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Photo: Tristram Kenton

NEW2026/03/04(水)Vol.537

英国ロイヤル・バレエ団
『ジゼル』に沸くロンドン ―ピーター・ライト版の魅力ー
2026/03/04(水)
2026年03月04日号
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バレエ

Photo: Tristram Kenton

英国ロイヤル・バレエ団
『ジゼル』に沸くロンドン ―ピーター・ライト版の魅力ー

この2月から3月にかけて、ロンドンの英国ロイヤル・オペラハウスでは『ジゼル』が上演され、ベテランからロール・デビューの新鋭までなんと11組もの異なるキャストが24公演に日替わりで登場する活況を呈しています。メインロール(ジゼル、アルブレヒト、ミルタ)にはなんと計15人ものダンサーが初役に挑戦するなど、充実期をむかえている英国ロイヤル・バレエ団の勢いを感じさせます。『ジゼル』は今年7月には日本公演でも上演される演目。作品の魅力、そして現地の公演のレビューに出演者のコメントを交えご紹介します。

ライト版の魅力、41年にわたって愛されるジョン・マクファーレンの美術・衣裳

『ジゼル』には様々なヴァージョンが存在しますが、英国ロイヤル・バレエ団で41年もの長きにわたって上演されているピーター・ライト版は、原典に忠実な設定と"演劇の国"に相応しいドラマ性に富んだ演出で多くの観客に愛されている名版です。
特に作品を彩るジョン・マクファーレンの装置・美術は次のように非常に高く評価されています。

ジョン・マクファーレンの第1幕の舞台美術は、粗削りな小屋や擦り切れた農民の衣裳によって、素朴な村人と貴族階級との隔たりを巧みに浮き彫りにしている。アルブレヒトが部分的にしか隠しきれていないこの二重性は、演じきるのが難しい複雑な矛盾だ。第2幕では、ライトの振付アプローチが、ステップを一つも変えず、ウィリたちにより鋭い印象を与え、結婚前に見捨てられたことへの単純な悲しみではなく、彼女たちの行動の背後に潜む邪悪さを見せる。(bachtrackの公演評より 評:Amanda Jennings)

第2幕は全体的に大成功だ。第1幕でも評価されていたジョン・マクファーレンの舞台装置と衣裳、ジェニファー・ティプトンの照明(改訂:デイヴィッド・フィン)が真価を発揮する。奥行きと雰囲気が溢れている。(broadway WORLDの公演評より 評:Matthew Paluch)

『ジゼル』(英国ロイヤル・バレエ団公演より)
Photo: Helen Maybanks

もう一つ、ライト版では演出にも大きな特徴があり、ジゼル役での成功がプリンシパル昇進の大きな決め手にもなった高田茜(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)は次のように語っています。
「やはり1幕の最後、ジゼルが自らを剣で刺して自害をするという演出は物語の悲劇性を際立たせるこの版ならではの大きな特徴ではないでしょうか」

高田茜演じるジゼル(英国ロイヤル・バレエ団公演より)
Photo: Tristram Kenton

多くの版ではジゼルはショックのあまり心臓が止まって絶命してしまうという設定ですが、ジゼルが自ら死を選ぶことでより悲劇性が高まり、1幕と2幕の対比が鮮やかになるように工夫されています。この場面の演技は演じるダンサーによっても異なるため、大きな見どころと言えそうです。

日本人ダンサーも大活躍。大絶賛の平野アルブレヒト、金子ジゼル

現在英国ロイヤル・バレエ団には研修生を含め12名(2026年2月現在)もの日本人ダンサーが在籍しています。今回出演するダンサーの中でも、カンパニーの中心的な存在として活躍している平野亮一、そして今回がロール・デビューとなる金子扶生には厳しい評論家たちも惜しみのない称賛の声をあげています。

サラ・ラムは第1幕の純真なジゼル役で羽のように軽やかで、細い四肢がタフィー*のように身体から伸びる。ウィリとなった彼女は、亡霊として死後の人生を受け入れ、寂しげだ。平野亮一はハンサムなアルブレヒト役で自信と愛らしさの絶妙なバランスを保ち、重力に逆らう跳躍と信じがたいほど複雑なバットゥリーを最初から最後まで披露する。二人の間に漂う化学反応は手に取るように感じられ、第2幕の胸を締めつけるようなパ・ド・ドゥの場面で、観客席に涙を流さない者がいるとは到底思えない。
*タフィー(taffy):イギリス発祥のお菓子  (TimeOut LONDON 評:India Lawrence)

平野亮一(アルブレヒト)とサラ・ラム(ジゼル)
(英国ロイヤル・バレエ団公演より)

Photo: Helen Maybanks

平野亮一の見事なパートナーシップが光った。彼は欠陥を抱えた陰のある役柄――『オネーギン』のオネーギン、『マイヤリング(うたかたの恋)』のルドルフ、『冬物語』のレオンティーズ――で最高の演技を見せるが、彼のアルブレヒトは無頓着で純真な若者ではない。ジゼルの精神崩壊と自殺を目撃して初めて、自らの感情の深さと罪の大きさに気づくのだ。平野はまた、胸当てを引っ張るだけで良心の危機を表現できるわけではないことも理解している。彼のあらゆる身振りには重みと意味が込められ、一歩一歩が楽譜の指示のように調節されている。ジゼルが倒れた後、彼はほとんど別人となった。肩の落ち込み、うつむいた頭、喪失を自覚する不安定な動きは、狂気の場面を縮図のように映し出していた。涙があった。その幾つかは私のものだった。

ワディム・ムンタギロフはアルブレヒト役を17年間踊り続けている。(中略) 金子の軽やかな跳躍と変化に富んだピルエットは、歓喜と絶望を交互に表現していた。ムンタギロフの序盤における軽快な運動能力は若さと情熱を体現しており、その一歩一歩は精密に鍛え上げられていた――彼は第5ポジションで眠るのだろうか?(FINANCIAL TIMES 評:Louise Levene)

『ジゼル』リハーサル中のワディム・ムンタギロフ(アルブレヒト)と金子扶生(ジゼル)
Photo: Andrej Uspenski

なお、英国ロイヤル・バレエ団の公式You Tubeチャンネルでは金子扶生の『ジゼル』デビューをちょっと珍しい角度から撮影した動画を見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=HorlJLRHmJo

※金子扶生のインタビューはコチラからお読みいただけます
https://www.nbs.or.jp/webmagazine/articles/20260204-01.html

このほかにもアクリ瑠嘉、前田紗江、佐々木万璃子らの活躍に言及している評も多く、日本人ダンサーがもはやカンパニーになくてはならない存在になっているようです。
7月の日本公演では彼らの活躍も見逃せないポイントとなりそうです。

文責:NBS

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英国ロイヤル・バレエ団 2026年日本公演
『リーズの結婚』/『ジゼル』

公演日

『リーズの結婚』

7月3日(金) 18:30
7月4日(土) 13:00
7月4日(土) 18:00
7月5日(日) 13:00
7月5日(日) 18:00

会場:川口総合文化センター リリア
    フカガワみらいホール(メインホール)

[公演日時と予定される主な配役]
7月3日(金) 18:30
リーズ:マリアネラ・ヌニェス
コーラス:ワディム・ムンタギロフ

7月4日(土) 13:00
リーズ:アナ・ローズ・オサリヴァン
コーラス:スティーヴン・マックレー

7月4日(土) 18:00
リーズ:マヤラ・マグリ
コーラス:マシュー・ボール

7月5日(日) 13:00
リーズ:高田 茜
コーラス:カルヴィン・リチャードソン

7月5日(日) 18:00
リーズ:フランチェスカ・ヘイワード
コーラス:マルセリーノ・サンベ

指揮:ホセ・サラサール
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

『リーズの結婚』入場料[税込]

S=¥29,000 A=¥26,000 B=¥23,000
C=¥18,000 U25シート=¥7,000
*親子割引[S,A,B席]あり

『ジゼル』

7月10日(金) 18:30
7月11日(土) 13:30
7月11日(土) 18:30
7月12日(日) 12:00
7月12日(日) 17:00

会場:NHKホール

[公演日時と予定される主な配役]
7月10日(金) 18:30
ジゼル:マリアネラ・ヌニェス
アルブレヒト:ウィリアム・ブレイスウェル

7月11日(土) 13:30
ジゼル:サラ・ラム
アルブレヒト:平野 亮一

7月11日(土) 18:30
ジゼル:ナターリヤ・オシポワ
アルブレヒト:リース・クラーク

7月12日(日) 12:00
ジゼル:金子 扶生
アルブレヒト:ワディム・ムンタギロフ

7月12日(日) 17:00
ジゼル:高田 茜
アルブレヒト:セザール・コラレス

指揮:マーティン・ゲオルギエフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

『ジゼル』入場料[税込]

S=¥32,000 A=¥26,000 B=¥23,000
C=¥18,000 D=¥14,000 E=¥10,000
U39シート=¥9,000 U25シート=¥7,000
*親子割引[S,A,B席]あり