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  オペラ「マルタ」    
 
解説

「マルタ」−ファンタスティックな“身分違いの恋”

「ローマの休日」も顔負け?“身分違いの恋”が生むファンタスティックなおとぎ話

 身分制社会の長かったヨーロッパで生まれたこともあり、“身分違いの恋”というテーマはオペラやオペレッタの定番だ。悲劇に転べば「椿姫」、喜劇に転べば「奥様女中」と、苦味の残りかねないこのテーマを微笑みに変えてしまったのが、フロトーの名作「マルタ」。退屈しのぎに変装して町へ出た高貴な女性の冒険譚が恋へとつながる展開は、まるで映画「ローマの休日」のよう?けれどちゃんとハッピーエンドになるところが、「マルタ」の落としどころだ。しかも農夫と思い込んでいた相手は伯爵のご落胤だった、というオチがつく。「はらはら」はあっても決して深刻にならない「マルタ」は、安心して楽しめるオペラの代表格といえるだろう。

「夏の名残のバラ」(=「庭の千草」)の意味するもの

 有名オペラには、必ずといっていいほど“顔”と呼びたくなるテーマソングがある。「マルタ」のテーマソングといえば、日本では「庭の千草」の名前で知られているアリア「夏の名残のバラ」。ちょっぴり感傷的ですぐ口ずさめる旋律は、一度聴いたら忘れられないが、この旋律、実は主人公の恋人たち、ハリエットとライオネルの“恋”を象徴してもいる。2人の“恋”に関する重要な部分で、必ずこの旋律が流れるのだ。このようなやり方は、フロトーと同年輩のワーグナーが開拓した“ライトモティフ”にちょっと似ているが、軽やかさと戯れにあふれた「マルタ」の世界は、あのワーグナーの重々しい世界と何と隔たっていることだろう。ここには生き生きとした茶目っ気と、朝露のようなキュートさがある。

作曲巧者、フロトー

 「マルタ」でのフロトーの筆は、本当に冴えている。ヒロイン、ハリエットが披露するイタリア風のコロラトゥーラ、<糸つむぎの四重唱>をはじめとするアンサンブルの、変化に富んだ曲想、<一言訊ねたいがね>(<ポーター・ビールの歌>)に典型的な、ジングシュピールから受け継いだ素朴な合唱。多彩な様式を網羅しながら、どれも決して過剰にならず、程よく心地よく流れていく。そしてその間に、<夏の名残のバラ>」や<ああ、かくも汚れな>(<夢のように>)といった、胸キュンの名旋律が差し込まれるのだ。彼の最大の成功作となり、生前に500回以上上演されたのもうなずける。  今回のフォルクスオーパーのプロダクションは、劇場にとっても自信作とか。来日オペラではまず観られない演目だけに、この機会にぜひ体験しておきたい。
 
加藤浩子(音楽評論家)

 
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