猛威をふるった暑さもようやくピークを越え、ウィーン国立歌劇場2025年日本公演も開幕目前となりました。今回は、今年6月にNBSを訪れた、国立歌劇場管弦楽団のヴァイオリン奏者ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルクにウィーン国立歌劇場日本公演について聞きました。
在籍25年におよぶヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルクは、2018年からウィーン国立歌劇場管弦楽団労使協議会会長としてオーケストラの代表も務めています。彼の言葉はまず、「ウィーン国立歌劇場の日本公演」という大きな視点から。
「第二次世界大戦後、ウィーン国立歌劇場の再建は1955年11月に成されました。今回の日本公演は、その70周年という記念の年にあたります。そうしたことを踏まえて、今回、ウィーン国立歌劇場のレパートリーのなかでも看板演目となっている演目『フィガロの結婚』と『ばらの騎士』を日本公演で演奏するということには意義深さを感じています」
『フィガロの結婚』は、ウィーン国立歌劇場の日本公演のなかでも、最も多く上演された演目(NBSによる日本公演では 1980年、1994年、2004年、2012年、2016年の5回)。ウィーンでも長く愛されたジャン=ピエール・ポネル演出が2023年に新制作されたプロダクションに変わりました。「伝統」と「新しさ」については、オペラでは常に議論を呼ぶところかもしれません。
「『フィガロの結婚』は日本公演に何度も持ってきて演奏した、大切な作品です。最も重要な私たちの使命はウィーン国立歌劇場の音楽と伝統を持ってくることです。
今回のバリー・コスキー演出の『フィガロの結婚』は、現在を生きる我々の想像力や、経験をもとに作ると、こういう『フィガロの結婚』ができる、というものになっていると思います。音楽は作曲された時から変化することなく、何百年も存在してきた"史上最高の傑作"、すばらしい宝物です」
オーケストラ奏者としてウィーン国立歌劇場を支える音楽家である彼の言葉には、「伝統」の大切さと、現在の人々が受け取る新鮮さをつなげることができる音楽の素晴らしさが強調されます。そしてさらに視点は未来へ...... 。
「過去の美しい夢や思い出と共に、いかに伝統を保ちつつ、将来を育てていくかが重要です。私たちは「過去」はイメージできます。「現在」はいまここに一緒にあります。ですが、実は「将来」こそ私たちは一番力を入れないといけないと思います。次世代の聴衆を育んでいくことが大切です。
芸術はいつの時代も、パトロンが育ててきました。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのような巨匠も、貴族を含むあらゆるパトロンの投資によって作曲という日常を離れた世界に没頭することができ、『フィガロの結婚』をはじめとする素晴らしい芸術作品が生まれたのです。芸術の価値と真価は、短い時間軸だけでは測れないものだと思います」
今回の日本公演で指揮をとる2人の指揮者について。
「『フィガロの結婚』を指揮するベルトラン・ド・ビリーは、国立歌劇場管弦楽団と本当に色々なレパートリーを一緒にウィーンで演奏し、音楽的なパートナーとして、お互いに信頼できる関係を築いています。
また『ばらの騎士』を振るフィリップ・ジョルダンは、これまで音楽監督として音楽面はもちろん、そのほかの事務的なことがらでも、常に音楽、芸術に尽くす接し方でオーケストラと同じ目線で一緒に仕事ができた、素晴らしい関係をもっています」
日本のオペラ・ファンへのメッセージとしては、
「できれば贅沢に『フィガロの結婚』と『ばらの騎士』の両方を観ていただきたい。コロナ禍のときは、さまざまな映像があふれましたが、劇場での体験はけっして映像では得られないものです。今回の日本公演での生の体験をぜひ劇場から持ち帰っていただきたいと思います」。
2023年3月、ウィーン国立歌劇場で開催された『フィガロの結婚』新演出初演を前に開催された作品を紹介するマチネの模様をYoutubeでご覧いただけます。
ボグダン・ロシチッチ総裁が司会を務め、作品、その創作の経緯、そして新作について語った後、音楽監督フィリップ・ジョルダンが、ウィーン国立歌劇場の歌手たちと共に、第2幕の有名なフィナーレを分析。演出家バリー・コスキーは、出演者たちとのディスカッションのなかでこの作品へのアプローチについて語っています。ドイツ語はわからなくとも、初演メンバーによるアリアや歌曲が聴けるのはちょっと魅力。
※36分ごろからハンナ=エリザベット・ミュラーとアンドレ・シュエンによる実演が始まり、スザンナ役のイン・ファン、そのほかの出演者も加わり第2幕フィナーレまでおよそ20分ほどはジョルダンの解説を交えての実演が聴ける。また、最後の1時間35分あたりからイン・ファンがR.シュトラウスの歌曲「明日!」を披露。
日本でもウィーン国立歌劇場日本公演にちなんだ講演が開催されます。 NBSニュースWEBマガジンにも「 気高きふたりの貴婦人」と題して寄稿いただいた広瀬大介氏(青山学院大学教授)による講演です。
日時:2025年9月30日(火)19時~
会場:小山台会館 3階 大ホール(東急目黒線「武蔵小山駅」)
料金:一般 2,000円
主催:日本モーツァルト協会 / 日本リヒャルト・シュトラウス協会
お申し込みは、主催のいずれかの協会事務局に予め電話・Eメールのいずれかの方法でお申込みください。
日本モーツァルト協会: 03-5467-0626 info@mozart.or.jp
日本リヒャルト・シュトラウス協会: 03-3582-1266 japanrs@tkk.att.ne.jp

指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演出:バリー・コスキー
10月5日(日)14:00 東京文化会館
10月7日(火)15:00 東京文化会館
10月9日(木)18:00 東京文化会館
10月11日(土)14:00 東京文化会館
10月12日(日)14:00 東京文化会館
[予定される主な出演者]
アルマヴィーヴァ伯爵:アンドレ・シュエン
伯爵夫人:ハンナ=エリザベット・ミュラー
スザンナ:イン・ファン
フィガロ:リッカルド・ファッシ
ケルビーノ:パトリツィア・ノルツ
演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
指揮:フィリップ・ジョルダン
演出:オットー・シェンク
10月20日(月)15:00 東京文化会館
10月22日(水)15:00 東京文化会館
10月24日(金)15:00 東京文化会館
10月26日(日)14:00 東京文化会館
[予定される主な出演者]
陸軍元帥ヴェルテンベルク侯爵夫人:カミラ・ニールンド
オックス男爵:ピーター・ローズ
オクタヴィアン:サマンサ・ハンキー
ファーニナル:アドリアン・エレート
ゾフィー:カタリナ・コンラディ
演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
―平日料金
S=¥79,000 A=¥69,000 B=¥55,000
C=¥44,000 D=¥36,000 E=¥26,000
サポーターシート=¥129,000(S席+寄付金¥50,000)
U39シート=¥19,000 U29シート=¥10,000
―土日料金
S=¥82,000 A=¥72,000 B=¥58,000
C=¥47,000 D=¥39,000 E=¥29,000
サポーターシート=¥132,000(S席+寄付金¥50,000)
U39シート=¥21,000 U29シート=¥13,000