シュツットガルト・バレエ団 フリーデマン・フォーゲル インタビュー 私にとってのシュツットガルト・バレエ団

来たる11月、3年ぶりの日本公演が行われるシュツットガルト・バレエ団。
看板ダンサーとしてカンパニーを牽引するフリーデマン・フォーゲルに、シュツットガルト・バレエ団の魅力、
そして今回の2作品『オネーギン』と『白鳥の湖』についてうかがいました。

——フォーゲルさんは、1998年の入団以来、一貫してシュツットガルト・バレエ団でキャリアを積んできました。あなたにとって、このバレエ団の魅力とは?

「シュツットガルトでは、クランコを始めとする全幕作品に加えて、毎シーズン、新作のクリエーションに関わることができます。他のバレエ団やガラに出演して視野を広げることも大切ですが、ホームと呼べるバレエ団に所属していないと、系統だったレパートリーを踊れません。私たちのレパートリーは、実に多彩なんですよ。さらには、同僚のダンサーたちは、その人それぞれの個性を持ち、まるで違う言葉を話しているかのように異なるイメージを生み出す。その真っ只中に身を置くことによって、自分を成長させることができる。それが私にとってのシュツットガルト・バレエ団です」

Photo: Stuttgart Ballet

—— 今秋のシュツットガルト・バレエ団日本公演では、看板演目の『オネーギン』が上演されます。意外なことに、フォーゲルさんの長年の持ち役はオネーギンの友人レンスキーで、表題役を初めて演じたのは、つい4年前のことでした。

「シュツットガルトの男性ダンサーにとって、『オネーギン』は神聖な作品です。ようやく主人公を踊るチャンスに恵まれ、感無量でした。実際に演じて発見したのは、完全燃焼できる役柄だということ。レンスキーも重要な役ですが、オネーギンと決闘した結果、物語の途中で突然、命を落としてしまう。出番が終わった時、実はどこか満たされない気持ちが残っていました。でもオネーギンは、最後までドラマに関わり、思い悩み、タチヤーナに思いの丈をぶつけ、その思いは成就しなくても、役を全うする。幕が降りた時、全てを出し切り、自分が空っぽになってしまったと感じるほどです」

—— この作品は、なぜ、観客を魅了してやまないのでしょうか。

「私たちの人生そのものを映し出すからでしょう。確かにオネーギンという人物は、好人物ではありません。厭世的で、田舎のブルジョアたちを見下し、タチヤーナの美貌に目を留めても、彼女の芯の強さは見過ごし、他人を傷つけてしまう。でも、人間は善人ばかりではありませんから、誰しも、同じような状況に遭遇したことがあるはずです。オネーギンの狭量さに共感できなくても、彼の生き方に心を動かされるのだと思います」

——幕切れでタチヤーナとオネーギンが踊る、万感胸に迫るパ・ド・ドゥは圧巻です。タチヤーナ役のバレリーナと、どのようにパートナーシップを作り上げるのですか。

「チャイコフスキーの叙情的な音楽にのって、演劇性豊かなクランコ振付を踊る——。パートナーと二人で役に飛び込み、二人の世界を築き、二人の物語を紡ぎ出すのです。感情を吐露するだけでなく、クランコの高度な振付を踊りこなさなくてはなりません。十分に稽古を重ねて互いを理解し、信頼関係を築くと、エネルギーが湧き出し、マジカルな舞台を生み出すことができます」

Photo: Stuttgart Ballet

——もう一つの演目は、クランコ版『白鳥の湖』。音楽の編成や幕切れの情景は、オーソドックスな演出とは異なります。

「振付の大筋は伝統的なプティパ=イワーノフ版に準じていますが、よりドラマティックに改訂されています。様式的なマイムを使うかわりに、何気ない立ち居振る舞いで登場人物の心の動きを描き出します。王子はオデットを見つめ、彼女に駆け寄り、手を差し伸べ、そっと抱き寄せる。型通りの演技ではなく、ディテールを積み重ねて、細やかでリアルな表現に昇華していきます。ユルゲン・ローゼの美術も見事です。なかでも第3幕の宮殿のシーンでは、舞台装置が屹立し、王子を追い詰めているようです。オディールとのパ・ド・ドゥの音楽編成も独特で、視覚と聴覚の両方から、オディールが王子を翻弄する様子を具現していきます」

——王子とオデット姫が悪魔に打ち勝つのではなく、ともに命を落とすのでもない、独自の幕切れは、深い余韻を残します。

「二人は永遠に結ばれることはないのです。この物語の悲劇性を増す解釈だと思います。終幕のパ・ド・ドゥもクランコのオリジナリティが光る振付で、最後に待ち構えている悲劇を際立たせる。クランコの深い洞察力に圧倒されます」

——今年9月、タマシュ・デートリッヒ氏がシュツットガルト・バレエ団の芸術監督に就任します。新シーズンへの期待と日本公演へのメッセージをお願いします。

「来シーズンのレパートリーは、エキサイティングですよ。アクラム・カーンやイリ・キリアンが新作を振付け、マクミランの『うたかたの恋』を初上演します。日本公演は、タマシュの就任後、初の海外公演です。新監督の船出を素晴らしいものにするためにも、最善を尽くします」

シュツットガルト・バレエ団

『オネーギン』全3幕

【公演日】

2018年
11月2日(金)19:00
11月3日(土・祝)14:00
11月4日(日)14:00

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

タチヤーナ: アリシア・アマトリアン(11/2)
ディアナ・ヴィシニョーワ(11/3) ★ゲスト(マリインスキー・バレエ)
エリサ・バデネス(11/4)
オネーギン: フリーデマン・フォーゲル(11/2)
ジェイソン・レイリー(11/3)
マチュー・ガニオ(11/4) ★ゲスト(パリ・オペラ座バレエ団)

『白鳥の湖』全4幕

【公演日】

2018年
11月 9日(金)18:30
11月10日(土)14:00
11月11日(日)14:00

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

オデット/オディール: アリシア・アマトリアン(11/9)
エリサ・バデネス(11/10)
アンナ・オサチェンコ(11/11)
ジークフリート王子: フリーデマン・フォーゲル(11/9)
アドナイ・ソアレス・ダ・シルヴァ(11/10)
デヴィッド・ムーア(11/11)

会場:東京文化会館

【入場料[税込]】

【オネーギン】
S=¥20,000 A=¥18,000 B=¥16,000 C=¥13,000 D=¥10,000 E=¥7,000
【白鳥の湖】
S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000 C=¥12,000 D=¥9,000  E=¥6,000

※学生券¥3,000はNBS WEBチケットのみで10/5(金)より発売。
★ペア割あり[S.A.B席]

「白鳥の湖」親子券[S,A,B席]

対象公演:
11月9日(金)、11月10日(土)、11月11日(日)

【S席】¥19,000+¥5,000=¥24,000
【A席】¥17,000+¥4,000=¥21,000
【B席】¥15,000+¥3,000=¥18,000

*お子様は小学生~高校生が対象。お子様2名までお申込みいただけます。
7/30(月)21:00~(WEB)、7/31(火)10:00~(電話)発売開始

【その他の公演】

福岡 11月14日(水)

「白鳥の湖」 福岡サンパレス (問)KBCチケットセンター 092-720-8717

西宮 11月17日(土)

「白鳥の湖」 兵庫県立芸術文化センター (問)0798-68-0255