Kristine Opolais クリスティーネ・オポライス メール・インタビューより 「プッチーニのヒロインを歌うと、恋に落ちたように感じるのです」

「現在最高のプッチーニ歌い」と称されるクリスティーネ・オポライス。
なかでも『マノン・レスコー』のマノンは、ロンドンでのデビュー以来、
ニューヨーク、ミュンヘンでの新制作においても“欠かせない存在”に!!
ローマ歌劇場との初来日を前に、メール・インタビューに答えてくれました。

Photo: L'Officiel Latvia, photographer Natalie

ーーあなた自身にとってのプッチーニのオペラ、プッチーニのオペラの諸役とは?

オポライス プッチーニの作品や諸役が私にとってどれほど特別かというのは、言葉では説明しきれないくらいです。プッチーニには、常にとても強い繋がりを感じてきました。心と魂の両方で繋がりを感じています。プッチーニのオペラの役を歌うと、鼓動が高まります。プッチーニのヒロインを歌うと、恋に落ちたように感じるのです……私自身が恋をしていない時にでもそう感じます。つまり音楽が、私にそう感じさせてくれるのです。

ーーすでに『マノン・レスコー』のマノン役は、ロンドン、ニューヨークほか、数々の舞台で歌っていらっしゃいます。いま現在、あなた自身がマノン役を歌ううえでもっとも大切にしていることは?

オポライス 自分自身のペース配分が重要です。例えば第2幕は、第1幕と大きく異なり、とても難関です……第2幕の歌い方には様々なスタイルが要求されています。中でも、ドラマティックな瞬間の直後に抒情的なフレーズを歌うのは大変難しいのです。例えば、マノンと兄のデュエットは非常にドラマティックですが、その後はより抒情的で艶めかしい誘惑的な音楽が続き、デ・グリューと出会うと、二人は長く激しいデュエットを豊かなオーケストラとともに歌い上げます。
 この作品には、長いフレーズや高音を要する歌が沢山あります。マノンを歌いながら自分の感情をコントロールするのはとても難しいことですが、長時間にわたり、たくさんのことが要求される役を歌うには、歌うことと感情面の両方で、自分自身をしっかりペース配分することが必要です。私は演じることが好きで、感情と演技することは私にとってとても大切なこととなっています。マノンはとても複雑な女性で、彼女の人格の中に沢山の側面があります。女の子っぽく、ドラマティックであり、抒情的であり、艶めかしく魅惑的で破滅的であり、それ以上であり……とにかくあらゆるものが詰まっているのです。
 私がこれまでに経験した3つの新演出はいずれもモダン演出でしたが、それぞれ異なり、同じマノンでも全く違うものに感じられました。私の日本デビューとなる『マノン・レスコー』は、私にとって初めてのトラディショナルなプロダクションとなるという点でもとても楽しみにしています。(演出家の)キアラとともにこのマノンという魅力的な役の細かなニュアンスを探っていきたいと思っています。

ーーマノンの生き方について、一人の女性としてどのような感想をお持ちですか? またデ・グリューについては?

オポライス マノンは特別なタイプの女性です。マノンはすべてを手に入れられる、希望をかなえられると信じているのです。幸せになりたいと思っていますし、愛する男性とともにありたいと思い、お金持ちになりたいのです。満ち足りた人生を生きたいと思っているのです――でも現実にはそのような人生はほぼ不可能ですよね。
 マノンの問題は――だからこそ、悲劇的に美しいともいえるのですが――何かを、あるいは誰かを手に入れた途端に、それらに興味を失うということです。
 マノンとデ・グリューは、いつまでも幸せな人生を送れたとは思いません。マノンは常に失踪し続け、彼女を愛する全ての人々に苦難を与え続けたことでしょう。デ・グリューの宿命はマノンに支配されています。マノンはデ・グリューにとっては純粋な魔法なのです――抗しがたい誘惑であり、彼の運命は彼女の運命と結びついているのです。彼は彼女の望みを全て見たし、彼女の呪文(魔法)のもとに生きているのです。マノンは自分の運命は自分でコントロールしています。でもデ・グリューは違います……マノンが彼の運命そのものなのです。

ーーオペラ歌手になることを目指したのはいつごろですか? 理由は?

オポライス かなり大きくなるまで、オペラ歌手になろうなどと思ったこともありませんでした。もともとロック音楽のファンだったのです。私が音楽を勉強し、オペラ歌手になるべきだ、と確信し決意したのは母の方でした。私が、母を喜ばせたい思いでオペラ歌手になってみようかしらと考えるようになったのは、21歳のころでした。「これだ」と自分で確信した瞬間を忘れることはできません。それは、コヴェント・ガーデンでトスカを歌うマリア・カラスの録音を聴いた時でした。それまでは、オペラとはただ大きな声を張り上げて歌うものだとしか思っていませんでした。でもカラスがすべてを変えてしまいました。オペラはとてつもない芸術形式であり、役を演じ、創造することがどれほど大事なことであるかということに気づかされました。カラスの声が私に深く突き刺さりました。

ーー日本には初めていらっしゃることとなりました。どのようなイメージをもっていますか?

オポライス 日本の国と文化をとても尊敬し、憧れています。天国のようなところに思えます。和食も大好きです。日本のファンの皆さんにお会いするのもとても楽しみにしています。世界中で日本の方々とお会いしますが、いつもとても嬉しく思っています。皆さん本当に教養が高く、丁寧で、親切です。そして本当に音楽を愛していらっしゃいますね……。早く日本に行きたいです。熱心な日本のお客さまのために歌うことが待ち遠しいです。

2018年日本公演
ローマ歌劇場

『椿姫』

指揮:ヤデル・ビニャミーニ
演出:ソフィア・コッポラ

【公演日】

2018年
9月9日(日)15:00
9月12日(水)15:00
9月15日(土)15:00
9月17日(月・祝)15:00

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

ヴィオレッタ:フランチェスカ・ドット
アルフレード:アントニオ・ポーリ
ジェルモン:アンブロージョ・マエストリ

*表記の出演者は2018年5月31日現在の予定です。
今後、出演団体側の事情により変更になる場合があります。

『マノン・レスコー』

指揮:ドナート・レンツェッティ
演出:キアラ・ムーティ

【公演日】

2018年
9月16日(日)15:00

会場:神奈川県民ホール

9月20日(木)15:00
9月22日(土)15:00

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

マノン:クリスティーネ・オポライス
デ・グリュー:グレゴリー・クンデ
レスコー:アレッサンドロ・ルオンゴ

*表記の出演者は2018年5月31日現在の予定です。
今後、出演団体側の事情により変更になる場合があります。