東京バレエ団 『ブルメイステル版『白鳥の湖』 沖香菜子&宮川新大インタビュー 初役への意欲を語る 初役、そしてプリンシパルとしての全幕初共演。高いハードルのクリアを目指したい

2年ぶりの再演となるブルメイステル版『白鳥の湖』で、今回初役に挑むのは、この4月にプリンシパルに昇進した。
沖香菜子と宮川新大。今回の舞台は、心身ともに充実し勢いを持つ新進プリンシパル・ペアが実力を発揮する機会となるはずです。作品への真摯な向き合い方や意欲など、舞踊評論家の髙橋森彦氏のインタビューに応えてくれました。

Photo: Nobuhiko Hikiji

――プリンシパル昇進おめでとうございます。今の心境をお聞かせください。

 私の前のプリンシパルの方々が偉大過ぎるので「私でいいのかな?」という気持ちはあります。でも周りの人たちが私以上に喜んでくれて実感がわいてきました。

宮川 ソリストとして入団しましたが、コールド・バレエの経験もして、脇だけれど重要な役、表現が大事な役をやらせていただけたから今があります。良いステップを踏んで昇進できたと思います。

――『白鳥の湖』に初主演されるお気持ちは?

宮川 バレエをやる以上誰もが一度は経験したいと思っているはずなので嬉しいです。

 初めてというだけでなくプリンシパルという立場になって取り組むので、「ただやりました」というだけではなくプラスアルファが必要です。新大くんと一緒に高いハードルをクリアできれば、いろいろなことがもっと開けていくのではないかと思います。

――ブルメイステル版『白鳥の湖』の魅力はどこにあると思いますか?

宮川 入団前にモスクワ音楽劇場バレエ団にいた時、出演の機会はなかったのですがリハーサルや本番を何度も観ていました。第3幕の舞踏会の場面が好きです。悪魔ロットバルトが手下をどんどん出してきてスピーディーに進むので観ていて飽きません。

 私も第3幕が特徴的だと思います。バレエ団初演時にナポリを踊ったのが自分にとって初めての悪役でした。切り込み隊長なので、猫のように表情をくるくる変えて王子を惑わせます。全体を通して以前上演していたゴールスキー版とは曲順も振付も違います。第2幕は三羽の白鳥を除いてオーソドックスなイワーノフ振付になりましたが、しっくりきましたし新鮮でした。第4幕では白鳥たちの隊形移動が目まぐるしく、鳥が飛んで回って隊形を変えていく感じがよく出ていると思います。

――抜擢を受けて、それぞれの役をどのように演じようと考えていますか?

 オデット(白鳥)/オディール(黒鳥)を演じるにあたって新大くんと話し合っていきたいのが「王子は果たしてオディールのことをオデットだと思い込んだのか、あるいは思い込んでいないのか」というところ。オディールは自分をオデットに見せようとしているだけなのか、それとも「王子はオデットが好きだから、こうすれば喜ぶだろうな」みたいなオディールとしての自分を好きになってもらおうとしているのか。王子は白と黒を間違える訳がないんです(笑)。でも、どこか違うと思いながら魅力的なオディールに惹かれてしまう。

宮川 ジークフリート王子は最初から最後まで一つの人格ですが、感情の切り替えが難しいですね。テクニック的な部分に囚われてしまう時もあるので、そこは課題です。

――パートナーシップの面でお互いをどう感じていますか?

宮川 子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』と『くるみ割り人形』で一緒に主演しています。『白鳥の湖』ではお互いに初役ですが、今までは沖さんの方が先に経験していたので助けてもらいました。

 新大くんは上手ですし、踊りへの向き合い方に凄く尊敬している部分があるので、吸収できるところがあります。相談しながらやっていけるので、やり易いですね。

――リハーサルに入っての感触はいかがですか?

宮川 歩く動作一つにしても覚えなければいけないことが多くて大変です。振付指導の二コライ・フョードロフさんには、手を出す際の角度やニュアンスが違ったりすると直していただいています。

 私たちもいろいろと考えていますが、前からだとどう見えるのかを細かく教えていただいています。先生方と一緒に創りあげていく時間はありがたいです。

――本番に向けての抱負をお話しください。

 まだまだ課題がたくさんあるので、それをどれだけクリアしていくか。二人で話し合い、情報を共有して、一つずつ創りあげていきたいです。

宮川 細かい箇所をスルーせずに立ち向かっていきたいです。大きな機会をいただいたので良い舞台にしたいです。

ブルメイステル版「白鳥の湖」とは?

 ロシアの振付家ブルメイステルによる、世界的に成功を収めたドラマティックな演出版です(1953年初演)。 ブルメイステルはチャイコフスキーの原曲に立ち返り、ドラマ性を高め、最大の見どころである第3幕では民族舞踊の踊り手が実は悪魔の手先だったという、劇的な展開に変更しました。
 1960年にはパリ・オペラ座バレエ団が「白鳥の湖」初演にこの版を採用。ミラノ・スカラ座バレエ団のレパートリーにもなっています。


東京バレエ団「白鳥の湖」 ブルメイステル版

【公演日】

2018年
6月29日(金)18:30
6月30日(土)14:00
7月1日(日)14:00

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

オデット/オディール: 上野水香(6/29)
川島麻実子(6/30)
沖香菜子(7/1)
ジークフリート: 柄本弾(6/29)
秋元康臣(6/30)
宮川新大(7/1)

指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料[税込]】

S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000 C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000
エコノミー=¥2,000 学生券=¥1,000

*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで5/24(木)より発売。
★ペア割あり[S,A,B席] ★親子ペア割あり[S,A,B席]

【その他の公演】

鎌倉 6月16日(土) 鎌倉芸術館大ホール
[TEL:0120-1192-40]
山口 7月4日(水)18:30 山口市民会館 大ホール
[TEL:03-3791-8888(NBS)]
益田(島根県) 7月6日(金)18:30 島根県芸術文化センター「グラントワ」 大ホール
[TEL:03-3791-8888(NBS)]
倉吉(鳥取県) 7月8日(日)13:00 倉吉未来中心 大ホール
[TEL:03-3791-8888(NBS)]