【ウィーン国立歌劇場】ステファニー・ハウツィール インタビュー

インタビュー・レポート 2016年10月25日 10:00


いよいよ開幕するウィーン国立歌劇場2016年日本公演。本日10/25(火)、トップを切って上演される、リヒャルト・シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』のなかで、芸術の理想に燃える若き"作曲家"を演じうたうステファニー・ハウツィール(メゾ・ソプラノ)に、リハーサルの合間をぬってインタビュー。ウィーン国立歌劇場育ちの彼女が、歌劇場のこと、作品や役どころについて語ります。




【ウィーン国立歌劇場】「ナクソス島のアリアドネ」ステファン・グールドへの期待

インタビュー・レポート 2016年10月20日 18:08


 オペラに配役の変更はつきものだが、今回のウィーン国立歌劇場「ナクソス島のアリアドネ」で、テノール/バッカス役をステファン・グールドが歌うことになったと聞いたときは驚いた。ヨハン・ボータの急逝に伴っての代役だが、もともとこの演出が2012年にウィーンで上演された際のキャストがグールドなのだから、これ以上の適役はない。よくもそう都合よくグールドのスケジュールを調整できたものだ......あれれ? グールドって、10月の新国立劇場で「ワルキューレ」に出演しているのではないの! 初台で10月18日までジークムント役を歌ったグールドが、10月25日からウィーン国立歌劇場来日公演でテノール/バッカス役を歌うことになる。
 なんだか少し奇妙な気分になる。というのも、「ナクソス島のアリアドネ」は劇中劇の趣向が施されたオペラについてのオペラ、いわばメタオペラ。前半の「プロローグ」に登場する「テノール歌手」という役が、後半の「オペラ」のなかで「バッカス」を歌うわけだ。この劇中の「テノール歌手」が、つい先日ジークムント役を同じ東京で歌っていたという現実と地続きになっている。リヒャルト・シュトラウスが巧妙に作り上げたフィクションの世界に、現実の側がワーグナー経由で切れ目なくつながってしまったかのような感覚がある。


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 で、そのグールドは「ワルキューレ」で圧倒的な存在感を見せつけた。世界有数のヘルデン・テノールにふさわしい力強い歌唱は余裕を感じさせるほど。しかも強靭なだけではなく、抒情的な表現もすばらしい。シュトラウスのひねりの利いた趣向を生かすためには、テノール歌手/バッカス役にはいかにもヘルデン・テノールらしいテノールであってほしいもの。グールドはまさにうってつけといっていいだろう。大詰めでのバッカスの歌唱は大きな聴きどころだ。
 ところで「ナクソス島のアリアドネ」って、最後の終わり方が不思議だと思いませんか。劇中劇の「オペラ」から、外側の劇に戻ってくるのかと思いきや、戻ってこない。バッカスが格調高くアリアドネへの愛を歌って、幕を閉じる。あれほどの美しい歌の後には、なにを続けても野暮ってことなんでしょうか。
                                       飯尾 洋一(音楽ジャーナリスト)


【ウィーン国立歌劇場】もっと知りたい!歌手紹介⑪

インタビュー・レポート 2016年10月19日 15:31


10月25日(火)に初日を迎える「ナクソス島のアリアドネ」。新たなキャストとしてステファン・グールド、ステファニー・ハウツィールが日本公演に臨みます。期待の2人の歌手を音楽評論家・奥田佳道さんの解説でご紹介します。


ステファニー・ハウツィール  Stephanie Houtzeel
(「ナクソス島のアリアドネ」メゾソプラノ/作曲家)


ウィーン国立歌劇場から羽ばたいた新時代のメゾソプラノ


 ウィーン国立歌劇場から羽ばたいた新時代のメゾソプラノに拍手を。
「ナクソス島のアリアドネ」プロローグのキーパーソンである作曲家役は、今回のベヒトルフ演出で2013年に歌っているばかりでなく、前のプロダクションでも2011年の春から秋にかけて歌っている。十八番の十八番だ。ちなみにこの作曲家、今演出ではオペラの後半でも「活躍」しそう。

1916年初演時のロッテ・レーマンに始まり、ゼーフリート、ルートヴィヒ、バルツァ、アン・マレイ、ヒンターマイヤー、オッター、コッシュらによって歌い継がれてきた「ウィーン国立歌劇場の作曲家」は今、アメリカのメゾソプラノ、ハウツィールに委ねられようとしている。


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Photo:Julia Wesely


ドイツ・カッセル生れのボストン近郊育ち。ニューイングランド音楽院とジュリアード音楽院で学び、2010/11年のシーズンよりウィーン国立歌劇場と契約。「魔笛」の第2の侍女でデビュー後、ただちにライマンの「メデア」、「ばらの騎士」のオクタヴィアン、「コジ・ファン・トゥッテ」のドラベッラを任された。作曲家も2011年春に歌っている。

同年、フランツ・ウェルザー=メスト指揮のヤナーチェク「カーチャ・カバノヴァ」新演出のヴァルヴァラ役で喝采を博す。そして2013年、ザルツブルク音楽祭にズービン・メータ指揮「ファルスタッフ」のメグ・ペイジ夫人でデビュー。彼女の名前は世界に発信された。

これまでにドレスデン国立歌劇場、チューリヒ歌劇場、パリ・オペラ座(パリ国立歌劇場)、フランス国立リヨン歌劇場、イスラエル歌劇場などに客演。前述のオクタヴィアン、ドラベッラのほか、「セビリャの理髪師」のロジーナ、「ホフマン物語」のニクラウス、「ファウストの劫罰」のマルグリート、「ウェルテル」のシャルロッテ、「こうもり」のオルロフスキーなどで客席を沸かせている。いっぽう「ワルキューレ」「神々の黄昏」「パルジファル」、「影のない女」のアンサンブルにも欠かせない。

CDにテオドール・クルレンツィス指揮のモーツァルト「レクイエム」、ヘンデルのカンタータなど。今年5月、チャールズ・スペンサーのピアノでソロ・アルバム「ノスタルジア」をリリースした。

ハウツィールはこの10月、ウィーン国立歌劇場でグルックの「アルミード」新演出(マルク・ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル)の前半日程に出演した後、同歌劇場日本公演の最初の演目であるヤノフスキ指揮の「ナクソス島のアリアドネ」に手を差し伸べることになった。ドミニク・マイヤー総裁たっての要請だ。ヤノフスキとはこの夏、バイロイト音楽祭で顔をあわせている。

舞台は整った。喝采が早くも聞こえるかのよう。


【ウィーン国立歌劇場】ダニエラ・ファリー メッセージ動画

インタビュー・レポート 2016年10月14日 16:23

『ナクソス島のアリアドネ』で、眩惑的なコロラトゥーラを駆使して自由な愛をうたい、物語のキーパーソンとなる、奔放でコケティッシュなツェルビネッタ。来るウィーン国立歌劇場公演で、このツェルビネッタ役での活躍が期待されるダニエラ・ファリーから、キュートなメッセージ動画が届きました。彼女の舞台映像とともにお楽しみください。




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photo:Wiener Staatsoper/Michael Poehn



【ウィーン国立歌劇場】もっと知りたい!歌手紹介⑩

インタビュー・レポート 2016年10月 7日 20:22


10月25日(火)に初日を迎える「ナクソス島のアリアドネ」。新たなキャストとしてステファン・グールド、ステファニー・ハウツィールが日本公演に臨みます。期待の2人の歌手を音楽評論家・奥田佳道さんの解説でご紹介します。


ステファン・グールド Stephen Gould
(「ナクソス島のアリアドネ」テノール/テノール歌手/バッカス)


ウィーンで初演のキャストを務めた世界最高峰のヘルデン・テノール


オペラのクライマックス。悩めるアリアドネに手を差し伸べるバッカス役には、ワーグナーの主役を歌うヘルデン・テノールの声が必要だ。気宇壮大な二重唱を、私たちは抜群のステージ・プレゼンスを誇るソプラノ、グン・ブリット=バークミンと、世界最高峰のヘルデン・テノール、ステファン・グールドで味わうことになった。

2012年暮れ、ウィーン国立歌劇場での「ナクソス島のアリアドネ」のプレミエでバッカスを歌い、アンコールの声に応えて2014年春にも同役を歌ったグールド! 故ヨハン・ボータへの想いを抱き、ウィーン国立歌劇場の大切な日本公演に手を差し伸べるオーストリアの宮廷歌手グールド! 期待は限りない。

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Photo:unbezeichne


米ヴァージニア州出身。ボストンのニューイングランド音楽院とシカゴ・リリック・オペラの研修センターで学ぶ。アメリカでオペラ、ミュージカルの舞台を経験するとともに、ニューヨークのMETで歌っていたバリトン、ジョン・フィオリトに師事し、ヘルデン・テノールへの道を歩み出す。

「フィデリオ」のフロレスタン、「ピーター・グライムズ」「サムソンとデリラ」「タンホイザー」で頭角を表す。ズービン・メータ指揮フィレンツェ歌劇場でも成功を収めた。2004年、クリスティアン・ティーレマン指揮の「タンホイザー」でバイロイト音楽祭にデビュー。同年暮れにはコルンゴルト「死の都」のパウルを歌い、ウィーン国立歌劇場にも初名乗りを挙げた。2006年、東京の新国立劇場にフロレスタンでデビュー。以来「オテロ」「トリスタンとイゾルデ」に出演。飯守泰次郎指揮の《ニーベルンクの指環》ではローゲ、ジークムントを歌い、ジークフリートも手掛ける。
2011年、ティーレマンの指揮でザルツブルク音楽祭にデビュー。ティーレマンとは今年のバイロイト音楽祭の「トリスタンとイゾルデ」でも共演している。


ドレスデン国立歌劇場、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場でも活躍。「オテロ」や「大地の歌」もレパートリーだ。近年、ウィーン国立歌劇場では《ジークフリート》《神々の黄昏》のジークフリート、それに《パルジファル》を歌い、賞賛を博す。来春にはトリスタンも控える。


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