、ドラマチック。二人が踊る別れのデュエットは、クランコ作品の真髄だと思います。オデットは王子との愛を貫けるかもしれない、という微かな望みを抱くけれど、次の瞬間、全てを失い、白鳥の姿に戻らなくてはならない。こんなに悲しい別れがあるでしょうか」


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---- 王子は湖畔でオデットに愛を誓いますが、舞踏会に現れた悪魔の娘オディールに求婚してしまいます。アマトリアンさんは、王子とオデットの愛をどう受け止めていますか。

 「オデットと王子は、湖畔で出会った途端、恋に落ちました。一目、見ただけでも、それが真実の愛だと二人には分かるのよ。私自身、一目惚れした男性と結婚したんですもの! 王子がオディールに求婚したのは、彼女がオデットだと信じていたから。彼にはオデットのために全てを捧げる決意があって、その結果、命を落としてしまう。つまり王子は、オディールにもてあそばれたのです」


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---- クランコ版『白鳥の湖』は主人公の心の動きを細やかに描き出す一方で、古典作品ならではのテクニックの見せ場もふんだんにあります。

 「オデットが湖畔で踊るソロからオディールが舞踏会で披露するグラン・フェッテまで、ほんとうに難しい技巧を踊りこなさなくてはなりません。白鳥の化身になりきるために、手脚の一つひとつの関節をしなやかに、軽やかに使いこなすことも不可欠です。でも、いちばん大切なのは、踊りを通して物語を語り、観客の心に訴えかけること。『白鳥の湖』は、バレリーナとしての自分が試される大作です。起伏に富んだドラマを演じ、技巧を凝らしたデュエットやソロを踊り終えて舞台の幕が下りた時、心身ともに空っぽになり、虚脱感を感じるほどです」


---- タマシュ・デートリッヒ新・芸術監督に率いられた初のシーズンが始まろうとしています。

 「タマシュは、バレエ団に新たなエネルギーを与えてくれるでしょう。ケネス・マクミランの『うたかたの恋』など、レパートリーに新たな作品が加わることも楽しみです。個人的には、マクミランの『マノン』を踊ることを夢見ていますが、実現するかどうかは、運に任せます。1999年に入団してから、思い描いていた以上に素晴らしいチャンスに恵まれてきたので、これまで通り、全力で踊り続けること。これが今の私の目標です」


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取材・文:上野房子(ダンス評論家)



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