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Photo: Gregor Hohenberg

2024/01/10(水)Vol.485

〈旬の名歌手シリーズ2024〉
フアン・ディエゴ・フローレス
2024/01/10(水)
2024年01月10日号
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オペラ

Photo: Gregor Hohenberg

〈旬の名歌手シリーズ2024〉
フアン・ディエゴ・フローレス

注目! フローレスとモーツァルトとコロラトゥーラ

2024年、NBSが開催するコンサート・シリーズの開幕を飾るスーパー・テノール、フアン・ディエゴ・フローレス。待ち遠しい思いのファンも多いことでしょう。
当のフローレスはといえば、2023年の大晦日には、10年ぶりにドイツのバーデン=バーデンでジルベスター・コンサートに登場し、大喝采を受けたことが報じられています。欧米では、新年を祝す大晦日のコンサートは、通常のシーズンで開催されるコンサートとは趣を変えた"ハッピー・ムード"が重視されることもあるようですが、この大晦日は「バーデン=バーデン祝祭劇場25周年」というフェスティバルの掉尾を飾る日でもあり、2400人のファンが記念日のフィナーレと新年を合わせて祝うこととなりました。聴衆から「彼は私たちの大晦日のコンサートを高尚にした」という声が上がったのは、その記念すべき日への思いもあってのことだったのでしょう。

バーデン=バーデン祝祭劇場

さて、次はいよいよ日本のファンがフローレスの声に浸る番です!
今回フローレスはモーツァルト、ロッシーニ、そしてヴェルディをプログラムしています。ロッシーニについてはすでに知られる通り、フローレスの十八番であり、ハイCも披露されるので、"これが聴きたかった!"というファンに応えるものにほかなりません。ヴェルディは円熟味を増したところで手がけるようになったものなので、ファンにとっても彼の新たな魅力への期待が高まるところでしょう。ではモーツァルトは? 
実はフローレスが、"現代最高のベルカント・テノール"であることを味わうのに打ってつけなのはモーツァルトなのです!
フローレスの最大の魅力は優れた技巧によるコロラトゥーラ。旋律に細かく速い音符の装飾を施し、声を転がすように歌うこの技法、現在ではすべての時代の装飾符を総称しますが、時代のなかでの在り方は変化してきたと考えられています。起源は古代から行われていた即興による装飾的な歌唱にあるとする研究があります。その後、キリスト教会の声楽芸術のなかで発展し、17世紀に誕生したオペラとともに新しい歌唱様式へ。これが「ベルカント(美しい歌)」と称される歌唱様式の誕生となったというわけです。この新しい歌唱様式はカストラートと女性ソプラノ歌手によって発展しますが、やがてコロラトゥーラの速さと息の長さがモノをいう"名人芸"だけに重点が置かれることになってしまいました。音楽的な歌唱と装飾的な歌唱を融合することを目的としたベルカント・オペラにおいて、歌手の技巧性だけが前面に押し出され、表現力が失われることになってしまったことを憂う音楽家もいたとか。そうした状況に新しい方向性をもたらしたのがロッシーニとモーツァルトでした。声楽技術としての技法に、内面的な感情表現をあわせもつコロラトゥーラの発展が遂げられることに。
モーツァルトが生きたのは、カストラートの衰退期。それにより、モーツァルトは歌手の優れた声楽的技術を生かしながら、オペラの物語における登場人物の内面的な心情や感情の変化を表現するためにコロラトゥーラを用いることになったのです。
というわけで、モーツァルトのオペラには、高い声楽的技術と内面を深く表すコロラトゥーラが求められます。フローレスは、そのたしかなコロラトゥーラの技法をもって、ベルカントの醍醐味を味わわせてくれることになるのです。

今回のプログラムに予定されているモーツァルトのアリアは、CDに収められており、それぞれ下記にてお聴きいただけます。また、この収録の際にフローレス自身がモーツァルトのオペラについて語っている動画(英語字幕つき)もご覧になれます。

歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より
" わたしの恋人を慰めて"

https://youtu.be/OGoNdNl-rys?si=0MUZgix36yQi82X4

歌劇『皇帝ティートの慈悲』より
" 比類ないこの上ない玉座の唯一の果実がこれなのだ"

https://youtu.be/HpVXNC30Qq0?si=jM1o6mkYI72hq6OB

歌劇『皇帝ティートの慈悲』より
" 皇帝の主権にとって、親しい神々よ"

https://youtu.be/lZG5j6c_Vl0?si=BD3ilF7p_8p512Bj

"モーツァルトは魔法の代名詞だった"
(モーツァルトのアルバム録音時のトレイラー)

https://youtu.be/PvvOYKeCrU8?si=CbWNQNJh13Sy4A_q

公式サイトへ チケット購入

NBS旬の名歌手シリーズ2024-l
フアン・ディエゴ・フローレス テノール・コンサート

公演日

2024年
1月31日(水)19:00

会場:東京文化会館

指揮:ミケーレ・スポッティ
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

入場料[税込]

S=¥25,000 A=¥22,000 B=¥18,000
C=¥14,000 D=¥12,000
U25シート=¥5,000
*ペア割引[S,A,B席]

※プログラムについてはコチラをご覧ください。
https://www.nbs.or.jp/stages/2024/singer/01.html