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2025/08/29 2025:08:29:18:00:00

【特別インタビュー】NBSスタッフが語る、バレエ公演のコンセプト
先日第35回〈バレエの祭典〉のラインナップを発表し、「もうバレエフェスの話をする時期か...」などのお声が弊財団にも寄せられております。来年5月からの東京文化会館の長期休館に伴い、3年間は様々な工夫をこらして公演を続けてまいりますが、ここで改めてバレエ公演の企画~実現までの流れをご紹介します。
NBSに勤続20年、現在は企画制作部の中心となって活躍しているスタッフが今回のラインナップのコンセプトを語りました。ぜひご一読ください。

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第17回〈世界バレエフェスティバル〉(2024年)の舞台裏より

精鋭ぞろいが期待される〈Zenith of Ballet~至高の舞~〉


――企画制作というのはどういうお仕事なのでしょうか?

NBSが主催する年間の公演企画の詳細決定、実施をするのが企画・制作部です。例えば招聘カンパニーと招聘時期、上演演目、キャスティングなどをすり合せ、実現に繋げていきます(東京バレエ団の制作も同時に行っています)。実際にカンパニーやアーティストが来日する際には、例えばフライト・宿泊の手配や調整、劇場でのスケジュール、テクニカルとの調整、セットや衣装の輸送手配など様々な業務を行っています。
*NBSでは招聘バレエ公演、オペラ・音楽公演、東京バレエ団の公演制作を全て同じスタッフが兼務しています。

――第35回〈バレエの祭典〉のラインナップに3つのガラ公演がありますが、それぞれどのような形で関わっていらっしゃいますか?

すべてガラ公演ですが、それぞれ企画のスタイルが異なります。2026年1月に開催する〈Zenith of Ballet~至高の舞~〉に関しては、アーティストからの希望を元にガラ公演という形をつくりあげていっています。例えば、ジル・ロマンさんからは『椅子』(モーリス・ベジャール振付)をディアナ・ヴィシニョーワさんと踊りたい、という話をお聞きしたことで、今回実現の運びとなりました。前々回(2021年)〈世界バレエ・フェスティバル〉でジルさんはアレッサンドラ・フェリと『椅子』を踊っていますが、発声の必要がある芝居のような作品なので、演劇のコーチをつけるなど、数週間におよぶリハーサルをされたそうです。ディアナは今回初めて取り組みますので、日本にも通常より早めに来日し、二人でリハーサルをする予定になっています。

――他にはどんな演目やダンサーが見られる予定ですか?

いま最終調整中ですが、ベジャールの『椅子』のような、いわゆる"ガラ公演"ではなかなか上演されないような骨太な作品から華やかな作品まで、幅広いレパートリーを見ていただければと思います。自身の芸術性できちんと魅せてくれるダンサーにお声がけをしています。

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ベジャール振付『椅子』より photo: Kiyonori Hasegawa

今の"オペラ座らしさ"が伝わる人選・演目に

――続いて2026年8月には、パリ・オペラ座バレエ団で教師を務めるジル・イゾアールによるガラ公演〈エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス〉(仮題)が開催されますね。

1990年代のパリ・オペラ座バレエ団をご存じの方はダンサーとして名前を覚えていらっしゃると思いますが、今はパリ・オペラ座とコンセルヴァトワールで教師として活躍をしています。レッスンのDVDなどでご存じの方も多いと思いますが、オペラ座ではポール・マルクらエトワールを含めた、数々のダンサーのコーチをされています。この公演については、イゾアールさんと一緒に出演するダンサーや演目を決めるという、二人三脚のような形で公演準備を進めています。

――イゾアールさんはこれまで、このような形のガラ公演を主催された経験をお持ちなのでしょうか?

彼はヨーロッパで〈ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス〉というガラ公演を定期的に開催しています。それはオペラ座だけでなく、ほかのバレエ団からもダンサーを招いたものなのですが、今回私たちが開催する〈エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス〉(仮題)はパリ・オペラ座バレエ団のダンサーを中心に構成する予定です。

――どのようなダンサーが出演する予定ですか?

もちろんイゾアールさんが素晴らしいと認めたダンサーになりますので、彼が指導しているダンサーたちを中心に調整を行っているところです。実は、ちょうど新シーズンが始まる直前で、ダンサーにとってはあまりうれしくない時期のようで... 劇場を確保できる時期も、なかなかこちらの思う通りにいくわけではなく、難しいところです。
でも今回、日本ではまだよく知られていないオペラ座ダンサーをご紹介する機会になればとも願っています。イゾアールさんはコーチだからこそ、内側から見た今の"オペラ座らしさ"をよくご存じなので、それが伝わる人選・演目になればと思います。

――私たちがまだ知らないライジング・スターの出演もあるかもしれませんね?

そうなることを期待しています。演目に関しても、パ・ド・ドゥが並ぶだけではなく、なにかアイディアをと考えているところです。
イゾアールさんとの企画は初めてになりますが、彼は芸術に対して本当に真摯に向き合っている、パッションに溢れたアーティストです。コーチが不在のガラ公演も多いのですが、特に若手がいる公演では、こういった素晴らしい指導者にプッシュされることで、舞台のレベルがぐっとあがるものです(もちろん来日前の準備も、自習ではなく、責任をもって指導してくれますので)。ルグリさんのガラでもそうでしたが、公演期間中に成長を感じられる舞台を見せてくれることもあるので、ご期待いただければと思います。

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ジル・イゾアール photo: James Bort

40歳以上のダンサーが活躍する新しいプロジェクト

――少し先ではありますが、2027年2月にはシュツットガルト・バレエ団の往年のスター、マライン・ラドメーカーによる新プロジェクト〈WHEN, IF NOT NOW〉の企画が上演されます。これはどのような企画になるのでしょうか?

これに関しては、彼らが作り上げた企画を日本で上演するスタイルになります。一年ほど前にマラインから連絡があり、彼がスラヴァ・トゥトキン(ドルトムント・バレエ団のバレエ・マネージャー)と一緒に〈WHEN, IF NOT NOW〉というプロジェクトを立ち上げることを知りました。〈WHEN, IF NOT NOW〉とは日本語で「今でなければいつ?」の意味。マライン自身もキャリアの後年怪我に苦しんだ経験がありますが、40歳以上のダンサーが活躍できる場を設けたいという気持ちを込めて作ったプロジェクトだそうです。

――ガラ公演を上演することを主とするプロジェクトですか?

プロジェクトベースのカンパニーになると聞いています。最初のプロジェクトは来年(2026年)8月にウィーンで初演が予定されていますが、ただ舞台を上演するだけでなく、ある程度キャリアを重ねたダンサーがどう生きていくか? を考える場にもなるようです。ダンサーのキャリアチェンジをサポートすることも考えているそうです。

――実際の日本公演はどのようなものなるのでしょうか?

今の予定では、ノイマイヤーら、3名の振付家による作品を制作すると聞いています。成熟した魅力を持つダンサーたちが、テクニック面だけではない形でどのように芸術性を伝えるか、ぜひご注目ください。

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スラヴァ・トゥトキン(左)、マライン・ラドメーカー(右)

――東京文化会館が2026年5月から3年にわたり、工事によって休館します。それに対する想いをお聞かせください。

3年の間、先々の予定が今までのように立てられない、というのが難しいところです。特に、海外のバレエ団による引っ越し公演は、物理的な制限と前もっての計画ができないというところで、これまでのようには実現できないでしょう。まだまだ見えないところが多いのですが、何ができるか、カンパニーとも話しながら試行錯誤を続けています。


以上、企画制作部スタッフの言葉をご紹介いたしました。これからもNBSでは質の高い舞台芸術を上演し続けられるよう、スタッフ一丸となって舞台に取り組んでまいります。日本の舞台芸術の灯を絶やさないために、おひとりでも多くの方に、引き続きご支援いただければ幸いです。

>>> 第35回〈バレエの祭典〉ラインナップの詳細はコチラ

取材・文=富永明子(編集・ライター)