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「かぐや姫」第2幕より <br>Photo: Shoko Matsuhashi

2023/08/16(水)Vol.476

東京バレエ団「かぐや姫」全幕上演に向けて
道児役・柄本弾インタビュー
2023/08/16(水)
2023年08月16日号
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「かぐや姫」第2幕より
Photo: Shoko Matsuhashi

東京バレエ団「かぐや姫」全幕上演に向けて
道児役・柄本弾インタビュー

東京バレエ団「かぐや姫」では、表題役のかぐやとともに物語を牽引する存在の道児。全幕上演を控え、この役を演じる柄本弾のインタビューは、あらためてこの役を見つめる機会を与えてくれるよう。

時の流れを映す「月の光」

「ザ・カブキ」の由良之助をはじめ、力強いリーダーを当たり役としてきた柄本弾。金森穣版「かぐや姫」では立場の弱い道児を演じ、新境地を開いている。役作りの工夫や、全幕上演への抱負を聞いた。

――道児はかぐや姫の初恋相手で、原作「竹取物語」には登場しないキャラクターですね。役柄について、どんな説明を受けましたか。

柄本:最初は「道児って何だろう」と。ふたを開けてみたら、ストリート・チルドレンの役でした。童たちの兄貴分という器の大きさをもっている一方、生い立ちゆえの心の傷もある。影や闇を抱えている人のほうが、他人に優しかったりしますよね。かぐやとも、そこで惹かれ合うのではないでしょうか。って、全然違ったらどうしよう(笑)
穣さんは、道児にはぜひ(柄本)弾を、と言ってくださったと、人伝てに聞きました。振付も「弾が格好よく見えるように、こう変えよう」と、個性を生かしてくださる。まさにオリジナルを一緒に作っているという手応えがあり、ダンサー冥利に尽きますね。

「かぐや姫」第2幕に挿入される、かぐや姫と道児のパ・ド・ドゥのリハーサル
Photo: Shoko Matsuhashi

――第2幕には、かぐや姫が宮廷へ連れ去られて抜け殻のようになった道児が、村人たちに責め立てられる場面がありますね。虐げられる柄本さんに驚きました。

柄本:別に演じにくくはありませんよ。僕を虐げる後輩たちのほうが、やりにくいのではないでしょうか。それに、普段踊っている王子の役でも、物理的な暴力は受けないにせよ、孤独を抱えていたり、精神的な欠落感があったり。立場は違っても、本質的には変わらないように思います。

「かぐや姫」第2幕より
Photo: Shoko Matsuhashi

――孤独という言葉が出ました。この作品では誰もが寂しい人物で、「孤独」は重要なテーマです。ほかのキーワードを挙げるとしたら?

柄本:「成長」......いや、「時の流れ」でしょうか。状況や心境の変化が描かれています。
全幕上演に向けた変更点として、かぐやと道児のパ・ド・ドゥが、第2幕に挿入されることになりました。道児が宮中へ忍び込み、再会を果たす場面です。曲はドビュッシーの代表作「月の光」。同じ曲を第1幕でも踊りましたが、元気のないかぐやを道児が励まそうとするところから始まります。近づいては背を向けられたり、逆に迫ってこられたり.....。心の距離が変わっていき、やがてお互いへの恋を自覚します。
第2幕のパ・ド・ドゥも同様に、付いたり離れたりではあるものの、全然違うんですよ。村では勢いよく飛び込んできた無邪気なかぐやが、宮廷で試練に遭って成長している。同じ曲だからこそ、時間の経過と関係の変化を丁寧に表現したいところです。

「かぐや姫」第2幕より
Photo: Shoko Matsuhashi

――第2幕に、大きな見せ場が増えるのですね。

柄本:4月の第2幕だけの上演時には、出番が少ない分、気持ちをつなげる工夫が必要でした。「ロミオとジュリエット」の終幕で、ジュリエットが仮死状態になってから飛び込んでいくロミオにちょっと似ていて、こちら側の経過は描写されない。道児として違和感なく物語に飛び込んでいくために、袖ではずっとかぐやを見守り、「助けに行かなければ」と思いを巡らし続けていた。だからあまり踊ってはいないのに、どっと疲れました。

――宮中へ乗り込むまでの道児の役割は「純愛担当」。と思いきや、第3幕では変わってしまうようですね。

柄本:現実世界でも、決して報われない片思いはありますよね。都は村よりも豊かだし、自分とは別れたほうが相手は幸せなのかもしれない。諦めようと努めた結果、親身にしてくれた女性と.....というのは、起こりうることです。第2幕の終わりまで、つまり子供から大人になるまでかぐやを思い続けたわけですから、道児はむしろ一途だと、僕は考えています。

――月が刻々と姿を変えるように、何事も同じではいられない。キャストでいえば、第1幕の上演時(2021年11月)に翁を演じられた飯田宗孝(東京バレエ団団長)さんが、半年後に亡くなられました。

柄本:翁と道児は大きく絡むわけではありませんが、最後に共演できたのは有難いことでした。飯田さんの遺されたものをしっかり守りつつ、舞台に立つつもりです。

インタビュー・文 齊藤 希史子(バレエライター)

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東京バレエ団 創立60周年記念シリーズ1
「かぐや姫」全3幕 世界初演
演出振付:金森穣

東京公演

10月20日(金)19:00
10月21日(土)14:00
10月22日(日)14:00

会場:東京文化会館(上野)
*音楽は特別録音の音源を使用します。

予定される配役

かぐや姫: 秋山 瑛(10/20、10/22)
足立 真里亜(10/21)
道児: 柄本 弾(10/20、10/22)
秋元 康臣(10/21)
翁: 木村 和夫
影姫: 沖 香菜子(10/20、10/22)
金子 仁美(10/21)
帝: 大塚 卓(10/20、10/22)
池本 祥真(10/21)

入場料[東京公演・税込]

S=¥14,000 A=¥12,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
*文化庁 劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業
★18歳以下限定・子ども無料招待 詳細はこちら
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

新潟公演

12月2日(土)16:00
12月3日(日)14:00

会場:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館〈劇場〉

予定される配役

かぐや姫:秋山 瑛
道児:柄本 弾
翁:木村 和夫
影姫:沖 香菜子
帝:大塚 卓

入場料[新潟公演・税込]

SS=¥12,000 S=¥8,500 A=¥5,500
U25シート=¥2,000