第6回めぐろバレエ祭り プティパ生誕200年記念 東京バレエ団《夏祭りガラ》 斎藤友佳理芸術監督に聞く東京バレエ団が贈る真のプティパ

Photo: Nobuhiko Hikiji

 夏の恒例イベントとなっている〈めぐろバレエ祭り〉で、東京バレエ団は人気レパートリーのひとつ、子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』とともに、《夏祭りガラ》の上演を予定している。クラシック・バレエの父といわれる振付家、マリウス・プティパの生誕200年を記念するバレエ・コンサートであり、バレエ団初演のパ・ド・ドゥ、ディヴェルティスマンがずらりと並ぶ、見どころたっぷりの公演となる。
 斎藤友佳理芸術監督は、このプティパ生誕200年記念のプログラムについて、「実は何年も前から意識していたこと。このタイミングで東京バレエ団で仕事ができることに幸運を感じながら、取り組んでいます」と意欲を見せ、こう続ける。
「『なぜ、いまさらプティパ?』と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ロシアでは古臭いことを“ナフタリン”などと揶揄しますが──(笑)。もちろん、“新しいこと”への挑戦は絶対に必要で、新制作や、ダンサーたちが創作に挑戦する機会を設ける〈Choreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)〉などの活動も積極的に取り組んでいます。ですが、将来を良くしていきたいのなら、歴史を振り返ることが大切です。いま上演されている『眠れる森の美女』も『ドン・キホーテ』、『ラ・バヤデール』も、すべてプティパがもとにあるということを、忘れないでいたいのです」(斎藤)
 各作品の指導にあたっているニコライ・フョードロフ氏(元ボリショイ・バレエ プリンシパル)も、「私たちはプティパの存在を忘れるわけにはいきません。生誕200年の今年は、世界中がプティパに注目し、プティパにまつわるさまざまな公演が企画されています。東京バレエ団がそこに加わることは、とても意義のあることだと思っています」と話す。
 パ・ド・ドゥ作品を次々と上演していくスタイルも、東京バレエ団にとっての新たなチャレンジとなる。
「私が東京バレエ団のダンサーとして踊っていたときから、コンサートにふさわしいパ・ド・ドゥをレパートリーとしてたくさん持っていたい、と感じていました。だから、いまこそそれを実現させたい、と思ったのです。また、ダンサーはクラシックのパ・ド・ドゥを通して練習することによって、本当の力がつくと信じています。皆にはこの公演のリハーサルを通して、存分に勉強してもらいたい、という思いもあります」(斎藤)
 経験の少ない若いダンサーたちも、どんどんリハーサルに参加し、学ぶチャンスを得ているという。そんな彼らがいま向き合っている作品は、すべて、“プティパの真珠”ともいうべき作品ばかり。たとえば、『エスメラルダ』。演目としてはとても有名だが、現在よく踊られているパ・ド・ドゥはプティパの振付ではない。今回上演するのは、フェビュスに思いを寄せるエスメラルダと、そのかりそめの夫である詩人グレンゴワールの、とても複雑な思いが込められたパ・ド・ドゥを中心とした場面で、日本で上演される機会は実にまれな、バレエ・ファンにとって注目の舞台となるはずだ。
「『アルレキナーダ』や『タリスマン』も、コンクールでよく踊られる作品ですが、大先輩たちから伝えられたもの、“こうあってほしい”というものを、若い人たちに伝えたいと思っているのです」(フョードロフ氏)
 もちろん、プティパ時代の踊りそのままに、という意味ではない。当時は衣裳も装身具も、いまよりずっと重く、ポワントの技術も全く違うものだったという。 「大切なのは、プティパがその音楽を使って、何を表現しようとしたのか、ということを追求することだと思います」(斎藤)
 見どころはパ・ド・ドゥだけではない。舞台の冒頭は、アミルカレ・ポンキエッリ作曲のオペラ『ジョコンダ』の中で上演されるバレエ、「時の踊り」──。ディズニー映画「ファンタジア」で有名な美しい音楽で踊られる、壮麗なコール・ド・バレエが印象的な作品だ。
「とても美しいディヴェルティスマンです。これこそが、古き良き時代からある、美しいバレエの姿なんだな、と実感します。また、以前も〈バレエ祭り〉で上演し、多くの方々に喜んでいただいた『パキータ』も披露します。全体を通して、プティパの“かおり”を感じていただけるような、その美しさが凝縮された舞台にしたいと思っています」(斎藤)
"新しいこと"へのチャレンジの象徴ともいえる〈Choreographic Project〉から誕生した、ブラウリオ・アルバレス振付『Adagietto(アダージェット)』も上演するという《夏祭りガラ》。バレエの過去と未来が繋がる、意義深い公演になることだろう。

東京バレエ団公演
第6回 めぐろバレエ祭り

プティパ生誕200年記念《夏祭りガラ》

【公演日】

2018年
8月24日(金)19:00
8月25日(土)11:30

【予定される主な配役】

「ジョコンダ」 柿崎佑奈、ブラウリオ・アルバレス ほか
「アルレキナーダ」 中川美雪、樋口祐輝(8/24)
足立真里亜、海田一成(8/25)
「タリスマン」 沖香菜子、宮川新大
「エスメラルダ」 上野水香、柄本弾 ほか
「パキータ」より 二瓶加奈子、秋元康臣 ほか
〈Choreographic ProjectⅢ〉より 川島麻実子 ほか

子どものためのバレエ「ドン・キホーテの夢」

【公演日】

2018年
8月26日(日)11:30 キトリ:沖香菜子 バジル:宮川新大
8月26日(日)14:30 キトリ:川島麻実子 バジル:秋元康臣

会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
*音楽は特別録音による音源を使用します。

【入場料[税込]】

大人 S=¥5,000 A=¥4,000
中学生以下 S=¥2,500 A=¥2,000