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2023/09/26 2023:09:26:10:48:26

「ローマ歌劇場が上演した「トスカ」と「椿姫」に東京は大喝采」(イル・ソーレ・24オーレ紙)
ローマ歌劇場日本公演の公演評が9月24日、イタリアの有力経済紙「IL Sole 24 Ore(イル・ソーレ・24オーレ)」に掲載されました。ぜひご一読ください。



音楽ジャーナリスト カルラ・モレーニ

優れた劇場であることをアピールできるのが日本である。

招聘された劇場は忘れられない経験をすることが出来る。熱烈な歓迎を受け、熱心に舞台に見入る観客を前に劇場もまた最大の努力を惜しまない。そしてその結果素晴らしい公演が実現する。完璧なほどの音響と舞台への視界も欠点のない2300席の東京文化会館は天井に吊るされたような最上階席の最後列でさえも舞台が良く見える。今この劇場で公演しているのが、フランチェスコ・ジャンブローネ総裁が率いるローマ歌劇場だ。オーケストラ、合唱、テクニカルスタッフ、ソリスト、事務局スタッフなど総勢227名が「椿姫」と「トスカ」を上演している。半世紀の差で誕生したこの二作品はオペラの最高傑作とも言える。両作品とも観客の心に深い印象を与える。

全7回の公演は観客を強くひきつけ、公演ごとに補助席が設けられるほどである。
ローマ歌劇場が日本公演を実現するのはこれで5回目だが、特にこの10年の間に行われた3回の日本公演は大成功をおさめ、第6回目が期待されている。

日本の観客は鋭いアンテナでオペラ界の情報を良く握っている。観客は伝統的なイタリアオペラ公演を望んでいる。伝統を受け継ぎながらも斬新な演奏で感動を与えているのが音楽監督であり、この二演目を指揮しているミケーレ・マリオッティだ。44歳という若い指揮者がローマ歌劇場に新鮮な息吹を与えていると言っても過言ではないだろう。


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ローマ歌劇場2023念日本公演「椿姫」より photo : Kiyonori Hasegawa

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ローマ歌劇場2023年日本公演「トスカ」より photo : Kiyonori Hasegawa

観客の拍手は感動の表れそのものだ。公演後にサインを求める長い列もまた観客の心をつかんだ証と言えるだろう。観客の拍手はオーケストラや合唱指揮者チーロ・ヴィスコが鍛えた合唱団の演奏の素晴らしさにのみではない。マリオッティの解釈は我々にも驚きをもたらしたのだ。彼の解釈は明確で、しかも大げさなところはなく、物語を忠実に伝えようとして内面まで掘り下げられているということを強く感じた。事細かく、フレーズを作り、意思を表示し、音色を豊かにし、強弱も休符もすべてが生かされた演奏なのだ。オーケストラピットの中ですべてをコントロールし、スター歌手が勝手な歌い方で音楽を崩してしまうことが起こらないよう厳重に注意している。大スター歌手である椿姫のリセット・オロペサと成熟したアルフレードを演じたフランチェスコ・メーリ、トスカのソニヤ・ヨンチェヴァとカヴァラドッシのヴィットリオ・グリゴーロを牛耳るのは大変なことだ。マリオッティは歌手に自由さを与えながらもしっかりと手綱を握っていることを我々に分からせた。

「椿姫」では父と子の関係、コンプレックス、苦悩などの表現が卓越していた。また「二人の子供」という前の短い間の取り方に心情が強く表れていた。ビロードのようなアマルトゥブシン・エンクバートの美しい声に魅了されながらも、それを伴奏するオーケストラの音色に言葉以上の表現力を感じられた。東京ではこれらがすべて観客に伝わったのだと思う。
「椿姫」はソフィア・コッポラの演出とヴァレンティノの衣裳も観客の目を惹きつけ、「トスカ」は2008年に制作されたゼッフィレッリの豪奢な舞台に改めて感動させられた。

ローマ歌劇場はその大成功に満足して帰国することだろう。

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ローマ歌劇場2023年日本公演「椿姫」カーテンコールより

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ローマ歌劇場2023年日本公演「トスカ」カーテンコールより

翻訳:田口道子