継父であるヘロデ王のよこしまな視線を感じながら、彼の望みに応じて踊る王女サロメ。踊り終えた彼女が褒美として要求したのは、聖者の生首…オスカー・ワイルドが聖書の一挿話を衝撃的に描いた戯曲をもとにしたオペラ『サロメ』は、その題材ゆえに初演当時大きなセンセーションを巻き起こしました。 もっとも、初演から100年余を経た今、オペラ・ファンはR.シュトラウスの音楽そのものに魅力を求めるのではないでしょうか。交響詩と同様の大編成のオーケストラが駆使され、巧みな音楽書法によって濃密な官能美や緊張感が描き出されるこのオペラは“オーケストラのオペラ”と呼ばれています。音楽総監督ウェルザー=メストの指揮のもと生みだされる、匂い立つような響き、息を飲む緊張感に包まれたとき、これが世界のどのオーケストラも真似のできない“ウィーン・フィル”の神髄なのだと納得させられます。 今回上演されるボレスラフ・バルロク演出は1972年以来40年にわたって上演が続けられている長寿プロダクション。クリムトに代表されるユーゲントシュティール様式を思わせるユルゲン・ローゼのデザインによる美しく官能的な舞台に、“新時代のサロメ歌い”として、ウェルザー=メスト一押しのグン=ブリット・バークミンが登場。音と色の織りなす極彩色の官能の海に溺れてしまいそうです。
オープリー・ピアズリーによる「サロメ」の挿絵
photo;Wiener Staatsoper / Michael Pöhn
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