東京バレエ団「オネーギン」
感動こみ上げる奇跡のドラマティック・バレエ、日本のバレエ団、初上演!

Cast

2010年
5月14日(金) 7:00p.m.
タチヤーナ:吉岡美佳 オネーギン:高岸直樹 オリガ:小出領子 レンスキー:長瀬直義 グレーミン:柄本武尊
5月15日(土) 6:00p.m.
タチヤーナ:斎藤友佳理 オネーギン:木村和夫 オリガ:高村順子 レンスキー:井上良太 グレーミン:平野玲
5月16日(日) 3:00p.m.
タチヤーナ:田中結子 オネーギン:後藤晴雄 オリガ:佐伯知香 レンスキー:長瀬直義 グレーミン:森川茉央

タチヤーナ 吉岡美佳(5/14) 斎藤友佳理(5/15) 田中結子(5/16)

オネーギン 高岸直樹(5/14) 木村和夫(5/15) 後藤晴雄(5/16)

オリガ 小出領子(5/14) 高村順子(5/15) 佐伯知香(5/16)

レンスキー 長瀬直義(5/14、5/16) 井上良太(5/15)

グレーミン 柄本武尊(5/14) 平野玲(5/15) 森川茉央(5/16)

指揮 : ジェームズ・タグル 演奏 : 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2009年12月、「オネーギン」トライアウト実施! 夢のバレエに挑戦!
昨年12月、シュツットガルト・バレエ団の芸術監督リード・アンダーソンが来日。「オネーギン」へのトライアウトとして、作品のリハーサルが2日間に渡って実施されました。「東京バレエ団の欧州公演もあり、その十分な実力はすでに知っていた。今回、ダンサーたちの集中力には感嘆させられた」とアンダーソン氏。幾通りもの候補のなかから、役柄への適性や組み合わせのバランスを重視した3通りのメイン・キャストが決定しました。

リード・アンダーソン インタビュー(シュツットガルト・バレエ団芸術監督/「オネーギン」振付指導)

——今回はじめて東京バレエ団のダンサーたちと仕事をなさって、印象に残ったことを教えてください。
まず稽古場にいたダンサーたち全員が、目のまえのできごとに集中してのぞんでいたことに好感を覚えました。誰もがこのバレエに心から関わりたいと思い、誰もが配役されたいと願っている。そうした環境に置かれると、私もできるかぎりのものを与えたいと自然と思ってしまいます。また彼らは作品に献身的に尽くし、他者と協調して仕事をするための、規律正しさを身につけていて、すばらしくプロフェッショナル。振り覚えも早い。ただ私が何よりも驚いたのは、かなり早い段階で作品の音楽性を会得するダンサーが多かったということ。振りうつし作業というのはどうしても、最初はカウントで進めていくことになります。けれどいったん振りを覚えてしまったら、カウントはむしろ不要。音楽を吸いこむように踊っていかなければなりません。東京バレエ団ではまだ2日間しか作品を教えていませんが、既にこのように音楽と親しんで踊れているダンサーが多いことに驚きました。私は25年間『オネーギン』を教えていますが、これは初めてのことです。

——初日には朝10時から基礎稽古をご覧になり、オネーギン、タチヤーナ、レンスキー、オリガ、グレーミンの候補者たちをその場で数人ずつ選ばれました。そして午後からは選ばれた彼らを対象に、実際に振付を教え、トライアウトを進められていきました。
候補となるダンサーたちは直感で選びました。ダンサーたちに対しての予備知識はほぼありません。バレエ団の関係者から事前に手渡されていた、プリンシパルとソリスト名簿を見て、その階級の枠組を尊重しつつ、稽古場で候補者を選んでいきました。ただしレンスキーとオリガに関しては、コール・ド・バレエからも幾人か候補者を選びました。有望な若手にチャンスを与えることは、いつでも大事ですからね。そして午後からは彼らを対象に、審査をするのではなく、文字通りトライアウト=試みをしていきました。誰がどのように動くのか、誰と誰のパートナーシップの相性がいいのか、誰と誰が姉妹として不自然でないか、いろいろ試して作品にベストな踊り手を探っていきました。

——「オネーギンは現実と仮想の二重世界を生きている」「タチヤーナには今しか見えていない。オネーギンの内面に恋をしているわけではない」。トライアウトで振付を教えている段階ですでに、演技面の指導もかなりなさってましたね。
クランコ作品のような本当に出来のいい物語バレエを上演する際には、いうなれば『テクニックと演技を離婚させることはできない』。なぜならここではステップのうえに演技を上乗せするのではなく、ステップそのものから演技が生まれてくるから。つまりクランコ作品では、どんな小さなステップにもきちんと意味が含まれているのです。そしてその細部のすべてをダンサーたちが十全に理解していなければ、最終場で観客をノックアウトすることは絶対にできない。だから私はできる限り早い段階から、演技とステップを同時に教えていくようにしているのです。演技について考え始めるのは、早ければ早いほどいい。

——最後にキャストについて教えてください。今回、この3組の配役を選ばれた決め手は。
もちろん個々にすばらしいダンサーたちでもありますが、いちばんの決め手となったのは5人の相性が良いように思えたこと。それはヴィジュアル的にも、身体的にも、感情的にも、同じトーンの色を生みだせる5人に思えました。クランコのバレエでは、本当に小さなディテールから大きな情報が紡ぎ出されていく。だから野球のバッテリーのように、ダンサーたちの相性がぴったりと良いことがなによりも大切なんです。私自身、再び本番前に東京に戻ってきて、彼らと稽古をすることが心から楽しみです。たった2日でこれだけのことを成し遂げてしまった彼らなのだから、私が戻ってくるまでには、そうとうな水準に達してくれていることでしょう!
取材・文/岩城京子(演劇・舞踊ライター)