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2020/12/16(水)Vol.412

テノール歌手・福井敬が体感した
ベジャール振付「第九」の"価値"
2020/12/16(水)
2020年12月16日号
バレエ
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インタビュー

テノール歌手・福井敬が体感した
ベジャール振付「第九」の"価値"

視覚的メッセージが加わった「第九」、
ベジャールさんはベートーヴェンの「第九」を振付けることに大きな価値を見出した。

2014年11月のズービン・メータ指揮・東京バレエ団×BBLの「第九」に出演したテノールの福井敬さん。演奏会での出演は数多く経験していらっしゃるとはいえ、ベジャールの「第九」ではあらたな印象をもたれたようです。

ーー2014年11月、ベジャール振付『第九交響曲』の公演にご出演されました。まずはその時の印象をお聞かせください。

福井 敬:"ソリストとして"演奏の一端を担わせていただきました。ダンサーたちの踊りがフィナーレに向けて集約されていくさまを見るにつけ、全ての人間が一つになって、ベートーヴェンが「第九」にこめたメッセージ、人類の愛を体現するさまを見ることができました。ベジャールさんはベートーヴェンの「第九」に大きな価値を見出し、それにバレエを振付けることに、さらに大きな価値を見出していたということが実によく分かったのです。
音楽は基本的に聴覚に訴えるものですが、ベートーヴェンの「第九」には歌詞が入りますから、言語によっても意味が伝えられる。が、そこにバレエが伴うことで、今度は視覚的なメッセージが加わり、より具体的な表現となります。2つのバレエ団とアフリカンのダンサーたち、あらゆる人種の人々が重なり合い、一つとなった姿がそこに立ち上がる。その場に観客としているだけで、それを体感できる──! 感動的な舞台でした。

ーー公演では、福井さんを含めた独唱の四人の方々が、舞台奥からダンサーたちを見守る形で歌われていました。

福井:ダンサーたちの背中を見るのは好きです。その引き締まった筋肉が躍動するのを見ることが──。ダンスに限らず何かを表現する時、おそらく、その人の身体の中には音楽が生まれると思います。とくにベジャールさんは極めて鋭い感性をお持ちで、そのバレエは、身体の躍動に音楽が付いてくるようにも思えます。たとえばベジャールさんの代表作『春の祭典』(1959)もそうですね。あのバレエは、音楽に動きを付けているとは思えません。まるで、身体の中にある表現すべきものに、音楽が付いてくるようなのです。

「ベートーヴェンが『第九』にこめたメッセージ、人類の愛を体現するさまを見ることができた」と思い起こしながらインタビューに応える福井敬。

ーー第4楽章のテノール独唱は、先頭を切って皆をリードしていく存在という印象が強くあります。

福井:中盤のテノールのソロは、譜面には「軍隊の行進のように」と書かれているんですね。トルコ風のマーチです。それは、当時の時代背景を考えると実に象徴的です。この時、テノールは軍隊の兵隊たちともいえる合唱を率いていると考えられるけれど、実は、そこにいるすべての人民に、「さあ、あそこへ行こう! 足を踏みしめて!」と鼓舞し、先導しているのではないか。そういう役割を、テノールは担っているのではないかと思いますし、その役割を果たそうと、いつも心がけています。
ちょうどそのテノールのソロの場面、舞台では日本人ダンサー(モーリス・ベジャール・バレエ団 現芸術監督補佐・那須野圭右)がソロを踊っていました。踊りを邪魔してはいけないな、と思いながら(笑)、同時に、ああ、私は踊りと一体になっている!と強く感じた瞬間でした。

ーーその後、舞台は圧巻のフィナーレへとなだれ込んでいきます。

福井:フィナーレは本当に感動的です。第1楽章、2楽章、3楽章といろんなことが起こるけれど、最後には、人種や宗教、思想、言葉と全てを超えて、人間が一つの存在となる。ダンサー全員が形作るあのサークルがそれを象徴していますが、ここでは皆がずっとずっと、走り続けるわけです。体力の限界を超えたところに初めて生まれる何か、その凄さを感じさせる──。素敵だなと思いました。
「第九」の音楽が、視覚的にいろいろな形となって目に入ってくることは、音楽を聴かれている方にとっては本当に新鮮に感じられることと思いますし、やはり、人間が躍動するさまは、それを観ているだけでも血湧き肉躍る体験です。ぜひ、生の舞台で体験していただきたいと思います。

インタビュー・文 加藤智子 フリーライター

福井 敬(ふくい けい) テノール
Kei Fukui  tenor


国立音楽大学卒業、同大学院及び文化庁オペラ研修所修了。芸術選奨文部科学大臣賞等多数受賞。新国立劇場開場記念『ローエングリン』、二期会『オテロ』、A.バッティストーニ指揮『アイーダ』等多数のオペラに主演し、日本を代表するテノールとして活躍を続けている。「マエストロ・オザワ80歳バースデー・コンサート」に唯一日本人男性歌手として出演するほか、Z.メータ指揮ウィーン・フィルと「第九」で共演。国立音楽大学教授。東京藝術大学非常勤講師。二期会会員。

2014年東京バレエ団×モーリス・ベジャール・バレエ団「第九交響曲」公演より
Photo: Kiyonori Hasegawa

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ベジャール振付「第九」

公演日

2021年
4月29日(木・祝)14:00
4月30日(金)19:00
5月1日(土)14:00
5月2日(日)14:00

会場:東京文化会館

予定される演奏者

指揮:梅田俊明
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
独唱
ソプラノ:高橋 維 
メゾ・ソプラノ:加藤のぞみ
テノール:城 宏憲 
バリトン:今井俊輔
合唱:東京オペラシンガーズ

入場料[税込]

S=¥25,000 A=¥20,000 B=¥15,000 C=¥12,000 D=¥9,000 E=¥6,000
※ペア割引[S、A、B席]あり

U25シート ¥3,000
※NBS WEBチケットのみで引換券を発売。

上野の森〈バレエホリデイ〉特別ファミリー券
大人 S=¥25,000 A=¥20,000 B=¥15,000 C=¥12,000
子ども S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000 C=¥5,000