英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演 『ドン・ジョヴァンニ』 世界が注目する期待の若手ソプラノ若く、愛らしいツェルリーナに等身大で迫るキュートな魅力 ユリア・レージネヴァ

photo:Rikimaru Hotta

 今秋の英国ロイヤル・オペラ日本公演『ドン・ジョヴァンニ』でツェルリーナを演じるユリア・レージネヴァ。彼女の名前が発表された時点で“反応”したのは、かなり深いオペラ・ファンの方々だったでしょう。すでに、ニューヨーク・タイムズ紙やオペルンヴェルト誌、ザ・ガーディアン紙で、彼女への賞賛の評が伝えられてはいましたが、日本ではまだ未知の若手ソプラノという存在だったのです。しかし去る2月、ソロ・アルバムのリリースに続いて、神奈川県立音楽堂でのバロック・オペラ『メッセニアの神託』出演を経て、にわかに状況は変わってきました。彼女の完璧なテクニックと美しく澄んだ声を前にした日本の聴衆の多くが、次なるユリア・レージネヴァ登場への期待を高めているのです。
 歌手として、また24歳の女性としての愛らしい素直さがうかがわれたインタビューをご紹介します。

 1989年サハリン島(樺太島)に生まれ、5歳からピアノや歌の勉強を始めたレージネヴァは、その後、両親とともにモスクワへと移った。
「両親は地球物理学者なので、サハリンにはその研究のために住んでいました。でも、私が音楽の道に進むことになったときに、数学は本で勉強できるけれど、音楽は演奏会をはじめとしたいろいろなものを体験できる環境が必要だということで、両親はモスクワに移ることを決めたのです」
 17歳のとき、エレナ・オブラスツォワ国際コンクールで優勝。国際的な注目を集める。オブラスツォワから、「あなたはロッシーニを歌うべきよ」と言われたことが、いかに正しい指摘だったかはすぐに証明されることとなる。この翌年、18歳のときにペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバルのオープニング・コンサートでのファン・ディエゴ・フローレスとの共演、2010年ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで話題を呼んだ『湖上の美人』からのアリア、さらに2012年にはパリでもルネ・フレミングやナタリー・デセイらとともにガラ・コンサートに出演し、ロッシーニでの大成功、すなわち素晴らしいコロラトゥーラ、軽やかなアジリタをこなす実力を示したのだ。
「テクニックというのは、自分ではすごいとは思っていないのです。ただ、一つ言えるとしたら、自分が本当に元気でエネルギーいっぱいのときには特別に気にしなくてもできることが、肉体的な疲れがあったり、精神的なダメージがあったりしたときには、しっかりと考えてテクニックを意識しないと、きちんとしたレベルを保てないということになります。学生のころとは違って、プロとしてやるなかでは周りとハーモニーを保った状態であることもとても重要です。自分だけの世界で慢心するのもダメ。これが崩れるとテクニックに悪い影響が出るのです。常にやりたいこと、希望を失わないでやっていくことが、私の場合にはテクニックを保つことにつながっていると思います。それから、コロラトゥーラというのは、すごい喜びや幸福の絶頂かと思うと、ものすごい怒りだったり、その激しさを表現するアリアなんですね。だから、その切り替えがパッとできないといけない。自分のなかで、到達点というか、アジテートな感じがきちっとできていないと、切り替えてすぐに表現することができないのです」
 ロッシーニのほか、モーツァルトのオペラもレパートリーに持つ。
「一部の役です、まだ。非常にドラマティックなものとなると、自分の声への負担や、人生経験ももっと積んでいかないといけないと思うんです(笑)。もちろん、想像のなかで歌っていけるものはありますけれど、不自然な、作り物的な感じでは、聴くお客さまへの説得力を持たないと思うんです。ドラマティックなレチタティーヴォなどを歌うためには、肉体的な強さも必要だし…‥。いまはそれを培っているところなので、急がすにトライしていきたいと思っています。アンハッピーな悲しいものをやると、すごくストレスを感じてしまうので、いつの日か、そういうものができるようになる日を待ちたいと思っています。だから、今の私は、ピースフルとハッピーなものがいい(笑)」
 英国ロイヤル・オペラには、日本公演に先立つ6月に、ツェルリーナ役でデビューする。
「素晴らしいオペラハウスに出演できることをとても光栄に思っています。世界で超一流の歌劇場の指揮者と歌手の方々とともに出演できるというのは、間違いなく素晴らしい経験です。さらに、ツェルリーナという役が私にぴったりの背丈にあったものということでも、とても嬉しく思っています。ツェルリーナは、若くて、かわいくて、ハッピーで、人生の幸せを謳歌している。お友達はまだ結婚できていないけど、私は先に結婚したのよー、みたいな、若さと喜びを満喫しています。でも、その裏側に危険が孕んでいるということもある…‥。自分のなかで、そうしたムードをつくっていきたいと思っています」
 英国ロイヤル・オペラには、2年ほど前にオーディションに呼ばれ、今回の出演が決まったとのこと。公募ではなく、興味を持たれた歌手が呼ばれるというこうしたプライベートなオーディションというのは珍しいことではないそうで、指揮者のマルク・ミンコフスキとの共演は、ミンコフスキが彼女をYouTubeで見たことがきっかけだったそうだ。
「日本公演については、とても楽しみにしています。そして、ちょっとだけ責任もね(笑)」
 日本公演のチラシを手に、舞台写真のツェルリーナを指して「これ、私のドレス!」と、嬉しそうに声を弾ませた。若く、愛らしく、幸福を満喫しながら、好奇心も…‥というツェルリーナのキャラクターはご自身も言う通り、まさにうってつけのキャラクター。日本のファンを魅了するに違いない。


2015年日本公演
英国ロイヤル・オペラ
ヴェルディ作曲『マクベス』


指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:フィリダ・ロイド

【公演日】

2015年
9月12日(土)3:00p.m
9月15日(火)3:00p.m
9月18日(金)6:30p.m.
9月21日(月・祝)1:30p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

マクベス : サイモン・キーンリサイド
マクベス夫人 : リュドミラ・モナスティルスカ
バンクォー : ライモンド・アチェト
マクダフ : ディミトリ・ピッタス

【入場料[税込]】

S=¥55,000 A=¥48,000 B=¥41,000 C=¥33,000  D=¥26,000 
エコノミー券=¥10,000 学生券=¥8,000

*エコノミー席はイープラスのみで、学生席はNBS WEBチケットのみで8月7日(金)より受付。
※2演目 [S,A,B券]セット券、受付開始 3月7日(土)10:00a.m.
※一斉前売開始 3月8日(土)10:00a.m.

2015年日本公演
英国ロイヤル・オペラ
モーツァルト作曲『ドン・ジョヴァンニ』


指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:カスパー・ホルテン

【公演日】

2015年
9月13日(日)3:00p.m
9月17日(木)6:30p.m.
9月20日(日)1:30p.m.

会場:NHKホール

【予定される主な配役】

ドン・ジョヴァンニ : イルデブランド・ダルカンジェロ
レポレロ : アレックス・エスポージト
ドン・オッターヴィオ : ローランド・ヴィラゾン
ドンナ・エルヴィーラ : ジョイス・ディドナート
ドンナ・アンナ : アルビナ・シャギムラトヴァ
ツェルリーナ : ユリア・レージネヴァ
マゼット : マシュー・ローズ

【入場料[税込]】

S=¥55,000 A=¥48,000 B=¥41,000 C=¥33,000  D=¥26,000 
エコノミー券=¥10,000 学生券=¥8,000

*エコノミー席はイープラスのみで、学生席はNBS WEBチケットのみで8月7日(金)より受付。
※2演目 [S,A,B券]セット券、受付開始 3月7日(土)10:00a.m.
※一斉前売開始 3月8日(土)10:00a.m.