新芸術監督デートリッヒのもと、
生まれ変わる名門バレエ団!
photo: Roman Novitzky
photo: Stuttgart Ballet
Photo: Roman Novitzky

芸術監督

タマシュ・デートリッヒ

Tammas Detrich

ドラマティック・バレエの名作の数々でバレエ界に確固たる地位を築いているドイツの名門、シュツットガルト・バレエ団が3年ぶりの来日を果たします。天才振付家ジョン・クランコを中心に創設されたシュツットガルト・バレエ団は、彼亡きのち、そのミューズだったマリシア・ハイデやリード・アンダーソンら歴代の芸術監督によって伝統が守られてきました。

そして今年9月、芸術監督の座が、ハイデの薫陶を受け、自身もカンパニーを代表するスターとして活躍したタマシュ・デートリッヒに受け継がれます。シュツットガルト・バレエ団新時代の幕開け、その日本でのお披露目ともなる公演では、「オネーギン」と「白鳥の湖」というクランコの代表作2作が、豪華ゲストを加えて上演されます。清新な血が注がれながらも、時代を越えて輝く名作を、演技達者なシュツットガルトのダンサーたちと、きらめくスターたちの共演でお楽しみください。

ドラマティック・バレエの伝統を生み出した、
20世紀屈指の天才振付家
Photo: Hannes Kilian

振付家

ジョン・クランコ

John Cranko

1961年、英国ロイヤル・バレエ団の若き振付家だったジョン・クランコは、シュツットガルト・バレエ団の芸術監督として招かれました。英国で機智に富んだ多彩な作品が人気を博し、レビューも手掛けて大きな成功を収めていた気鋭振付家クランコは、オーディションによって広く優秀なダンサーを集め、彼らのために新作を精力的に創造しました。「ロミオとジュリエット」で若い恋人たちの物語を生き生きと描く一方、「白鳥の湖」では古典に新しい解釈を加えて発表。そしてプーシキンの文学をもとにした傑作「オネーギン」を生み出したあと、今度はシェイクスピアの喜劇「じゃじゃ馬馴らし」を大胆なイマジネーションと雄弁な語彙で創作。登場人物の性格や心理、彼らの会話までをも生き生きと表現するクランコの舞台は、大きな共感と感動をもたらしました。

1969年、シュツットガルト・バレエ団は当時ダンスの中心地と認められていたニューヨークで、初のツアーを3週間にわたって行い、その歴史的な成功は“シュツットガルトの奇跡”と称えられました。

また、つねに自由で創造的な気風に満ちていたシュツットガルトでは、若手振付家の育成の場も設けられ、ジョン・ノイマイヤー、イリ・キリアン、ウィリアム・フォーサイスと、次世代の大物振付家たちが育っていきました。クランコの薫陶を受けた彼らは、やがて20世紀のバレエの新たな潮流を生み出していくことになるのです。

1973年、2度目のニューヨーク公演から帰還の途中、クランコは45歳という若さで亡くなり、その早過ぎる死は世界中に大きな衝撃を与えました。しかし残された者たちの結束は固く、クランコが築いた伝統は信念をもって受け継がれることになったのです。

物語をあざやかに舞台に出現させる、
ヨーロッパ屈指の舞台美術家
Photo: Gunned Kilian

装置・衣裳

ユルゲン・ローゼ

Jürgen Rose

1961年にジョン・クランコと出会って「ロミオとジュリエット」を手掛けて以来、クランコ作品の装置・衣裳を多く担当。「オネーギン」ではロシアの四季を感じさせる美しい風景を、「白鳥の湖」では豪華な宮廷や、湖畔が嵐に巻き込まれるドラマティックな仕掛けなどを舞台に現出させるなど、創意に富んだ美術で作品世界に寄与しました。のちに振付家ジョン・ノイマイヤーのバレエをはじめ、ヨーロッパ屈指のオペラハウスでオペラ、バレエを問わず舞台を手掛けて称賛を浴びています。