The Tokyo Ballet Choreographic Project 2018より(2018年2月開催) Photo: Kiyonori Hasegawa

東京バレエ団創立55周年記念シリーズ
2019年度ラインナップ速報!

 2019年、東京バレエ団は創立55周年を迎えます。2015年より芸術監督を務める斎藤友佳理のもと、さらなる飛躍と発展を目指す意欲的なラインナップを速報でご紹介!  メモリアル・イヤーのトップを飾るのは「海賊」の東京バレエ団初演。古典全幕の中でも大規模な本作を、ミラノ・スカラ座製作の豪華な装置、衣裳を用いて初演します。そして世界的振付家、勅使川原三郎の新作(世界初演)に挑戦、イタリア、オーストリアなどをめぐる大規模な海外公演、37年ぶりに「くるみ割り人形」を新制作するなど、古典から現代作品まで充実の作品がそろいました。ラインナップの詳細発表は2019年3月を予定しています。どうぞお楽しみに!

第34次海外公演決定!

東京バレエ団は創立当初から、「世界」を視野に入れて活動を展開し、これまでに日本の舞台芸術史上例をみない世界31か国154都市764回の公演を実現しています。
2019年6~7月には、ウィーン国立歌劇場やミラノ・スカラ座など世界の名門歌劇場への出演を含む大規模な第34次海外公演も予定されています。今回のツアーではバレエ団の看板作品である「ザ・カブキ」の他、様々な振付家の作品を集めたミックスプログラムの上演を予定しています。


リッカルド・ムーティ近況
ナポリで新演出『コシ・ファン・トゥッテ』

 2018年11月、34年ぶりにムーティがオペラを指揮するということで、ナポリのサン・カルロ歌劇場は大変な歓迎ぶりだった。ミラノ・スカラ座より50年も前の1737年に建てられた絢爛豪華な劇場は2009年改修後のオープニングコンサートにムーティを招いたが、オペラの指揮はなかなか実現しなかった。今回シーズンオープニングの演目は『コシ・ファン・トゥッテ』でマエストロが最も愛するオペラ作品のひとつだ。以前にインタビューでマエストロにとって最愛のオペラは何かと尋ねた時「その時取り掛かっている作品。でも常に愛して止まないのは『ファルスタッフ』と『コシ・ファン・トゥッテ』です」と答えたことを覚えている。
 ナポリはマエストロが青春時代を過ごした母方の祖父母の家やマイエッラ音楽院など懐かしい場所や友人が多い上、愛娘キアラとの共演ということもあってマエストロは上機嫌でリハーサルを行った。休憩時間も楽屋には戻らず、プラテアの中央に座って総裁、芸術監督を始め音楽スタッフたちと楽しいおしゃべりに花を咲かせていた。
話題は世界文化賞授賞式のために、1か月ほど前に二日間だけ滞在した日本のことが多く、皇后陛下の貴賓に満ちた美しさが強く印象に残っている様子だった。
 キアラはローマ歌劇場の『マノン・レスコー』を演出した時には、この作品は時代を変えることはできないと言っていたが、人類普遍の問題がテーマである『コシ・ファン・トゥッテ』の演出では時代も場所も設定せず、抽象的な表現をしていた。とは言っても演出意図はしっかりしていて歌手たちの演技には細かい指示が与えられていた。ほとんど白を基調とした薄い色使いの舞台は照明の美しさが加わり、上品に仕上げられていた。

Photo: Silvia Lelli

「モーツァルトはイタリア語を完璧に理解していました。ダ・ポンテの台本はダブルミーニングがたくさん含まれていて奥が深いのです。私がモーツァルトの生地で大成功を収められたのは『イタリアオペラ』ととらえて演奏したからだ思います」とマエストロは語る。その演奏は円熟した優美さに溢れていた。
 マエストロはナポリでも未成年を収容する刑務所を訪れて、自身がピアノを弾きながらオペラの話をし、生活環境から音楽とは程遠い生活をしてきた青少年たちの目を輝かさせた。彼らはゲネプロにも招待され、生まれて初めてのオペラ鑑賞に感動していた。
 11月25日はオープニングナイトでムーティ指揮のオペラを鑑賞するためにイタリア各地からムーティファンがナポリに来るとのことで、チケットは発売と同時に完売したと聞いたが、シーズン開幕とあって1,200ユーロ(160,000円)と高価なことに驚いた。