パリ・オペラ座の名刺代わりのヌレエフ版

 マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ振付による古典バレエの最高峰「白鳥の湖」。ヨーロッパに伝わる白鳥伝説をもとにしたこのバレエには数々の解釈・演出がありますが、今回パリ・オペラ座バレエ団が披露するのは、自身も天才ダンサーであり、晩年に芸術監督としてパリ・オペラ座の黄金期を築いた巨星ルドルフ・ヌレエフによる演出、実に18年ぶりの日本での上演です。

 ヌレエフは白鳥に姿を変えられた姫の悲劇という女性主軸の古典バレエの主題を、王族の責務と夢想のあいだで苦しむ王子の心理に着眼することでより重層的な物語へと昇華させました。王子は夢の中で理想の女性=オデットと出会うも、身近に潜む悪魔(家庭教師ヴォルフガング)に魅入られ、破滅へと向かっていきます...。エツィオ・フリジェリオによる内省的な王子の心を見事に表した舞台装置に彩られた本プロダクションは、初演から40年経った今日も常に新鮮さをもって、理想と現実の乖離という人間の普遍的なテーマを思い起こさせるのです。

 おなじみの1人の女性ダンサーによる白鳥オデットと黒鳥オディールの踊り分けはもちろん、ヌレエフ版ならではの王子の見せ場や、躍動するロットバルト、格式高いバレエの殿堂の絢爛たる白鳥たちの群舞など、舞踊としての見どころも満載。パリ・オペラ座バレエ団に今も息づくヌレエフの薫陶を、古典バレエの金字塔を通じてご堪能ください。

ルドルフ・ヌレエフ Rudolf Noureev (1938〜1993)

旧ソ連邦出身。キーロフ・バレエ(現在のマリインスキー・バレエ)出身の天才ダンサー。1961年、パリ公演直後に衝撃的な西側への亡命を果たし、英国ロイヤル・バレエ団の舞台に華々しくデビュー。1983年からはパリ・オペラ座バレエ団芸術監督に就任し、数々の古典バレエを舞台化、多くの優秀なダンサーを見出して多大な功績を残した。

photo : Allan Warren

 ジークフリート王子の誕生日を祝う宴の場、女王は翌日に催す舞踏会で花嫁を選び結婚するよう王子に命じる。王子は物思いに沈み、現実逃れのために夢に憩いを求める。そんな王子の前にロットバルトの邪悪な呪いにより白鳥に姿を変えられた娘オデットが現れる。すっかりとりこになり、呪いを解くには男性が彼女に永遠の愛を誓うしかないと知った王子はオデットを助ける約束をするのだが、花嫁選びの舞踏会に現れた白鳥に瓜ふたつのロットバルトの娘、オディールに心を奪われてしまい結婚を申し込んでしまう。自分の過ちに気づき深い絶望に苛まれる王子は湖の幻影で嘆くオデットに許しを求めるのだが...。

photos: Julien Benhamou, Yonathan Kellerman / OnP

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(月-金 10:00~16:00 土日祝・休)

03-3791-8888

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  • 2024/06 会場:神奈川県民ホール、NHKホール
東京バレエ団  子どものためのバレエ 「ねむれる森の美女」
  • 2024/8 会場:めぐろパーシモンホール 大ホール