英国ロイヤル・バレエ団 2019年日本公演 名門バレエ団の伝統を担う新旧スターひしめく充実に期待!

Photo: ROH / Johan Persson

 前回の日本公演以来、たった3年の間に6人もの新プリンシパルが誕生し、世代交代の過渡期にある英国ロイヤル・バレエ団。ベテランが若手と組むことも多く、それがお互いを高めあい、作品に新たな息吹をもたらすような、非常に面白い時期にある。2019年日本公演で上演される『ドン・キホーテ』でも、以下の興味深いペアによるそれぞれ個性的な舞台が期待できるだろう。
 アコスタ版『ドン・キホーテ』初演時にキトリ役を踊ったマリアネラ・ヌニェスは、まさにこの役を踊るために生まれてきたようなダンサー。英国ロイヤル・バレエ団入団から20年を迎え、今なおバレエ団を明るく照らす太陽のように輝き続けている稀有な存在だ。彼女とのパートナーシップを通してさらなる進化を遂げているワディム・ムンタギロフもまた、バレエの教科書から抜け出たように美しく伸びやかな踊りで観客を熱狂させてやまない、世界屈指のダンスール・ノーブル。遊び心あふれるバジル役にも、彼が踊ると独自のエレガンスが醸し出される。
 若手プリンシパルの中でも、気品あふれる美しさと凛とした力強さが魅力のヤスミン・ナグディはロイヤル・バレエ学校時代から注目されてきた英国バレエ界のホープ。11歳から叩き込まれたロイヤル・スタイルが骨の髄まで染み込んだ、たおやかな踊りで観客を魅了する。ワールド・バレエ・デーの司会でもおなじみのアレクサンダー・キャンベルは、コミカルな役で定評があり、軽快で躍動感あふれる踊りと持ち前の親しみやすく明るいオーラがバジル役にぴったりだ。
 吉田都以来の日本人女性プリンシパル高田茜は、昇進後も踊りの精度は増すばかりで、マクミラン作品における妖艶でドラマティックな演技でも高評価を博し、その進化にはとどまるところがない。『ドン・キホーテ』は、初演時にソリストながらキトリ役に大抜擢され、再演時には1日でマチネ・ソワレ両方に主演するという偉業もやってのけた思い入れのある作品だ。バレエ界のスーパースター、スティーヴン・マックレーは、昨季は怪我に苦しんだものの不屈の精神で乗り越え、今季『うたかたの恋(マイヤリング)』で華々しい復帰を遂げたばかり。『ドン・キホーテ』では、持ち前のスピード感あふれる切れ味鋭い踊りを存分に堪能させてくれることだろう。
 生粋のロイヤル・ダンサー、ローレン・カスバートソンは、抑えた表現の中に感情を昇華させる演技が絶品の、英国らしい品格にあふれたプリンシパル。最近では、『マルグリットとアルマン』に主演、『シルヴィア』でマリインスキー劇場に客演するなどして、円熟期にあってますます充実した踊りを見せている。2018年プリンシパルに昇進したばかりのマシュー・ボールは、今最も注目されている若手ダンサー。今季はわずか24歳で『うたかたの恋』ルドルフ役で衝撃的なデビューを飾っただけでなく、マシュー・ボーン版『白鳥の湖』のスワン役で主演するなど、若手ながら一癖ある役で抜群の演技力を発揮、華のある立ち姿で観客の目を釘付けにしている。
 世界的プリマのナターリヤ・オシポワにとって、その類い稀な身体能力を存分に発揮できるキトリ役は、ボリショイ時代からの十八番だ。近年は英国ドラマティック・バレエに挑戦することでドラマ性もますます磨かれ、エネルギッシュで躍動感に満ちたオシポワのキトリにもさらなる進化が期待できるはずだ。
 他にも、華奢な体躯から繰り出される精緻で可憐な踊りが魅力のサラ・ラム、複雑な心理描写を要する役とエッジの効いたコンテンポラリーを踊らせたら右に出る者のいないエドワード・ワトソン、今季『うたかたの恋』で初日主演デビューを成功させ、長身を生かしたダイナミックでスケールの大きな踊りが魅力の平野亮一、映画版『キャッツ』に出演も決まるほどの華やかな美貌と自然体で流れるような踊りが魅力の若手フランチェスカ・ヘイワードなど、ガラでは個性あふれるプリンシパルが多数登場予定。ロイヤルの層の厚さを堪能できるだろう。

Photos: ROH / Helen Maybanks、Alice Pennefather、Bill Cooper

英国ロイヤル・バレエ団 2019年日本公演
「ドン・キホーテ」《ロイヤル・ガラ》

「ドン・キホーテ」

【公演日】

2019年
6月21日(金)18:30
6月22日(土)13:00
6月22日(土)18:00
6月23日(日)13:00
6月25日(火)18:30
6月26日(水)18:30

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

キトリ: マリアネラ・ヌニェス(6/21)、ヤスミン・ナグディ(6/22昼)、高田茜(6/22夜、6/25)、ローレン・カスバートソン(6/23)、ナターリヤ・オシポワ(6/26)
バジル: ワディム・ムンタギロフ(6/21、6/26)、アレクサンダー・キャンベル(6/22昼)、スティーヴン・マックレー(6/22夜、6/25)、マシュー・ポール(6/23)

《ロイヤル・ガラ》

【公演日】

2019年
6月29日(土)14:00
6月30日(日)14:00

会場:神奈川県民ホール

【予定される主な演目と配役】

「シンフォニー・イン・C」 (6/29)ローレン・カスバートソン&ワディム・ムンタギロフ、マリアネラ・ヌニェス&平野亮一、高田茜&アレクサンダー・キャンベル、ヤスミン・ナグディ&ヴァレンティノ・ズッケッティ
(6/30)ナターリヤ・オシポワ&スティーヴン・マックレー、サラ・ラム&リース・クラーク、崔 由姫&マルセリーノ・サンベ、フランチェスカ・ヘイワード&アクリ瑠嘉

そのほかの作品は〈マーゴ・フォンテインに捧ぐ〉より「眠れる森の美女」“ローズ・アダージオ”、「マノン」より3つのパ・ド・ドゥ、「ロミオとジュリエット」よりパ・ド・ドゥ、「白鳥の湖」よりパ・ド・ドゥ、「三人姉妹」 ほか、アシュトン、ウィールドン、マクレガー、スカーレットの作品を予定。

※配役は決まり次第NBSホームページ等でお知らせします。来日プリンシパルは、各日とも総出演の予定です。

指揮:未定
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

※記載の配役は2018年12月14日現在の予定です。カンパニーの都合等で変更になる場合があります。

【入場料[税込]】

S=¥25,000 A=¥22,000 B=¥19,000 C=¥15,000 D=¥11,000 E=¥8,000