2022/11/16(水)Vol.458
2022/11/16(水) | |
2022年11月16日号 | |
TOPニュース インタビュー オペラ |
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オペラワルトラウト・マイヤー |
写真提供:ワルトラウト・マイヤー
2023年3月に日本のファンに別れを告げることとなるワルトラウト・マイヤーが、長年深い親交をもつドイツ語通訳の松田暁子さんの電話インタビューに応えてくれました。マイヤーは現在、世界各地で「さよならコンサート」を進行中ですが、ここでは日本での「さよならコンサート」プログラムへの思い、リートの魅力のほか、自身のキャリアを振り返るなかでの解釈の変化やオペラでのエピソードなどなど、幅広くお話いただいた内容を2回にわたってご紹介します。まずは今回のプログラムについて、またマイヤーが考えるリートの魅力について。
――今回が日本での最後の公演になると聞いております。「さよならコンサート」ということになります。(今年1月に)ミラノのスカラ座でイタリアでの最後の公演をなさったのが始まりで、これから11月はバルセロナとブダペストに行かれるんですね?
マイヤー:バルセロナのコンサートはスペインからのお別れの機会となります。ブダペストはリートで、日本で共演する歌手とピアニストと一緒です。 年明け1月21日にはハンブルクで同じリートの夕べをし、次にドレスデンでオペラ『神々の黄昏』のワルトラウテを(クリスティアン・)ティーレマン指揮で歌い、これが私のワーグナーのオペラの最後になります。この役は1978年から歌ってきて、もう44年間歌ってきたことになります。そして3月に日本に行きます。
――長年オペラと共にリートをライフワークとして取り組んでこられました。今回の集大成となる、「日本での最後のリサイタル」において、今回のプログラム(曲目)を組まれたことについて、教えてください。
マイヤー:私の好きなリートばかりを選んだのですよ。それは、まずシューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」と「若い尼僧」です。好きな歌を全部歌うと4時間以上のプログラムになってしまうので、厳選しました(笑)。
ブラームスの「エオルスのハープに寄せて」は、本当に私が大好きな歌なのです。そして、やはりR.シュトラウスもとなり、今回のプログラムになりました。本当に私が好きな曲ばかりを選んだのです。
共演するサミュエル・ハッセルホルンとはテーマに沿ってプログラムを構成できましたし、よい選曲となったと思っています。ハッセルホルンはまだ若いドイツ人のバリトン歌手ですが、きっと日本の皆さまにも気に入っていただけると確信しています。これからキャリアをどんどん積んでいくと思いますが、半年前にベルリンで『ドン・ジョヴァンニ』を急遽、代役で歌い指揮の(ダニエル・)バレンボイムにも大変気に入られました。
サミュエル・ハッセルホルン(バリトン)
Photo: Nikolaj Lund
ピアノのヨーゼフ・ブラインル、彼とは2005年に日本で一緒にリートのリサイタルをしましたが、彼のピアノは本当に素晴らしく、長年の信頼関係もありますし、2本の手だけでなく、まるで10本もあるかのような手で私のリートを支えてくれているように感じるピアニストです。
2005年日本でのリサイタル
ヨーゼフ・ブラインル(ピアノ)
Photo: Kiyonori Hasegawa
――あなたが考えるリートの魅力は何でしょうか?
マイヤー:リートは、ピュアなのです! ピュアで純粋なのです! それにも関わらず、全てのエモーションがある(入っている)のです。細密画のように、全てのストーリーがそこに入っているのですから.....。キッチンで20時間くらいかけて一つのソースを作ることに例えられるよう。そのソースには全てが詰まっているのです。それがリート! もちろん集中力が必要です。オペラはまた違う集中力で、オペラの場合は長い弧を描くような、と言えるでしょうか。リートは、ひとつひとつの言葉が大事で、その言葉の意味、内容の核心を表現することが大事です。私は詩が大好きなのです。
(リートの詩、その言葉と音楽との関係性は、オペラに比べると)とてもインテンシヴですね。例えば、ゲーテの詩、「糸を紡ぐグレートヒェン」は、各言葉の豊かさが全く違いますね。ヴェルディのオペラを悪く言うつもりはありませんが、ヴェルディのオペラの歌詞は、最高峰の文学とは言えないと思います。でもゲーテの詩、その言葉は素晴らしいのです。言葉が大切なのです。それがリートの一番の魅力ですね。
――オペラとリートで、歌い手としてアプローチの違いはありますか?
マイヤー:最初の取り組み方という意味では違いはありません。まずテキスト、歌詞をよく読んで、それから音楽と合わせて読んでいきます。その作品について、文学的なことや解説は、そのあとから読むようにしています。というのは、私の解釈は、まずスコア、楽譜に忠実にということです。他の誰かがこの作品について言っていることではなく、歌詞の言葉と楽譜から、私は自分の解釈をして歌うようにしています。
インタビュー:松田暁子(ドイツ語通訳)
*次号につづく
2023年
3月14日(火)19:00
会場:サントリーホール
ピアノ:ヨーゼフ・ブラインル
共演:サミュエル・ハッセルホルン(バリトン)
S=¥16,000 A=¥14,000 B=¥11,000
C=¥8,000 D=¥7,000 P=¥5,000
U25シート=¥2,500
*ペア割引[S,A席あり]
※予定される曲目については下記をご覧ください
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/waltraud-meier/