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2020/08/05(水)Vol.403

スカラ座異例の記者会見
2020年秋のシーズン開催を発表
2020/08/05(水)
2020年08月05日号
世界の劇場を知ろう
特集

スカラ座異例の記者会見
2020年秋のシーズン開催を発表

11回重ねた再開のための見直し

マエストロ・シャイーはまず、コロナ禍において、マイヤー新総裁はウィーンから出られず、自分はミラノに閉じこもっていたため、総裁と音楽監督としての仕事はとても困難ななかで進めなければならなかったと語り始めました。

「4月半ばから11回もプログラムの見直しをしました。はじめ、劇場が5月に再開するという予定が6月になり、それも再び延期になり、やっと9月に実現できることになったのです。ただ、未だに明日の保証はありません。いつまた閉鎖されるかわからないというのが正直なところです。

活動再開となる9月4日のヴェルディ「レクイエム」は、ヴェルディが『アイーダ』を発表した3年後に書かれました。2019年4月に、『アイーダ』の初演カイロ版が1871年の手書き楽譜から編纂されたそうで、私は大変興味を持ちました。第3幕は現在演奏される版とはかなり違っていて、アイーダのアリア「我が祖国」はありませんが、100小節分約7分間の初演以来演奏されていない部分があります。今回はこの再現をします。ゼッフィレッリ演出のプロダクションで上演する予定だったのですが、舞台上での厳しい規制によってコンサート形式になりました。この第3幕ではアカペラの合唱部分があり、ヴェルディは3年後に作曲した「レクイエム」でこの合唱部分を使っているのです」

再開に向けた準備も困難ななかで行ってきたと語るリッカルド・シャイー音楽監督

バレエ・ガラ、豪華歌手たちのリサイタル、
そして11月にはオペラ公演へ!

マイヤー総裁からは、オペラの他にもバレエ・ガラでロベルト・ボッレがベジャール振付の「ボレロ」を踊ること、スヴェトラーナ・ザハロワとアレッサンドラ・フェリも出演するが、出演者、観客をはじめ、関係者すべてにおよぶソーシャルディスタンス規制のためバレエ・ガラに決めたと説明しました。 コンサートも多彩でマウリツィオ・ポリーニとダニエル・バレンボイムがリサイタルを行うほか、エリーナ・ガランチャ、フランチェスコ・メーリ、マリーナ・レベカ、ヨナス・カウフマン、アンナ・ネトレプコ、プラシド・ドミンゴなど豪華な歌手たちのリサイタルも予定されているそうです。 スカラ・フィルも6月にキャンセルされたコンサートをこの秋に行います。 なお、11月にはゼッフィレッリ演出の『ラ・ボエーム』のオペラ公演、期待の新人ソプラノを起用して上演される予定です。

マイヤー総裁は最後に、

「スカラ座は1,800席のうち740席のみという入場制限があります。7月はギャラリー席は閉鎖されていましたが、9月のシーズンからは開けられるようにと考えています。またパルコ席は一つのパルコに一家族でなら6名まで入場できるようにしたいですね。12月7日からの新シーズンからは通常通り全席入場可能になることを願っているところです」

世界情勢がどうであろうと劇場は必要

なお、会見の終盤には、6月に行われたアンケート調査の発表が行われました。

スカラ座の観客や定期会員は劇場に関してどのような意見を持っているかの調査結果が発表されました。イタリア国内およびドイツ、フランス、イギリスなど国際的に約4,500名を対象に調査したところ、40%が「スカラ座が閉鎖されてミラノの町の重要な部分が欠けてしまったと感じた」と答えたそうです。定期会員の77%は継続して会員となり、「9月には再開されることを期待している」と答えました。また、調査した全員の約5%が「今後定期会員になりたい」と答え、「スカラ座の質の高さに満足している」と答えたのは90%だったそうです。

世界情勢がどうであろうと劇場は必要であるとことを示す結果をもって、記者会見は終了しました。

翻訳・文 田口道子

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