〈東京バレエ団2010年欧州ツアー帰朝報告公演〉
めくるめくパワー炸裂する「ボレロ」、ついに日本初上陸!
ニコラ・ル・リッシュの「ボレロ」
ジョルジュ・ドン以来の衝撃!
東京バレエ団〈ベジャール・ガラ〉
パリを沸かせた、ニコラ・ル・リッシュの「ボレロ」!
「シルヴィの踊る『ボレロ』を観て、いずれは僕も、と思っていたけど、まさかそれが実現するなんて考えもしなかったよ」 舞姫シルヴィ・ギエムとのパートナーシップはもはや鉄壁のニコラ・ル・リッシュ。2006年、彼が「憧れの」(ニコラ談)モーリス・ベジャール振付の『ボレロ』を踊ったオペラ・バスティーユは、観客席が2度、大きくどよめいた。その1回は、ニコラが16分間、メロディーを踊りぬいた瞬間。それこそ一斉にスタンディングオベイションが行われたし、その後、舞台袖に戻った彼が、足をいためていたベジャール本人の腕を肩に抱えて、観客への挨拶に誘った時のもう1回。自分の脚を指して「こんな格好でごめんね」とでも言うように笑うベジャールさんの表情からは、自分の代表作を踊り切ったニコラのパフォーマンスに満足している様子が見てとれて、最後の思い出として今も心にのこっている。 そのニコラの『ボレロ』、何と言っても恵まれた四肢を十分に生かしたのびやかさに触れないわけにはいかないだろう。暗闇の中、ピンスポットが指先に当たった時から、その長い指、腕がまるで魔法使の杖のように我々をボレロ・ワールドに誘い込み、腕と脚、そして全身がゆったりとリズムを刻む。男性・女性の差があるのに、遠目で見ると、どこかシルヴィ・ギエムの『ボレロ』にも似ているような気がするのは、いい意味での彼らの影響の及ぼし合いの結果か。それでいて、クライマックスに向かうにつれて、ニコラがこれまでに見せたことのないようなマスキュリン(男らしさ)を披露する。ニコラというダンサーにとっても、『ボレロ』という作品にとっても、新発見の連続だ。 (佐藤友紀 フリーライター)