2021/10/07 2021:10:07:16:33:29[NBS最新情報]
──東京バレエ団で活躍されたのち、2018年9月にモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)に入団し、4シーズン目に入りました。ローザンヌでの生活はいかがですか。
岸本秀雄 BBLはツアーの多いカンパニーで、これまでにフランスを中心にイタリア、ロシアにも行きました。ツアー前にはローザンヌで徹底的にリハーサルをして、ツアーから帰ってきたらすぐに次のツアーの準備に入る。最初はその展開の速さに驚きました。
レパートリーも増えました。特に印象的なのは、今回の日本公演で上演する『ブレルとバルバラ』。実は、BBLに入団した、その初日にリハーサルした作品なんです! この初日には、今回も1日だけ舞台で踊る予定の「黒いワシ」というパートを稽古したのを覚えています。心に染み入るようなシャンソンの調べと、音楽と絶妙に調和する踊り──思わず泣けてくる作品です。
『ブレルとバルバラ』より
──BBLのダンサーとしてベジャール作品に向き合うようになったいま、あらためて、どんなところにその魅力を感じますか。
岸本 ダンサーたちが実にエネルギッシュであること。皆、ベジャールのスタイルをしっかり身体に叩き込み、自分のものにしています。だからこそ、自信をもってエネルギッシュに踊ることができ、それが舞台の魅力につながっているのだと思います。
──2020年春からは新型コロナウイルスの影響でカンパニーの活動が制限されました。
岸本 今だからできることをやろうと考えました。たとえば、もっと集中してトレーニングに取り組み、より強靭な身体を手に入れたいと思いました。そうしなければ、BBLで求められている動きはできないと痛感していたのです。
僕はローザンヌでまだ何も勉強できていないし、もっとベジャールさんのバレエ、ジルさんのバレエを学び、理解したいという気持ちが強かったのです。
──コロナ禍の中、ジル・ロマン芸術監督が押し進めた〈プランB〉というスタジオ・パフォーマンスにも参加されました。
岸本 20世紀バレエ団時代にベジャールさんが創った『わが夢の都ウィーン』の復活上演に参加しました。天使役を踊りましたが、歴史的な傑作の上演に携わることができ、感慨深く思いました。東京バレエ団で、Choreographic Projectのスタジオ・パフォーマンスに参加していたことを懐かしく思い出したりも!
『バレエ・フォー・ライフ』より
──日本公演後半の日程で上演される『バレエ・フォー・ライフ』について、その魅力を教えてください。
岸本 若くして亡くなったクイーンのフレディ・マーキュリーと、伝説的ダンサー、ジョルジュ・ドンへのオマージュですから、儚さ、切なさが強く印象に残ります。いっぽうで、僕が出演している「シーサイド・ランデヴー」や「ミリオネア・ワルツ」などの明るい場面には心躍るような楽しさがある。さらに、ラストの『ショウ・マスト・ゴー・オン』は、舞台上で目をうるませるほどの感動がある。このような難しい、大変な時期だからこそ、心に響くものがあり、勇気をもらえるバレエではないかと思っています。
今回、2度の延期を経てようやく日本公演が実現することになったことをとても嬉しく思います。個人的には、BBLに入団してから初めての日本公演。とてもワクワクしています。ぜひ、僕らが舞台で発するエネルギーを受け取っていただき、感動を共有していただけたらと思っています。