第15回〈世界バレエフェスティバル〉 The 15th World Ballet Festival presented by KOSÉ 走り続ける世界のトップ・ダンサーたち見つめるものは? 魅せるものは? WBF開幕目前特集 トップスター5人をピックアップ!

世界バレエフェスティバル開幕まで1ヵ月。気温とともにバレエ・ファンの興奮度も急激に高まっていることでしょう。
世界19ヶ国から計40余名の参加となる今回の出演者のうち、5人の「旬」のダンサーたちの最新インタビューをピックアップでご紹介!     

Photo: Youn Sik Kim

—— 世界バレエフェスティバルでは、シュツットガルト・バレエ団の屋台骨を支える振付家ジョン・クランコの作品が、ほぼ毎回、上演されています。シュツットガルト生え抜きのフォーゲルさんから見た、クランコ作品の魅力とは何でしょうか。

「彼の作品を踊っていて感じるのは、クランコの素晴らしい人となりです。人間の本質を見抜く率直さがあり、ユーモアのセンスがあり、寛大さに満ちている。振付家としての手腕だけでなく、優れた人間性がなくては、あのような秀作を生み出せなかったのではないか。そう思ってしまうほどに、彼の作品はドラマティックで、リアルで、ユニークです。型通りのステップを型通りに使うのではなく、種々のムーブメントで内面を語りあげるのです」

—— 2003年以来、連続して出演を重ねる唯一の男性ダンサーとなり、フェスティバルに臨む気持ちは、変化しましたか。

「偉そうなボスのように振る舞ったりしませんよ(笑)。出演者の間に、上下関係やライバル意識はありません。従来通り、自分の踊りに徹し、舞台を楽しみたいと思っています」

—— 演目は、どのように選びますか。これまでのフェスティバルでは、クランコ作品や古典作品に加えて、シュツットガルト・バレエ団の常任振付家マルコ・ゲッケなど、現代的な作品も披露しています。

「若手振付家を起用して新作を作ることはシュツットガルト・バレエ団の伝統で、私達団員にとって、クリエーションに参加することはとても重要です。この刺激的な経験がなくては、アーティストとして成長できません。幸い、日本の観客の方々は、馴染みのない作品でも貪欲に受け止めてくれるので、今回も、ぜひ現代作を踊ってみたいですね」

Photo: Kiyonori Hasegawa

—— コジョカルさんは、昨年秋にお子さんを出産しましたが、現在もイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)で踊るかたわら、ハンブルク・バレエ団への客演を続けています。

「ENBもハンブルクも、私のバレエ団です! 毎シーズン、半分の時間をロンドンで、もう半分の時間をハンブルクで過ごします。長年、私の歩みを見守っているロンドンの観客の前で踊ることも、ハンブルクでジョン・ノイマイヤーの創作に参加することも、私にとって大切な時間です。母親になったからペースを落とすなんて、とんでもない。キャリアと子育て、どちらにも100パーセントのエネルギーを注ぎます。これが私にとってのベストなバランスです」

—— 世界バレエフェスティバルへの抱負を教えてください。

「ロンドンとハンブルクを行き来するだけでなく、さらに違う環境に自分を置き、刺激を受けたい。いつもそう願っています。バレエフェスティバルは、まさに刺激的な場。モーリス・ベジャール・バレエ団のダンサーが踊るベジャール作品に度肝を抜かれ、フォーサイス作品のスペシャリストの舞台に目を見張る。特別な才能の持ち主に囲まれていると、新たなエネルギーが湧き上がり、もっと学びたい、もっと成長できるはず、という気持ちが湧き上がってきます」

—— バレリーナとして母として、まさしく充実した日々ですね。

「やりたいことに没頭しているので、忙しいと感じる暇もありません。どんなに疲れていても、娘の姿を見るだけで、心が穏やかになります。幸い、ヨハン(夫君のコボー)は良きパパで、私を公私の両面でサポートしてくれます。母になって、今まで以上に幸せで、満ち足りた毎日を過ごしています」

Photo: Sébastien Mathé

—— エイマンさんは、パリ・オペラ座入団から僅か5年でエトワールの座に昇り詰めました。あなたにとって、エトワールとは何を意味しますか。

「エトワールに昇進した当初は、自分がエトワールに相応しいことを証明するために、背伸びをしていました。でも経験を重ねるうちに、気付いたのです。すでにエトワール任命という関門をくぐり抜けているのだから、自分を見失ってはいけない、と。つまり、日々、謙虚に学ぶ姿勢を忘れずに、他のダンサーやスタッフと共に舞台に作り上げ、なおかつ、年下のダンサーに模範を示す。オペラ座のエトワールとは、自分を見つめ、喜びを感じ、責任を担うこと、といえるでしょう」

—— 今夏の世界バレエフェスティバルでは、前回、怪我のために出演がかなわなかったミリアム・ウルド=ブラームさんとの共演が実現します。Aプロでは、『ジュエルズ』の“ダイヤモンド”のデュエットを日本で初披露されます。

「バランシンの『ダイヤモンド』は、長年、踊りたいと思っていた作品で、去年の秋、ついに夢がかないました。チャイコフスキーの音楽と一体になった、非の打ち所のない振付です。シンプルなのに奥が深い。ミリアムと私のパートナーシップの成熟を見ていたければ嬉しいです」

—— Bプロの『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥは、パリ・オペラ座の芸術監督だったルドルフ・ヌレエフの振付です。

「他のヌレエフ作品同様、『ドン・キホーテ』の振付は超絶技巧が満載で、独特の足さばきや大小様々なジャンプが散りばめられたソロパートでは、息つく間もありません。どのようにテクニックを繰り出し、どのようにダンサーの魅力を引き出すのか。ヌレエフのバレエ観が織り込まれた、魅惑的なパ・ド・ドゥなのです」

Photo: Kiyonori Hasegawa

—— お二人は、ハンブルク・バレエ団のプリンシパルとして、芸術監督ジョン・ノイマイヤー氏の創作に関わってきました。稽古の様子を教えてください。

リアブコ:新作を作る時、ジョンは入念にリサーチをしたうえで、リハーサルに臨みます。けれども稽古場での彼は全てを白紙に戻し、インスピレーションが湧くのを待ちます。音楽を使うこともあれば、無音のことも。そして、おもむろに動き始める。私達ダンサーが彼の動きを再現し、発展させながら、振付に昇華させていきます。

アッツォーニ:振付中は神経を研ぎ澄まします。私達の役割は、指示通りに動くのではなく、その瞬間に彼が生み出したものを受け止めて、作品の誕生を後押しすることですから。ジョンとのリハーサルは、緊張感に満ちた豊かな時間です。

—— 公私にわたる名コンビは、どのように誕生したのですか。

アッツォーニ:ハンブルクの学校公演で初めてサーシャ(リアブコ)を見た時、目が釘付けになりました。彼は音楽と一体になって躍動していたんです。初めて共演したパ・ド・ドゥは、『マーラー交響曲第5番』。稽古時間は僅か2日でしたが、彼とならきっとうまく踊れる、という確信がありました。ここから“何か”が始まりました。

リアブコ:思い出深いのは、その後に踊った『ハムレット』です。私達にとって、初めて主演する全幕作品でした。

アッツォーニ:ハムレットがオフィーリアの許を去る場面の稽古をしていた時…‥

リアブコ:私達は一緒に踊ることが嬉しくて頰が緩みっぱなし、コーチに怪訝な顔をされました。この時、私達は恋に落ちたんです。以来、二人で共に踊りを作り上げ、演技を共鳴させる感覚を育んでいきました。

—— 世界バレエフェスティバルに向けて、メッセージをお願いします。

リアブコ:このフェスティバルは出会いの場です。偉大なダンサー達と刺激し合い、学び合うのです。彼らの舞台に感嘆するだけでなく、本番前にどのように準備をし、公演後にどのような体のケアをするのか。その姿を規範に、私も自分を鍛錬してきました。

アッツォーニ:今回もジョンの作品を踊ります。彼の作風は、ドラマティックな作品からミュージカルまで、ほんとうに一人の振付家が作ったのか、と思ってしまうくらいに多彩です。私達の、そしてジョンの新たな一面をどうか発見してください。

第15回 世界バレエフェスティバル
Aプロ・Bプロ

【公演日】

[Aプロ]
8月1日(水)18:00
8月2日(木)18:00
8月3日(金)18:00
8月4日(土)14:00
8月5日(日)14:00

[Bプロ]
8月8日(水)18:00
8月9日(木)18:00
8月10日(金)14:00
8月11日(土・祝)14:00
8月12日(日)14:00

会場:東京文化会館

指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

【入場料[税込]】

S=¥26,000 A=¥23,000 B=¥20,000 C=¥16,000 D=¥12,000 E=¥8,000

コーセーU29シート ¥4,000 完売
NBS WEBチケットのみで 6/22(金)より発売。
※満29歳までの方を対象に、Aプロ、Bプロ毎公演「C席」相当の席を「コーセーU29シート」として各日30席、計300席ご用意します。座席はご指定いただけません。チケットは公演当日のお受け取りとなります。