ウィーン国立歌劇場日本公演の歴史は1980年に始まりました。以来45年間に日本公演は10回を数えます。今回のツアーは2016年以来9年ぶりになりますが、本来なら2021年に予定されていました。そのときはコロナ禍によって中止を余儀なくされましたが、これまでも、その時々の社会環境に大きく影響されてきました。
オペラ引っ越し公演にはそれを実現するための舞台機構を備えた劇場が必要ですが、これまでオペラ引っ越し公演のメイン会場だった東京文化会館が改修工事のため休館することから、2026年から3年間は今回の規模のような公演は実現できそうにありません。今回のウィーン国立歌劇場日本公演は、同会館が休館前の最後の本格的なオペラ引っ越し公演になります。
ウィーンは音楽の都と呼ばれます。ウィーンの香り、ウィーンの響き、日本の音楽ファンにとって憧れの対象です。ウィーン国立歌劇場はまさにその象徴といえます。偉大な作曲家、多くの名指揮者、名歌手を生み、数々のすぐれたオペラを初演し、いまなお18世紀の宮廷オペラ以来の栄光と伝統を保っています。ウィーン・フィルは世界の最高峰として人気のオーケストラですが、ウィーン・フィルはウィーン国立歌劇場の専属オーケストラのメンバーで構成されています。
音楽ファン憧れのウィーン国立歌劇場が、この秋東京文化会館に引っ越してきます。今回上演するのは『ばらの騎士』と『フィガロの結婚』。もっともウィーンらしい2演目です。ウィーンの雰囲気を横溢させ、ウィーン・オペラの魅力を堪能させてくれるはずです。
1911年に初演されて以来、ウィーンで1000回以上上演されている『ばらの騎士』。そのうち400回以上は名演出の誉れ高い、今回上演されるオットー・シェンク演出によるプロダクションです。一方の『フィガロの結婚』は、人気演出家のバリー・コスキーによる人物描写とスピーディな展開が評判の2023年に初演された新プロダクション。
オペラの引っ越し公演は、指揮者、オーケストラ、歌手陣、演出、舞台美術、照明などが相まったこのうえなく贅沢な総合芸術。さまざまな意味で今回のウィーン国立歌劇場日本公演は、これまでのわが国のオペラ引っ越し公演の歴史において、もっとも貴重な機会になることは間違いありません。泣いても笑っても3年間は日本にいながらこのような本格的なオペラ引っ越し公演は体験できません。オペラを愛する人たちは、この機を逃すとこれからの人生にきっと後悔が残るに違いありません。
主催: | ![]() |
後援: | 外務省 / 文化庁 / オーストリア大使館 / オーストリア文化フォーラム東京 / TOKYO FM |