NBS News Web Magazine
NBS日本舞台芸術振興会
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
Photo: ChrisGonz

2025/08/20(水)Vol.524

ウィーン国立歌劇場2025年日本公演

ハンナ=エリザベット・ミュラー メール・インタビュー
2025/08/20(水)
2025年08月20日号
TOPニュース
インタビュー
オペラ
オペラ

Photo: ChrisGonz

ウィーン国立歌劇場2025年日本公演

ハンナ=エリザベット・ミュラー メール・インタビュー

ウィーン国立歌劇場2025年日本公演『フィガロの結婚』で伯爵夫人を演じるのはハンナ=エリザベット・ミュラー。世界中に認められる確かな実力で幅広いレパートリーをこなし、聴く者を魅了している彼女にとってのモーツァルトとは? 特に『フィガロの結婚』では伯爵夫人だけでなくスザンナもレパートリーとしている彼女が考える伯爵夫人とは? バリー・コスキーの演出の魅力は? さまざまな質問に丁寧に答えてくれたメール・インタビューをご紹介します。

「バリー・コスキーの演出は、人間関係の核心を描き出しています。このプロダクションは5回観たとしても、決して飽きることはないでしょう」

2017年にはバイエルン国立歌劇場日本公演 『魔笛』のパミーナで日本のファンを魅了しました。R.シュトラウス、ワーグナーも含めて幅広いレパートリーをお持ちのあなたにとって、モーツァルトのオペラとはどのようなものといえるのでしょう?

モーツァルトのオペラは、声楽とドラマのバランスの絶対的な神髄であると思います。モーツァルトを歌うと、明晰さ、人間らしさ、優美さといった、あらゆることの根源に立ち返るように感じられます。
ワーグナーの主情的な言語や、シュトラウスの心理的な複雑さとは対象的に、モーツァルトの場合には純粋さと、声と魂の真の繋がりが求められます。

モーツァルトについて私が特に感動するのは、歌がいかに簡潔であるべきか、また、歌はほぼ器楽である、ということを示していることです。より誠実でシンプルであればあるほど、より力強くなるのです。モーツァルト作品に、隠れ場所はどこにもありません。そしてすべての音符、すべての言葉は、絶対的な誠実さからしか生まれません。彼の非凡さは、まさにこのシンプルさの中にあるでしょう。

バリー・コスキー演出『フィガロの結婚』より
ハンナ=エリザベット・ミュラー(伯爵夫人)
Photo: Wiener Staatsoper / Michael Poehn

『フィガロの結婚』では、スザンナ役もレパートリーとして歌っていらっしゃいます。伯爵夫人を演じるにあたって、作品への意識は変わりましたか? この役を演じるうえで最も重要だと考えていらっしゃることは何ですか?

そのとおりです。スザンナを歌ったことで『フィガロの結婚』の構造を、とても生き生きと明るい側面から理解することができました。一方、アルマヴィーヴァ伯爵夫人を歌うことになると、このオペラの感情の深淵に足を踏み入れたような気がしました。
伯爵夫人は優雅さと脆さを併せ持っています。伯爵夫人を演じる上で大事なのは、誠実さです。彼女には計り知れない苦痛や尊厳が宿る時があり、観客の皆さまには、彼女の内なる強さと脆さを感じ取っていただけると思います。

数々のプロダクションの『フィガロの結婚』で演じられてきたあなたから見て、バリー・コスキーのプロダクションの魅力はどのようなところにあると思いますか?

バリー・コスキーの演出は、人間関係の核心を描き出しています。生々しく、詩的で、時にシュール。彼による演劇的な言語は緻密で、身体的なストーリーテリングに満ちています。私たち演者には、膨大な注意力が要求されますが、その代わりに、感情の率直さについて大きな自由が与えられます。彼の演出にはユーモア、そして深い真実があります。
コスキーのプロダクションで私が特に凄いと思うのは、とてもコンパクトな空間の中で繰り広げられる緻密さと熱量です。演出全体が非常に凝縮されたセットの中で展開され ―― とても些細なジェスチャーやリアクションまで ―― 登場人物たちの関係性が細やかに、そして鮮やかに描かれてゆきます。
このプロダクションは5回観たとしても、決して飽きることはないでしょう。あらゆる瞬間が生き生きとし、発見が尽きることはありません。

バリー・コスキー演出『フィガロの結婚』より
ハンナ=エリザベット・ミュラー(伯爵夫人)とパトリツィア・ノルツ(ケルビーノ)
Photo: Wiener Staatsoper / Michael Poehn

バリー・コスキーのプロダクションは、歌手の動きがとても重要だと思いますが、音楽面に関しては、緊密なアンサンブルが大切です。リハーサルなどで大変なことはありましたか? 歌手同士で工夫されたことなどはありますか? 印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

いえ、そういう意味で大変なことは全くありませんでした。バリー・コスキーは細心の注意をはらってアンサンブルを創り上げています。彼は歌手たちについては、声楽的あるいは演劇的な相性だけではなく、エネルギーや個性という面でも相性の合うアーティストを集めています。そのお蔭でリハーサルは、驚くほどダイナミックで喜びに満ちたものになるのです。
彼は歌手たちをよく理解していて、時には私たちを限界まで追い込みます。そうやって、彼が歌手たちの中に見出していた可能性を最大限に引き出していくのです。それは時にきついこともありますが、とても豊かなプロセスです。私たちは学び、成長し、そして最終的には芸術的進化を遂げているのですから。コスキーと仕事ができることは、本当に光栄で有難いことです。

『ダフネ』のタイトル・ロールを演じるハンナ=エリザベット・ミュラー(ウィーン国立歌劇場公演より)
Photo: Wiener Staatsoper / Michael Poehn

あなたの歌唱について、「水晶から切り出されたような歌声」(ザルツブルク・ナハリヒテン紙)と評されています。表現について、何か特別な訓練をしていますか? 声の特徴について、ご自身ではどのように感じていますか?

自分で自分の声を説明するのはいつも少し違和感を覚えますが ―― 私は明快さと誠実さを追い求めています。最も心がけていることは、不必要に装飾したり気取ったりせずに、できる限り真実に近い形で声を使うということです。
表現力とは、私は意思から生まれるものだと思っています。つまり自分が何を伝えたいのか、そしてなぜ伝えたいのかを理解することです。私は常に呼吸、セリフ、そしてテキストとの直接的な感情的な繋がりを見つけることに取り組んでいます。

オペラ歌手になることをご自身が決めたのはいつごろ? 何かきっかけがあったのでしょうか? オペラ歌手のほかになりたかったものはありますか?

オペラ歌手になりたいと初めて両親に話したのは4歳くらいの時でした。それが真剣な決意だったのか、ただの子どもの夢だったのかはわかりませんが、歌はいつも私とともにありました。しばらくの間、歯学を志すことを考えた時期もありましたが、歌が私を何度も呼び戻したのです。そうして自然と歌の道が開かれ、家族の支えもあり、素直にその道を進みました。今、私がこういう自分でいることを、心から感謝しています。

日本のファンへのメッセージがありましたら、お願いします。

初めての来日以来、いつも温かく心のこもった歓迎をしてくださる日本の素晴らしい観客の皆さまに深く感謝申し上げます。皆さまが寄せるクラシック音楽への情熱と、役柄の向こうに見るアーティストたちへの強い好奇心は、本当に刺激的です。日本で伯爵夫人を歌えることを大変光栄に思い、皆さまと再びお会いできるのを楽しみにしています。

ウィーン国立歌劇場2025年日本公演公式サイト

https://www.nbs.or.jp/stages/2025/wien/

公式サイトへ チケット購入

ウィーン国立歌劇場2025年日本公演
『フィガロの結婚』全4幕
『ばらの騎士』全3幕

公演日

W.A.モーツァルト作曲
『フィガロの結婚』全4幕

指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演出:バリー・コスキー
10月5日(日)14:00 東京文化会館
10月7日(火)15:00 東京文化会館
10月9日(木)18:00 東京文化会館
10月11日(土)14:00 東京文化会館
10月12日(日)14:00 東京文化会館

[予定される主な出演者]
アルマヴィーヴァ伯爵:アンドレ・シュエン
伯爵夫人:ハンナ=エリザベット・ミュラー
スザンナ:イン・ファン
フィガロ:リッカルド・ファッシ
ケルビーノ:パトリツィア・ノルツ

演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団

R.シュトラウス作曲
『ばらの騎士』全3幕

指揮:フィリップ・ジョルダン
演出:オットー・シェンク
10月20日(月)15:00 東京文化会館
10月22日(水)15:00 東京文化会館
10月24日(金)15:00 東京文化会館
10月26日(日)14:00 東京文化会館

[予定される主な出演者]
陸軍元帥ヴェルテンベルク侯爵夫人:カミラ・ニールンド
オックス男爵:ピーター・ローズ
オクタヴィアン:サマンサ・ハンキー
ファーニナル:アドリアン・エレート
ゾフィー:カタリナ・コンラディ

演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団

入場料[税込]

―平日料金
S=¥79,000 A=¥69,000 B=¥55,000
C=¥44,000 D=¥36,000 E=¥26,000
サポーターシート=¥129,000(S席+寄付金¥50,000)
U39シート=¥19,000 U29シート=¥10,000 

―土日料金
S=¥82,000 A=¥72,000 B=¥58,000
C=¥47,000 D=¥39,000 E=¥29,000
サポーターシート=¥132,000(S席+寄付金¥50,000)
U39シート=¥21,000 U29シート=¥13,000