「ボレロ」

音楽:モーリス・ラヴェル
振付:モーリス・ベジャール

装飾的な要素をいっさい排除し、赤い円卓の上の“メロディー”と周囲をとりかこむ“リズム”とがラヴェルの音 楽を大胆に 象徴するこの作品は、その簡潔さゆえに、踊り手によって作品自体が形を変える。あるときは美の女神とその媚態に惑わされる男たちの繰り広げる“欲望の物語”、あるときは異教の神の司る“儀式”......。聖 と俗の間を自在に往き来し、踊り手の本質をさらけだすこの作品は、初演以来半世紀の間に、多様な姿を見せてきた。

演出もさまざまであり、初演の際は、“メロディー”の女性を取り巻いて“リズム”の男性たちが配された。やがて男性の“メロディー”と女性の“リズム”、そして“メロディー”“リズム”ともに男性が踊る演出が生まれている。

「このあまりにもよく知られた曲が、いつも新鮮に聞こえるのは、その単純さゆえである。スペインというよりむしろ東洋にその源をもつメロディーは、メロディーそのものの上にさらに渦を巻いてゆく。しなやかで女性的、かつ情熱的なものを象徴する。このメロディーは、必然的に単調なものとなっている。男性的なリズムは、つねに一定のものを保ちつつ、その量と勢いを増すことによって、音の空間をむさぼり、ついにはメロディーをも呑み込んでしまうのである。」

モーリス・ベジャール

上野 水香

Photo: Shoko Matsuhashi

柄本 弾

Photo: Kiyonori Hasegawa

「ギリシャの踊り」

音楽:ミキス・テオドラキス
振付:モーリス・ベジャール

地中海に面した港町、マルセイユに生まれたモーリス・ベジャールは、古代より幾多の文明を育んできたこの母 なる海に魅せられ、自らを“地中海人”と捉えると同時に、自作の中でもたびたびテーマとして取り上げている。そのベジャールが地中海への憧憬ともいえる思いをストレートに託したのが、1982年にフランスのアルル闘技場で 初演した「タラサ、われらの海(ギリシャの踊り)」である。

万物を生み出した生命の源としての海の、ふくよかな存在を表わすような女性たちの群舞。その上に広がる青い空ときらめく陽光、吹き渡る風を感じさせる、躍動的な裸体の若者たちの踊り。つぎつぎに繰り広げられるダンスは、古代からそこに営まれてきた人間の生そのものをも高らかに謳う。

「テオドラキスがこの曲をもってきてくれたとき、私はちょうど、「タラサ」と名づけた地中海もののシリーズに取り組んでいた。すっかり感激して曲を受け取った私は、これを最後の部分に使うことに決めた。
つづいて踊りの数を九個から七つに減らし、振付の方も、数学的な厳しさで(いくつかの踊りは、バッハのフーガのように構成されている)検討し直した。その結果、このバレエ作品は、――ギリシャ人のいうところによると——ギリシャ色が濃くなったのである。民族音楽からの借用を最小限にとどめ、簡素な衣裳もダンサーたちがスタジオで着用するようなもので、実際のギリシャのどこにも存在していないものを使ったのが、却ってこういう効果をもたらすことになったのであろう」

モーリス・ベジャール

Photo: Kiyonori Hasegawa

「舞楽」(1988年初演版)

音楽:黛敏郎
振付:モーリス・ベジャール

1988年11月に行われたモーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団の合同特別公演〈パリー東京〉で初演されたものを基に、1989年に東京バレエ団のために再振付されたオリジナル作品。音楽は黛敏郎がバランシンに委嘱された創った1963年の同題の曲を使用している。今回は1988年の初演版を上演。

「官能的で魔術めいた儀式――それは近代になってから生まれた運動、すなわち舞踊が何千年もの伝統と結合することである。 男、女、舞踊、現代――ある日本青年が時を超え、再度探索の旅に出て、永遠の結合の力強さを再発見する」

モーリス・ベジャール

Photo: Kiyonori Hasegawa

「ロミオとジュリエット」(パ・ド・ドゥ)

音楽:エクトル・ベルリオーズ
振付:モーリス・ベジャール

シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を劇中劇の手法で展開するベジャールの代表作のひとつ。何もない舞台の上で、ダンサーたちが練習をはじめる。喧嘩が始まり、バレエの指揮者がそれを鎮める。そして彼らに愛と憎しみという題で『ロミオとジュリエット』を聞かせ、それが劇中劇の形で展開される。エピローグでは何もない舞台の上に、ダンサーたちが練習のために入ってくる。そして声。「若者よ、恋をしよう。そして、争いはやめよう」。今回上演するのは全編の中から、ロミオとジュリエットによる“パ・ド・ドゥ”である。


「パキータ」

音楽:レオン・ミンクス
振付:マリウス・プティパ

1846年、パリで誕生したバレエ『パキータ』は、ジョセフ・マジリエの振付、カルロッタ・グリジとリュシアン・プティパ(マリウス・プティパの兄)が主演したことで知られるが、マリウス・プティパによる『パキータ』 は翌1847年9月、彼のサンクトペテルブルク・デビュー作として初演された。舞台はスペイン、フランス将校リュシアンはジプシーの少女パキータに出会い、惹かれ合う。嫉妬による陰謀で毒酒を盛られたリュシアンがパキータの機転で救われると、リュシアンはパキータに求婚。実は彼女は貴族の娘であったことが判明し、二人はめでたく結ばれる。ソリスト、群舞の見せ場がふんだんに散りばめられた終幕の結婚式の場面は、しばしば抜粋で上演される人気演目として定着している。

Photo: Kiyonori Hasegawa

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