2019/09/07 2019:09:07:13:31:43[NBS最新情報]
9月12日の『ファウスト』で幕をあける英国ロイヤル・オペラ日本公演。初日を前に、音楽監督をつとめるアントニオ・パッパーノをはじめ、『ファウスト』、『オテロ』の主要な歌手が集まり、都内某所で記者会見が行われました。その様子を加藤智子さん(フリーライター)のレポートでご紹介します。ぜひご一読ください。
間もなく初日を迎える英国ロイヤル・オペラの開幕記者会見が、9月6日、都内ホテルにて開催された。会見には英国ロイヤル・オペラ音楽監督で日本公演のタクトを振るアントニオ・パッパーノと主要歌手たちが登場。公演への抱負を語った。
冒頭、「これは我々の唯一の海外ツアー。日本に来ることができてとても光栄です」と挨拶したパッパーノ。今回の上演作品について、「グノーの『ファウスト』は2004年に初演されたデイヴィッド・マクヴィカーの演出。ロンドンで非常に高い評価を受けています。登場人物それぞれすべてが個性的で、音楽が大変な力を持つ、とても魅力的な舞台です。また『オテロ』は、ヴェルディがそれまでに培ったものの集大成ともいえる作品。シェイクスピアのメッセージをストレートに、ダイレクトに訴えている」と語った。このキース・ウォーナー演出の『オテロ』は、2017年の初演をパッパーノ自身が指揮をしているだけに、自信もたっぷりだ。
アントニオ・パッパーノ
才気あふれる主要歌手たちも、ずらりと勢揃いした。
『ファウスト』のファウスト役、 ヴィットリオ・グリゴーロは今回が日本での本格的オペラ・デビューとなる。「どんなにいい声を持っていたとしても、それをステージで活かすことができるのは、生身の人間が息遣いや動きに対応し、理解してくれる指揮者だけ。パッパーノさんはマジックを起こすことができる!」と断言。メフィストフェレス役のイルデブランド・ダルカンジェロは、4年前の日本公演で『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールを歌った。「同じ"悪い奴"でも、今回は悪魔! 趣が違います」とにやり。「この役は3回目。まだいろいろとリサーチをしながらですが、日々、マエストロ・パッパーノがいろいろと助けてくれています」。
ヴィットリオ・グリゴーロ
イルデブランド・ダルカンジェロ
いっぽうの『オテロ』の出演者たち。タイトルロールのグレゴリー・クンデは、今年だけでも5つの劇場でこの役を歌う"現在最高のオテロ歌い"。「オテロは夢のような役。テノールが目指すところの頂点にある役の一つでしょう」と笑顔。ヒロイン、デズデモナ役のフラチュヒ・バセンツは、日本初登場だ。「パッパーノさんとのフルのステージも今回が初。彼はただ指揮者、音楽家として素晴らしいだけでなく、画家であると思うのです。常に"色付け"をしてくれる特別なアーティストです」。敵役ヤーゴ役はジェラルド・フィンリー。"歌う役者"として定評のあるベテランだ。「ヤーゴは演じ手としてやりがいを感じる役。シェイクスピアはこの人物に、人間の持ついろんな側面を見せています。ヴェルディとボーイト(台本)の二人の天才が、音楽を通して、それを見事に描き出している」。
グレゴリー・クンデ
フラチュヒ・バセンツ
ジェラルド・フィンリー
音楽監督に就任して17年、「オペラを愛し、歌を愛し、言葉を愛し、劇場を愛する」ことこそが音楽監督にとって重要と熱く語るパッパーノ。「レパートリーの数を増やすのではなく、素晴らしいマスターピースにどれだけ近づけたか、ということこそが大事だと思うのです」とも。日本公演で演奏される2つの傑作も、自ずと期待が高まる。
取材・文:加藤智子(フリーライター)