英国ロイヤル・オペラ 2019年日本公演 9月13日(金)〜9月24日(火)開催! アントニオ・パッパーノのオペラに魅せられるのは… Photo: SIM CANETTY-CLARKE / ROH

Photo: CATHERINE ASHMORE / ROH

 アントニオ・パッパーノが英国ロイヤル・オペラ(ROH)の音楽監督に就いたのは2002年。当時42歳というパッパーノの年齢が、歴史と伝統を誇る世界有数の歌劇場の音楽監督として「若すぎる」と感じられることはなかったようです。というのも、すでにそれまでの10年間に、彼がブリュッセルの王立モネ劇場音楽監督として手腕を奮った実績が知られていたからです。
 イタリア人の両親のもと、ロンドンで生まれたパッパーノは、英語を母国語としながら、イタリア語、フランス語、ドイツ語に堪能です。彼が、これらの言語を自在に操れることは音楽と言葉が切っても切れないオペラにおいて、重要な意味をもっています。パッパーノ自身「それぞれの言語がもつリズム、色彩感、そして方向性がオペラでは重要な要素になる。言葉がわかることでそのオペラにさらに引き寄せられてしまう」と語っています。
 そしてもう一つ、パッパーノがオペラにおける大切な要素として上げるのが「人間の感情」です。悲しみ、怒り、喜び、妬み…‥あらゆる人間の感情があふれるのがオペラなのだと。
 パッパーノは、ROHではピットで指揮をするほかに、作品について語るワークショップを度々行っています。ここでの彼の話しぶりは、オペラのなかに盛り込まれたあらゆる感情を、残さず紹介しようと熱がこもったもの。真剣な形相で怒りの場面を語ったかと思えば、思わず笑ってしまうようなユーモアが混ぜられたりするこの場で、参加者たちは“面白そうなオペラの世界”と、パッパーノ自身の人間的な魅力に引き込まれてしまうのです。現在、世界中で若い世代の“オペラ離れ”の傾向があるといわれますが、ROHではパッパーノのワークショップを機に、劇場を訪れる若者も少なくないようです。
 パッパーノに魅了されるのは聴衆ばかりではありません。2019年日本公演の演目『オテロ』は、2017年に新制作されたプロダクションで、このときタイトルロールを歌ったヨナス・カウフマンは、「初めてのオテロ役は、マエストロ・パッパーノの指揮で!」と熱望したそうです。オテロが抱くコンプレックスや嫉妬心、オテロを追い詰めるヤーゴの妬みなど、心理描写がカギとなるこの作品では、たしかに歌手の存在は大きいものですが、パッパーノ指揮のオーケストラが生み出す迫力は舞台を食うほど!という感想も聞かれました。ヴェルディが作り上げたオペラ『オテロ』の醍醐味を感じさせる鍵は、やはりパッパーノが握っているといえそうです。
 日本公演のもう1作『ファウスト』は、全編に満ちた豊麗な美しいメロディーが魅力の作品です。パッパーノのROH音楽監督としての最後となる2019年日本公演にふさわしく、イタリア・オペラ、フランス・オペラの傑作が並びます。

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