ローマ歌劇場 2018年日本公演 実力派歌手が揃うイタリア・オペラの王道たる 『椿姫』

 ヴェルディがつくったオペラのなかで、最も有名な一作と言って良い『椿姫』。世界中の歌劇場での上演機会も常に1、2を争う作品です。18世紀初頭のパリを舞台に、高級娼婦を主人公としたこの作品は、1853年初演の準備不足による失敗や、道徳的な観点から問題視されることがあったりしましたが、現在まで160年以上にわたる長い時間、多くの人に愛され続けてきました。近年でこそ、奇抜な解釈や演出家の独特な視点が繰り広げられるプロダクションも登場していますが、イタリアを代表する作曲家ヴェルディによる、イタリア・オペラの代表作として人気を保ち続けることができた最大の要因として、このオペラに発揮される歌の魅力、それを聴かせる歌手の力は欠かせません。
 ローマ歌劇場は日本公演にあたり、3人の主要キャストに、“イタリアの声”を揃えました。 ヴィオレッタ役のフランチェスカ・ドットは、トレヴィーゾに生まれ、ボローニャで学びました。数々の国際コンクールで優れた成績を獲得していますが、そのなかにはブッセートのヴェルディの声コンクール優勝、ヴェローナのマリア・カラス・コンクール第2位などがあります。2012年にフェニーチェ歌劇場に『ボエーム』のムゼッタでオペラ・デビューを果たし、以後、イタリア各地で注目を集めます。素直で伸びやかな声質と豊かな表現力、若く美しい容姿を備えたドットを、新演出のヴィオレッタに!とローマ歌劇場が選んだのは当然のことだったでしょう。2016年5月、ローマ歌劇場でのプレミエでは、演出家ソフィア・コッポラの意図したヴィオレッタ像を完璧に歌い演じました。
 プレミエ公演の成功は、アルフレード役のアントニオ・ポーリによるところも大きいものでした。イタリアのイヴィテルボに生まれ、ローマで学んだポーリは目下、アルフレード役を歌うイタリア人テノールの第一人者と言ってよいでしょう。若き日にリッカルド・ムーティの薫陶を受けたことが、才能を花開かせることに繋がっています。アルフレードは、ロマンティックで一途な愛情をもつ青年で、声楽的にはリリック・テナーという軽めの声がイメージされますが、一旦激情にかられると、その歌にはドラマティックな声が要求されます。ポーリのアルフレードが素晴らしいのは、こうしたアルフレードに求められる全てを備えているからなのです。
 『椿姫』におけるもう一人の重要なキャストが、アルフレードの父親、ジェルモンです。ヴィオレッタに息子との別れを迫る第2幕前半で、ヴィオレッタとジェルモンの心のやりとりが胸を打つことがなければ、この物語に真に感動することはできないかもしれません。日本公演では、世界的名バリトンとして名を馳せるレオ・ヌッチが登場します。ボローニャ近郊に生まれ、デビュー以来45年を超えるキャリア、幅広いレパートリーをもつ大ベテランですが、「舞台に出るときはレオ・ヌッチは置いて行く。舞台に立つのはジェルモンじゃなきゃいけないんだ」と語ります。この人のジェルモンなら、泣けること間違いなし!

2018年日本公演
ローマ歌劇場

『椿姫』

指揮:ヤデル・ビニャミーニ
演出:ソフィア・コッポラ

【公演日】

2018年
9月9日(日)3:00p.m.
9月12日(水)3:00p.m.
9月15日(土)3:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

ヴィオレッタ:フランチェスカ・ドット
アルフレード:アントニオ・ポーリ
ジェルモン:レオ・ヌッチ

*表記の出演者は2017年9月現在の予定です。今後、出演団体側の事情により変更になる場合があります。

『マノン・レスコー』

指揮:ドナート・レンツェッティ
演出:キアラ・ムーティ

【公演日】

2018年
9月16日(日) 3:00p.m.

会場:神奈川県民ホール

9月20日(木)3:00p.m.
9月22日(土)3:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

マノン:クリスティーネ・オポライス
デ・グリュー:グレゴリー・クンデ
レスコー:アレッサンドロ・ルオンゴ

*表記の出演者は2017年9月現在の予定です。今後、出演団体側の事情により変更になる場合があります。

++