ジュゼッペ・ヴェルディ作曲『運命の力』(全4幕)
【上演時間3時間50分(休憩1回含む)】
指揮:ズービン・メータ 演出:ニコラ・ジョエル 美術:エツィオ・フリジェリオ 衣裳:フランカ・スカルチャピーノ
作品解説
運命に翻弄される兄と妹とその恋人の3人が、復讐と贖罪と絶望のなかに生きるさまが、無情な人間ドラマとして描かれているのが、この『運命の力』。22作目にあたるこの作品で、ヴェルディはそれまでの伝統的なイタリア・オペらのスタイルから離れ、よりドラマティックな表現を追及した。 2007年、フィレンツェで初演した際、批評家たちがこぞって称賛したのが、ズービン・メータ指揮のフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団の演奏だった。また、複雑な背景をもつ物語を登場人物の心情に則してストレートに描くことに重点をおいたニコラ・ジョエルによる演出は、上演に高い緊張度をもたらし、観客をドラマへと引き込む。ジョエルはパリ・オペラ座の総監督を務めるオペラ界の重鎮。このヴェルディの大作を手がけるにあたっては、名舞台美術家の誉れ高いフリジェリオと衣裳デザイナーのスカルチャピーノのコンビを起用し、万全を期した。 メータはフィレンツェのほか、2008年3月にウィーン国立歌劇場での新演出『運命の力』を振って成功を収めている。作品本来の魅力を知りつくしたメータは、日本公演のために、重量級の聴き応えをもたらす歌手陣を厳選した。レオノーラを演じるアマリッリ・ニッツァは、すでにイタリアの正統派ソプラノとして高い評価を得て活躍している美貌の若手ソプラノ。ドン・アルヴァーロのワルター・フラッカーロも、安定感のある輝かしい高音を武器に、世界中の舞台で聴衆を圧倒している。そして、ドン・カルロはいまやヴェルディ・オペラに欠かせない名バリトンの呼び声高いロベルト・フロンターリ。さらにはベテランのロベルト・スカンディウッツィとメータの秘蔵っ子というべき存在の若手の実力派メゾ、エレーナ・マクシモワという布陣だ。 『運命の力』はヴェルディの傑作の中でも、とりわけ強い声をもつヴェルディ歌手が揃わなければ上演が不可能なだけに、メータが日本公演のために周到に準備したこの本公演は、イタリア・オペラ好きなら絶対に聴き逃せないだろう。